Animelo Summer Live15年史勝手に分析
2-6:アニサマ出演者音楽レーベルについてその6
(ビクター、エイベックス、ビーイング)
※この企画の記事内では個人名は敬称略で記載しております、ご了承ください。
レーベル分析シリーズ第六回はビクター、エイベックス、ビーイングのレーベルについて触れていきたいと思います。これでアニサマ関係音楽レーベルのシリーズについては最終回となります。最後は一般系レーベルが多くなりました。それでは見ていきましょう。
- 1-1:ビクターとアニメソングの歴史
- 1-2:ビクターのアニソンアーティスト
- 1-2-1:フライングドッグ所属のアニソンアーティスト
- 1-2-1:フライングドッグ以外のビクター系列所属のアニソンアーティスト
- 2-1:エイベックスとアニメソングの歴史
- 2-2:エイベックスのアニソンアーティスト
- 3-1:ビーイングとアニメソングの歴史
- 3-2:ビーイングのアニソンアーティスト
- 4:アニサマにおける3社
- 5:まとめ
1-1:ビクターとアニメソングの歴史
アニメソングレーベルとしてのビクターは現在では「フライングドッグ」として知られていますが、正確にはフライングドッグは音楽制作企業「JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント」の子会社でありアニメ映像・音楽制作会社である「株式会社フライングドッグ」であります。一方で親会社であるビクターからもアニソンアーティストが楽曲をリリースしていますので、まとめてビクターとアニメソングの歴史とします。
現在の「JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント」は戦前からの流れをくむキングレコードや日本コロムビアと肩を並べる歴史の長い音楽制作会社です。
1927年、アメリカのレコード会社であるビクタートーキングマシン(米ビクター)が日本法人である蓄音機やレコードの製造会社、「日本ビクター」を設立したのが今のビクターの始まりです。2年後米ビクターは電気機器会社RCAに買収され「RCAビクター」となり、RCAビクターは日本法人の運営を日本企業との合弁企業で行う方針を取り東芝、三井の両社が企業運営に参加する事となります。
1938年、日米関係が悪化する中、RCAビクターは日本からの撤退を決定、日本ビクターは日産へ、さらに東芝へ売却されました。この時RCAビクターから譲り受けたのがビクターの社名とシンボルである犬のマーク「His Master's Voice」の使用権です。
この「His Master's Voice」はイギリスの画家フランシス・バロウドが亡き兄マークから引き取った犬であるニッパーが、蓄音機から聞こえる兄の声をのぞき込む様子が描かれた絵です。元々ニッパーが聴いていた蓄音機はフォノグラフ(円筒型蓄音機)であり、フランシスはフォノグラフの権利を持っていたエジソン・ベル社に売り込みに行きましたが一蹴され、次にエジソン・ベル社とライバル関係にあり、米ビクターの前身であったベルリーナ・グラモフォン社に売り込みに行きました。グラモフォン社は描かれている蓄音機を自社のものであるグラモフォン(円盤型蓄音機)に書き換えてくれるならば絵と商標権を買うと提案しフランシスもこれを了承、「蓄音機をのぞき込む犬の絵」はRCAビクター、そして日本ビクター双方のシンボルマークとして使用されるようになりました。「フライングドッグ」の名前の由来もこのビクターのシンボルである「犬」から取られました。またグラモフォンの英子会社である英グラモフォンの小売業はこの絵の題名である「His Master's Voice」の頭文字を取り「HMV」と名乗りました。その後前回の記事でも触れましたがHMVは英コロムビアと合併しEMIとなり、さらにユニバーサルミュージックとソニーに分割買収されます。こういった中でHMVは独立した小売業となりましたが、現在までこの犬のロゴを使用しています。ただし日本のHMVは日本ビクターとの権利関係のため、犬が無く蓄音機だけのロゴを使用しています。
日本ビクターに話を戻します。同社は日本初のテレビジョン開発等の成果を出しましたが戦時中の適性語排斥の栄養を受け他社と同じく一時的に社名を日本音響と変更したり、空襲で会社や工場が破壊される等の大打撃・混乱を受けます。混乱の中松下電器等他の企業との協力の中徐々に事業を再開、テレビ、ビデオ、レコード事業等を軌道に乗せ復活していきます。特に1976年に開発したVHSビデオは家庭用映像ソフトとして日本の家庭だけでなく海外でも普及し、ビクターを支える事となります。
1972年、日本ビクターは高い利益を上げていた音楽レコード事業を分離し「ビクター音楽産業株式会社」を設立、80年代からアニメソング制作にも関わっていき現在のフライングドッグまで続くアニメソングレーベルへの道を歩み始める事となります。なお93年には販売部門を吸収合併した事により「ビクターエンタテインメント」に社名を変更する事となりますが、文中では一貫して「ビクター」として表記する事となります。
初期のビクターが楽曲を担当した作品の代表作が「タイムボカン」シリーズです。70年代後半から80年代前半まで昭和シリーズが製作され高い人気を博し、平成でも何度もリメイクされたこの作品は男女二人組の主人公と三悪のギャグ要素の強いドタバタバトルという様式美を元として何作もシリーズが作られました。このシリーズの主題歌や音楽を担当したのが「山本正之」です。シリーズ7作中6作の主題歌や挿入歌、劇伴等様々な音楽を担当した山本ですが、代表曲は何と言ってもシリーズ2作目「ヤッターマン」の主題歌「ヤッターマンの歌」です。シリーズの中でも一番人気と言えるこの作品の主題歌は当時のアニメソングとしても驚きの50万枚の売り上げを記録、平成のリメイク版では他アーティストにカバーされ、その最終話や実写版でも原曲が使われる等シリーズを代表する曲となりました。
他には1981年の「戦国魔神ゴーショーグン」、1983~84年の「機甲創世記モスピーダ」、1984年の「巨神ゴーグ」等がありますが、何と言っても現在まで続く人気シリーズとなったのは1982~83年に放送されたTVアニメ「超時空要塞マクロス」です。
この作品は「機動戦士ガンダム」や「宇宙戦艦ヤマト」等宇宙・SFものロボットアニメの系譜にありながらもただ戦うだけでは無く人間ドラマや恋愛、他文化との共存等新たなるストーリー性や戦闘機やロボットの形態を併せ持ち変形する「バルキリー」等の現実の兵器に近いながらもSF的存在であるリアルロボットの登場等今までとは異なる様々な要素が組み込まれた作品であり、高い評価を受け商業的にも成功、放送期間が延長され終了後の84年には劇場版アニメ「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」が公開され配給収入7億円の大ヒット作となりました。このヒットにより現在まで続く「マクロスシリーズ」と呼ばれる同一世界観の続編シリーズが作られる事となり、TV版の監督であり、「宇宙戦艦ヤマト」等数々の名作政策を担当した石黒昇の元、メカニックデザイン担当であり劇場版では石黒と共に共同監督を担当、以後マクロスシリーズを始めとする数々のビクター関係アニメで監督・原作を担当する河森正治を初めとし、メカニック作画監督であり「板野サーカス」と呼ばれる躍動感のある作画で知られるアニメーターの板野一郎、キャラクターデザイン担当でありその後もマクロスシリーズや他の多くの作品のキャラデザや作画を担当する事になる美樹本晴彦といった多くの有名アニメ関係者を生む事となります。
そしてマクロスを語るに忘れてはいけないのが「歌」です。藤原誠が歌うOP「マクロス」ED「ランナー」のヒットもありましたが、何と言ってもマクロスにとっての「歌」は作中の根幹にかかわるものです。マクロスは作中でヒロインの一人、リン・ミンメイがアイドルとして成功しその歌が世の中を変え、最終的には異星人との戦争を終わらせるまでになるというストーリーであり、作中でも数多くのキャラクターソングが作られ、使用されました。「私の彼はパイロット」等これらのキャラソンを歌い、リン・ミンメイの声優を担当したのが「飯島真理」です。
元々ビクターで歌手デビューする予定であった飯島は同時期にディレクターの勧めを受けマクロスの声優オーディションを受け見事抜擢されます。マクロスとその楽曲の大ヒットと共に飯島は大人気歌手となり特に前出の劇場版主題歌「愛・おぼえていますか」はオリコン最高7位、年間ランキングでも上位を記録し、アニメソング歌手としては珍しく当時の人気音楽番組である「ザ・ベストテン」に出演する等の後のシリーズでも何回もカバーされる等マクロスを代表する曲となりました。キャラクターを担当する声優が主題歌も歌う、と言う事はそれ以前にも多くありましたが、作中で直接作品に関係する楽曲を担当するという試みは新しく、マクロスシリーズだけでなく後のキャラクターソングやアイドル声優文化に多くの影響を与えました。一方で飯島は自身が過剰にキャラクターであるリン・ミンメイと同一化される事に苦しみ、マクロスやアニメ、その楽曲と離れていた時期もありましたが、現在ではアメリカに在住しながらも頻繁に帰国しマクロスシリーズ関係の作品やイベント、ライブに参加しています。
マクロスシリーズは92年に「超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-」、94~95年には「マクロスプラス」とOVAシリーズ作品が作られました。「マクロスプラス」は河森正治が初代マクロスの劇場版以来の監督を担当した作品であり、そしてこの作品でアニメ音楽家としてデビューしたのが「菅野よう子」です。既にゲーム音楽やCMソング、人気アーティストのレコーディングメンバー等、数々の作品を生み出していた菅野ですがこの作品で初めてアニメ音楽に関わり、以後も数多くのビクター関係作品や「攻殻機動隊」シリーズ等ビクター外作品でも音楽を担当する事となります。ビクター作品関係については後に記しますが、その活動は上松範康や澤野弘之といったアニメ音楽家だけではなく国内外を問わず多くのアーティストにも多くの影響を与えました。またアニメ外でもNHKの朝ドラマ「ごちそうさん」や大河ドラマ「おんな城主直虎」を担当し2012年の第63回紅白歌合戦では審査員の一人に選ばれ、2019年11月の「天皇陛下御即位をお祝いする国民祭典」では奉祝曲「Ray of Water」の作曲と演奏を指揮するなど、歴史に残る活動をしています。
また「マクロスプラス」はヒロインであるミュン・ファン・ローンを声優として深見梨加が演じる一方、歌唱をビクターに所属するアニソン歌手である「新居昭乃」が担当しました。新居は1986年、劇場アニメ「ウインダリア」の主題歌「約束」でデビューしこの作品ではED「VOICE」を担当、その後も現在まで多くのビクター作品の主題歌を担当しています。また重要人物であるバーチャルアイドル、シャロン・アップルはキャラクターの声優としては兵藤まこが演じ、歌は新居を含む複数の歌手が担当するという、初代マクロスとは声優と歌唱担当が異なる形を採用しています。これは後のシリーズにおいても採用されており、さらに声優がそのまま歌唱する体系と組み合わされています。
そして1994~95年に初代以来のTV作品として11年ぶりに放送されたのが「マクロス7」です。この作品では今までのマクロスシリーズと同じく「歌」を重要な要素としながら主人公格として登場するのはロックバンド「Fire Bomber」であり、ボーカルを担当するキャラクターは主人公の熱気バサラとヒロインのミレーヌ・フレア・ジーナスという点でそれまでの作品とは異なります。また「プラス」と同じくバサラとミレーユを声優として神奈延年と櫻井智*1が担当し、歌唱を「福山芳樹」と「チエ・カジウラ」が担当しました。「マクロス7」はシリーズの後継者に相応しい大ヒット作となりTV版が1年間放送された事に加え劇場版やOVAも制作されました。また「Fire Bomber」の楽曲も次々とヒットしOP「SEVENTH MOON」や前期ED「MY FRIENDS」、後期ED「…だけど ベイビー!!」等の楽曲が6~7万枚、アルバム「LET'S FIRE!!」は 第10回日本ゴールドディスク大賞アニメ部門アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞し、同作のコンピレーションアルバム「MUSIC SELECTION FROM GALAXY NETWORK CHART」と共にそれぞれ22万枚のセールスを記録しました。また福山とカジウラはソロアーティストとしても活動し、特に福山はそれ以前からバンド活動をしているほか、ビクターでは2002年のアニメ「OVERMANキングゲイナー」主題歌「キングゲイナー・オーバー!」をソロアーティストとして担当。その後のソロ活動はジェネオンやランティスが主となり、「JAM Project」の一員としての活動が多くを占めていますが、現在でも「Fire Bomber」としてライブの開催やマクロスシリーズのイベントへ多数出演しているなど、ビクター関係イベントにも多数出演しています。
時代は前後しますが、1988年から89年に製作されたOVA「トップをねらえ!」の制作もビクターがバンダイと共同で担当しました。後に「ふしぎの海のナディア」「新世紀エヴァンゲリオン」「天元突破グレンラガン」と言った大ヒット作を生み出すガイナックスが製作し、エヴァンゲリオンの庵野秀明が初めて監督を担当したこの作品は王道路線と過去作品のパロディ要素を組み合わせて大ヒットしました。この音楽制作を担当した人物が既に「ドラゴンボール」「エスパー魔美」等数々のアニメ作品を、その後も「機動武闘伝Gガンダム」「サクラ大戦」等の作品の楽曲制作を担当する事となるアニメ界の大音楽家、「田中公平」です。
さて90年代のビクター関係作品の代表が「勇者シリーズ」です。「機動戦士ガンダム」のサンライズと「トランスフォーマー」のタカラがタッグを組み、人と同じく心を持ち、実在するパトカーや消防車、新幹線といった身近な乗り物から変形合体するスーパーロボットが少年少女と共に悪のロボットと戦うストーリーは子供たちに大人気となりました。このシリーズの内第一作である「勇者エクスカイザー」を除き、第二作「太陽の勇者ファイバード」から最終作である「勇者王ガオガイガー」の映像・音楽ソフトの制作をビクターが担当しました。
この1997年に放送された「勇者王ガオガイガー」の主題歌「勇者王誕生!」を担当し、一気にその名を高めたのが「遠藤正明」です。遠藤はバンドや音楽ユニットで活動している歌手でしたが、1995年にこのシリーズでお馴染みである井上俊次の勧めでソロデビューし、TVアニメ「怪傑ゾロ」で初のアニメ主題歌を担当します。「勇者王誕生!」は「ガオガイガー」の監督でもある米たにヨシトモが作詞を、そして「トップをねらえ!」等数々の作品に加え「ガオガイガー」でも音楽制作も担当している大人気作曲家の「田中公平」が作曲を担当しました。当時すでに珍しくなっていた作品タイトルを曲中に連呼する、曲中に「ガ」が170回以上登場する、等そのインパクトから大ヒットし、続編のOVA「勇者王ガオガイガーFINAL」でも「神話(マイソロジー)ヴァージョン」というアレンジを加えて引き続き主題歌となりました。
その後の遠藤の活動は様々なレーベルの股を掛ける事となります。日本コロムビアでは5.6万枚のセールスを記録し当時のスーパー戦隊シリーズ主題歌では最大のヒット曲となった2003年の同名作品の主題歌「爆竜戦隊アバレンジャー」*2。やその後の戦隊シリーズの挿入歌を、マーベラスエンターテイメントではTVアニメ「遊☆戯☆王5D's」OP「BELIEVE IN NEXUS」「明日への道〜Going my way!!〜」を、そして現在ソロ活動の主要レーベルとなっているランティスではゲーム「マブラヴ オルタネイティヴ」の挿入歌である人気曲、「Carry on」や近年のヒット曲である特撮作品「ウルトラマンZ」OP「ご唱和ください 我の名を!」をリリースしており、ビクターでの活動はあまり見られていません。しかし「勇者王誕生!」は未だに遠藤を代表するヒット曲であり、また遠藤が初期からメンバーとして参加している「JAM Project」は初期にビクター製作のTVアニメ「The Soul Taker 〜魂狩〜」OP「SOULTAKER」やオリジナルアルバム「JAM FIRST PROCESS」をビクターからリリースする等深いかかわりを持っています。
そして90年代にデビューし今なお大人気声優アーティストとして活動しているのが「坂本真綾」です。子供のころから子役や洋画の吹き替え声優として活動していた坂本は1996年、河森正治監督作品「天空のエスカフローネ」で初のTVアニメ作品に主人公として初のレギュラー出演をします。当時まだ16歳の高校生でした。そして同時に坂本はこのアニメのOP「約束はいらない」でアニソン歌手デビューをします。この楽曲の作曲を担当したのが「マクロスプラス」に引き続き「天空のエスカフローネ」の音楽制作を担当した「菅野よう子」、作詞を担当したのは今井美樹の「PIECE OF MY WISH」や中山美穂の「幸せになるために」を初めとするJ-POPのヒット曲を数多く作ってきた「岩里祐穂」でした。両者はその後も坂本の多くの楽曲制作に参加し、特に菅野は2003年まで坂本のプロデュース全般を担当、その後も多くの楽曲に作曲家として参加しています。また岩里はその後坂本だけでなくビクターを中心とし、さらに他社の数多くのアニソンの作詞を担当しています*3。
その後も坂本はTVアニメ「ロードス島戦記-英雄騎士伝-」OP「奇跡の海」や「カードキャプターさくら」OP「プラチナ」等のアニメ主題歌をヒットさせました。「奇跡の海」は6.6万枚のリリースを記録し坂本にとって当時最大のヒット曲となり、「プラチナ」は「カードキャプターさくら」の大ヒットと共に現在に至るまで坂本を代表する、大人気アニメソングとなりました。ちなみに「カードキャプターさくら」の原作者である「CLAMP」のアニメ化作品において坂本は多くの作品に声優として出演すると共に主題歌を担当しています。「プラチナ」以前にはラジオドラマ「CLAMP学園探偵団」主題歌「ボクらの歴史」、同作のアニメ版ED「Gift」、その後はTVアニメ「ツバサ・クロニクル」ED「ループ」「風待ちジェット」、TVアニメ「こばと。」OP「マジックナンバー」等の作品主題歌を担当しており、これらの作品の主題歌を担当する事で声優としての活躍と併せて大人気声優アーティストへの道を歩む事となります。
また同じくCLAMP作品でアニソン歌手への道を歩み始める事となったのが「ALI PROJECT」です。宝野アリカと片倉三起也の二人からなる音楽ユニット、ALI PROJECTは1985年から「蟻プロジェクト」としてインディーズ活動をしており92年に東芝EMI(現在のユニバーサルミュージック)からメジャーデビュー、95年からは複数のレーベルから楽曲をリリースしていますが、ビクターはランティスと並ぶALI PROJECTの主要活動レーベルです。ALIが初めて担当したアニメ関係の楽曲は1996年に放送されたCLAMPの漫画を原作としたラジオドラマの同盟主題歌「Wish」です。翌97年には「CLAMP学園探偵団」アニメ版OP「ピアニィ・ピンク」で初のアニメ主題歌を担当、以後アニソンアーティストとしての道を歩む事となります。
こういったアニメ作品を手掛ける中、1999年にビクターエンタテインメントは独自のアニメ部門名として「m-serve(エムサ)」を使用し始めます。独立したレーベルとはなりませんでしたが、現在のフライングドッグの前身と言える存在となります。
エムサ時代にもビクターは数多くのヒット作品を生み出します。1999年から2000年に放送された「無限のリヴァイアス」、2001年の「スクライド」という谷口悟朗の初期監督作品が製作されいずれもヒットしました。「無限のリヴァイアス」の主題歌でデビューした「有坂美香」は後にもビクター作品の主題歌を担当する事となります。
「スクライド」と同じく2001年に放送されたアニメ「ノワール(NOIR)」は「銃と少女」を題材としたアクション作品としてヒットし、同一コンセプトの三部作作品がビクターで製作される事となりました。この作品で音楽制作を担当したのが「梶浦由記」です。既に以前の記事でも名前が出た梶浦ですが、共同以外でアニメの音楽制作を担当するのはこの作品が初であり、この作品をきっかけにアニメ音楽家として本格的に歩み名を上げる事となります。また同作の挿入歌「Indio」を「chiaki」名義で担当したのは梶浦と古くから交友がある歌手の「石川智晶」(当時の芸名は「石川千亜紀」であった。)です。このタッグは翌年の作品でさらに大ヒットを生む事となります。また同作のOP「コッペリアの柩」を担当したのはALI PROJECTであり、その後もビクター作品の多くの主題歌を担当する事となります。
翌年の2002年、ビクターからはさらなるヒット作が多く誕生しました。
「ラーゼフォン」はその世界観も相まってヒットし、同作でヒロインを演じた坂本真綾の歌うOP「ヘミソフィア」は「奇跡の海」に次ぐ5.4万枚の売り上げを記録、また坂本は同作の劇場版「ラーゼフォン 多元変奏曲」の主題歌「tune the rainbow」も3.8万枚のヒット曲となりました。なおこの2曲も菅野よう子と岩里祐穂のゴールデンコンビによって作られました。
オンラインゲームを題材としたメディアミックス作品「.hack」のアニメ作品「.hack//SIGN」では音楽制作を梶浦由記が、そして主題歌は梶浦と石川智晶の音楽ユニット「See-Saw」が担当しました。先ほども触れましたが二人は以前から交流があり、学生時代にバンドを組んでいた後に93年に音楽ユニット「See-Saw」として活動していましたが2年ほどで活動休止、互いにソロ活動をしていましたが「ノワール(NOIR)」をきっかけに再結成、「.hack//SIGN」のOP「Obsession」、ED「優しい夜明け」を担当、5万枚のヒット曲となりました。
士郎正宗原作の漫画「攻殻機動隊」をTVアニメ化した「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」は原作の高く評価された世界観に加え社会問題を題材としたストーリーやクオリティの高さから続編である「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」を含め映像作品が累計230万を超えるセールスを記録、日本国内で多くの賞に選ばれただけでなくアメリカのケーブルテレビで視聴率1位を記録する等世界的ヒット作となりました。この作品の音楽制作を担当した菅野よう子は東京アニメアワードの音楽賞を受賞し、同シリーズの主題歌「inner universe」「rise」の作曲も担当しました。この主題歌を歌ったのはロシア出身の歌手「Origa」です。彼女は来日後に日本を拠点として活躍しアニメソングやコマーシャルソングで活躍、菅野とは数多くの楽曲を提供され、菅野のコンサートに歌手として出演し「ANIMAX MUSIX FALL 2010」等のアニソンフェスに出演する等活動していましたが、残念ながら2015年にガンでこの世を去りました。しかしその歌は今でも多くの作品と共に愛されています。
その他にも2012年のビクター作品では「OVERMANキングゲイナー」「十二国記」「ちょびっツ」等のヒット作が多くありますが、その中でも特に大きなヒット作となったのが「機動戦士ガンダムSEED」です。21世紀初のTVシリーズであるこのガンダム作品は賛否両論ながらも大ヒットし、ガンダムシリーズの新しい時代を築く事となりました。アニメ作品としてはバンダイが製作、主題歌は主にソニーが担当したこの作品ですが、ビクターは楽曲関係で製作に携わる事となります。
ガンダムSEEDのビクター関係の音楽を担当したのはまたしても登場する事となる梶浦由記です。まずは「See-Saw」が前期ED「あんなに一緒だったのに」を担当しました。この楽曲はオリコンウィークリーチャート最高5位、17万枚のセールスを記録、ガンダムSEEDと共に大ヒット曲となり、ライトなアニメ層にも一気にSee-Sawの、そして梶浦と石川の名を広める事となります。なおガンダムSEEDが放送された土曜午後6時、そして後継時間帯である日曜午後5時において14年半の間放送されたアニメの中で2クール以上使用されたのはこの曲だけでした。また2003年にリリースされたアルバム「Dream Field」は7万枚以上の売り上げを記録、当時の声優関係以外のアニソンアーティストのアルバムとしては最高売り上げを記録しました。*4
梶浦は他にもガンダムSEEDのキャラクターソングや挿入歌の制作を担当しましたが、その中でも話題になったのが「FictionJunction YUUKA」の「暁の車」です。「FictionJunction」は元々梶浦が計画していたソロプロジェクトの名称であり、梶浦が楽曲制作と演奏を担当、ボーカルアーティストや他ミュージシャンを楽曲ごとに呼ぶという形式のものです。その名も梶浦が「Fiction(製作)」し他ボーカリストやミュージシャンと「Junction(繋ぐ)」事をコンセプトから付けられました。そしてこの曲のボーカルとして招かれたYUUKAとは声優の「南里侑香」です。元々劇団の子役出身だった南里ですが、この劇団の音楽制作に多く関係していた梶浦が南里をボーカリストに選びます。こうして製作された「暁の車」は劇中の重要なシーンに使用された事もあり大好評を呼び、キャラクターソングのCDシリーズの1つに収録されましたが、そのCDだけ他よりも1万枚以上高い売り上げを記録しました。さらにガンダムSEEDの続編である「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の放送直前である2004年にシングルCDとして再リリースされ、半年以上オリコンランキングにチャートインし10万枚以上の売り上げを記録しました。
この続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」は前作以上の賛否両論を呼びながらも同じく大ヒットし、ビクターと梶浦も楽曲制作に関わる事となります。第二クールのEDである有坂美香の「Life Goes On」は11万枚の大ヒット曲となり最終EDを担当した「See-Saw」の「君は僕に似ている」も15万枚のセールスを記録し前作を上回るウィークリー4位を獲得、また再び挿入歌を担当した「FictionJunction YUUKA」の「炎の扉」も9.7万枚を売り上げディリー1位を記録する等大ヒットを連発する事となりました。なおSee-Sawはこれ以後再び事実上の活動休止となり、互いにソロ活動が主となります。
「SEED DESTINY」と同年に放送されたアニメ「MADLAX」は「ノワール」と同コンセプト・スタッフで作られた作品であり、梶浦も引き続き音楽制作を担当しました。またこのアニメのOP、ED、挿入歌全てを「FictionJunction YUUKA」が担当しました。ちなみに「暁の車」のシングル化よりもOP曲「瞳の欠片」のリリースの方が先なのでこちらがデビューシングルとなります。またこの作品の挿入歌「nowhere」は楽曲としての完成度に加え「ヤンマーニ」と聞こえるコーラスが大きな話題となりました。なお「ヤンマーニ」は梶浦によると「ヤッラーヒ」と発音するとの事ですが、基本的には聴いた本人の聴こえ方に任せるとのことです。
その後FictionJunctionは南里侑香の他にも多くのボーカリストを迎えて活動を広めていきます。」FictionJunctionはユニット名として「FictionJunction YUUKA」のようにFJの後にボーカリストの愛称を付けて活動をしており、2005年の「ツバサ・クロニクル」では「KEIKO」と「KAORI」が、「エレメンタルジェレイド」では「ASUKA」が、2006年のOVA「北斗の拳」では「WAKANA」がそれぞれボーカリストとして参加しました。なお「KAORI」こと「織田かおり」はSound Horizonのボーカリストやソロアーティストとして活動し*5、「ASUKA」は「結城アイラ」としてランティスからソロアーティストとしてデビュー*6、「KEIKO」と「WAKANA」はオーディションで選ばれた「Hikaru」と共に「Kalafina」としてソニーからデビューする等ビクターの外でも活動しています。
またこの年、ビクターに移籍した音楽ユニット「savage genius」はアニメ「うた∽かた」OP「想いを奏でて」ED「いつか溶ける涙」でデビュー、その後も「エレメンタル ジェレイド」「シムーン」「夜桜四重奏 〜ヨザクラカルテット〜」「PandoraHearts」等数多くのビクター作品の主題歌を担当しています。
続く2005年、ビクターからさらにヒット作が世に出ました。「創聖のアクエリオン」です。マクロスシリーズの河森正治が出かけたオリジナルロボットアニメはその独自の勢いや世界観からヒット作となりましたが、そのヒットを支えたのがアニメと同名の主題歌「創聖のアクエリオン」です。この曲はこの曲の制作は作詞を岩里祐穂、作編曲を菅野よう子という今やお馴染みのコンビが担当し、日米ハーフ四兄妹のコーラスユニット「bless4」の次女AKINOが「AKINO from bless4」の名義で歌唱を担当、その伸びのある声と特徴的な歌詞が大きな話題を呼びました。また菅野は同作の音楽制作を保刈久明と共に担当しています。またこの歌手・製作陣の組み合わせは後期OP「Go Tight!」でも起用され、さらに2012年に放送された続編「アクエリオンEVOL」ではbless4のコーラスとダンスが加わった「AKINO with bless4」として「君の神話〜アクエリオン第二章」「パラドキシカルZOO」がそれぞれ前期・後期OPを担当しました。これらの楽曲も菅野が作曲を担当しています。
また「創聖のアクエリオン」は単にアニメで使用されただけでなく2007年に作られた同作のパチンコ版のCMが全国のTV番組で放送され、その中でこの曲が使用された影響によりアニメファン以外にも知られる事となります。そのため発売から2年後にオリコンチャートにランクインするという異例の現象を起こし、最終的には7.7万枚のセールスを上げる事となります。またこのパチンコで使用された声優が歌唱する「創聖のアクエリオン エレメント合体Ver.」もこちらは7.8万枚のセールスを記録、合計で15.5万枚の売り上げを達成しました。音楽配信でも多くのDLを記録し、2014年には日本レコード協会に着うたフルとPC配信DLの合算でミリオンを記録、アニメソングとしては「残酷な天使のテーゼ」に次ぐ2例目であり現在でも「紅蓮華」を含め3曲しか達成していない記録を達成しています。
アクエリオン以外でもAKINO from bless4は「甘城ブリリアントパーク」「艦隊これくしょん -艦これ-」「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」といった作品の主題歌を担当しており、他にもbless4のメンバーごとのコラボシングルもアクエリオンEVOL前期ED「月光シンフォニア」等のアニメで起用されています。
またアクエリオンのEDを担当する歌手としてデビューしたのが声優の「牧野由依」です。作曲家の牧野信博の娘として生まれた牧野は幼いころから子役・ピアニストとして活躍しており、2005年に「創聖のアクエリオン」ED「オムナ マグニ」でアニソン歌手としてもデビューしました。また同年に「ツバサ・クロニクル」で主人公として声優としての活動も本格的に始め、同作の劇場版「劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君」ではアーティストとしてED「アムリタ」を担当し、こちらの曲がデビューシングルとなりました。*7そしてアニソン歌手としての牧野の名を高めたのが同年に始まったTVアニメ「ARIA」シリーズです。癒し系アニメとして高く評価された同作において牧野はTVアニメシリーズ3作全てにおいてOPを担当、作風に合った穏やかな歌声が高く評価されました。この他にも「スケッチブック 〜full color's〜」等のアニメ主題歌を担当していましたが、2009年にソニーに移籍、さらに2014年にはテイチクエンタテインメントに移籍して活動を続けています。
2006年からもビクターは多くの話題作と楽曲を生みました。See-Sawのボーカルであった「石川智晶」は以前からソロアーティストとしてもビクターに所属していましたが、この年にTVアニメ「シムーン」OP「美しければそれでいい」で本格的にアーティスト活動を開始します*8。翌年のTVアニメ「ぼくらの。」OP「アンインストール」は大きな話題曲となり2万枚の売り上げを記録、その後も「幕末機関説 いろはにほへと」「逮捕しちゃうぞ フルスロットル」等の作品の主題歌・挿入歌を担当しました。
「ゼーガペイン」はSF世界観やストーリー性が高く評価され、また今や大人気声優となった浅沼晋太郎と花澤香菜が新人ながら主人公とヒロインを演じた事でも有名ですが、新居昭乃のOP「キミヘ ムカウ ヒカリ」も高い評価を受けました。
同年放送された「.hack」シリーズのTVアニメ「.hack//Roots」の主題歌もALI PROJECTが担当、ED「亡國覚醒カタルシス」は5.7万枚の大ヒットとなりALI PROJECT自身最大のヒット曲となりました。
そしてビクターの2006年最大のヒットアニメと言えば谷口悟朗監督作品「コードギアス 反逆のルルーシュ」です。この作品はCLAMPを迎えたキャラデザや主人公のダークヒーロー性なストーリーなどで大ヒット作品となり、2008年には2期である「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」が放送されました。その人気から数多くのメディアでスピンオフ作品が作られるだけでなく、2010年代になってもOVA「コードギアス 亡国のアキト」が製作され、さらに2017~18年にはTVアニメ版を再編集した新ストーリーの劇場版、さらその続編である劇場版作品「復活のルルーシュ」が製作されました。にこの作品はビクター作品ながら主題歌の多くはFLOW等のソニー系アーティストが担当しましたが、そんな中でビクターからはALI PROJECTが1期前期ED「勇侠青春謳」と2期後期ED「わが﨟たし悪の華」を担当しまし、同作のヒットと相まってALI PEOJECTの中でも人気曲となっています。なお「亡国のアキト」の主題歌は坂本真綾の「モアザンワーズ」「アルコ」であり、この作品でもヒロインとして出演しています。
さて日本ビクターはバブル崩壊後からの不況の中だんだんと業績が悪化し、部門の再編を余儀なくされます。長年日本ビクターは松下電器(パナソニック)の子会社でしたが音響機器会社である「ケンウッド」との業務提携を初めだんだんと松下の元から離れていく事となり、2007年10月にビクター本体のアニメ映像部門である「Victor Animation」とアニメ音楽部門である「m-serve」は系列会社である「JVCエンタテインメント・ネットワークス」に移管される事となります。この変更により「ビクター」の名前が使えなくなる中、新しくアニメレーベル名として付けられたのが「flying DOG」です。この名は先ほどにも紹介したビクターのシンボルである「ニッパー犬」と、命名者である佐々木史朗代表取締役を初めとする社員に戌年生まれが多かった事に由来します。
その後2008年に日本ビクターとケンウッドは経営統合し「JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社」が設立され2社はこの新会社の子会社となり、さらに2011年には「株式会社JVCケンウッド」に商号を変更し2社は正式に経営統合され、また2011~12年にかけて松下電器が持ち株の大半を売却し独立した会社となっています。これに合わせて2009年にJVCエンタテインメント・ネットワークスも「株式会社フライングドッグ」に社名を変更しアニメ関係事業専門の子会社となり、さらに2014年にビクターエンタテイメント株式会社が「株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント」に社名を変更しました。現在フライングドッグはこのJVCケンウッド・ビクターの機能子会社であり、親会社の「株式会社JVCケンウッド」の子会社である「株式会社JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント」の子会社であり、いわゆる孫会社に当たります。
さてフライングドッグブランドがスタートした2007~09年頃も「スケッチブック 〜full color's〜」「バンブーブレード」「鉄のラインバレル」「狼と香辛料」といった話題作が次々と生まれました。この時期の作品については外せない人物が歌手・作詞家の「河井英里」です。上記の「ARIA」シリーズや「スケッチブック 〜full color's〜」「バンブーブレード」といった作品主題歌の作詞を担当し、「ARIA」シリーズの挿入歌や「うたわれるもの」ED「まどろみの輪廻」等歌手としても活動、フライングドッグ作品や他レーベルで活躍しましたが2008年に癌でこの世を去りました。まだ43歳の若さでした。
2007年に始まったガンダム作品の新TVシリーズ「機動戦士ガンダム00」では音楽制作の1社として参加、ドラマCDシリーズの販売を担当したほか、2008~09年に放送されたセカンドシーズンでは石川智晶が前期ED「Prototype」を担当。自身最高となる4.9万枚のセールスとSee-sawを含めて最高記録となるウィークリー3位を記録しました。また2010年公開された同作の劇場版「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の挿入歌「もう何も怖くない、怖くはない」も担当しました。
2008年には「天体戦士サンレッド」が15分アニメながらヒット、翌09年には2期も制作されました。この作品の主題歌である「溝ノ口太陽族」「続・溝ノ口太陽族」を歌ったのが既に「げんしけん」主題歌「マイペース大王」等のアニメソングや「日本ブレイク工業社歌」で知られている「manzo」でした。なお現在は以前からの仕事である楽曲提供や舞台音楽の作成をする傍らライブ活動を続けています。
これらの作品の中でも最大のヒット作が、2008年に放送されたマクロスシリーズ25周年作品、「マクロスF」です。総監督にマクロスシリーズ河森正治、音楽制作担当に菅野よう子と「マクロスプラス」「天空のエスカフローネ」「創聖のアクエリオン」等の作品でのダッグを迎えたこの作品はマクロスシリーズ伝統のストーリーに深く関わる歌や三角関係、ハイクオリティな戦闘シーンが多く盛り込まれながらも新しい時代に合わせたアニメ作りも併せて組み込まれ大ヒットを記録、映像ソフトは当時まだ普及途上だったBlu-ray Discの売り上げがDVDの売り上げを全巻上回りBD1巻はこの年のBD売り上げランキング1位を獲得、BD・DVDの累計売上は約41万枚に上り、2000年代のアニメとしてはトップレベルのものとなりました。
そして歌をテーマにしたマクロスシリーズの最新作だけあり、楽曲にはかなり力が入れられました。なおこの項で説明する楽曲はほぼ全て菅野よう子が作曲・編曲しています。この作品を代表する楽曲は数多くありますが、まずは前期OPである坂本真綾の「トライアングラー」についてです。マクロスシリーズそのものを象徴するタイトルと歌詞となったこの曲は同作と同じく大ヒットし9万枚のセールスとオリコンウィークリー最高3位を記録、坂本真綾にとって最大のヒット曲となりました。坂本自身も声優としてこの作品に出演し、またアーティストとしてはこの曲を含む長年の活動で更なる高い人気を獲得、2年後の2010年には女性声優アーティストとして5人目となる日本武道館単独公演を開催しました。
そしてこの作品から新たに二人のアニソンアーティストが誕生する事となりました。一人はヒロインの一人、シェリル・ノームの歌唱を担当した「May'n」です。彼女は2003年にわずか13歳でホリプロスカウトキャラバンファイナリストの一人に選ばれ2005年に本名の中林芽依名義でデビュー、その中ではTVアニメ「ラブゲッCHU 〜ミラクル声優白書〜」の主題歌を担当した事もありました。しかし07年に歌手としての契約が終了していた所フライングドッグからシェリルの歌唱担当オーディションに声を掛けられ合格、アニメソング歌手としての道を歩む事となります。
シェリルの役柄がトップ人気を誇るアーティストと言う事もあり、May'nの担当楽曲も激しいロック調楽曲や現代のアニソンを思わせる楽曲が多く作られました。挿入歌である「射手座☆午後九時 Don't be late」「インフィニティ」、後期ED「ノーザンクロス」等です。また「ダイヤモンドクレパス」のようなバラードもあり、いずれも高い人気があります。「シェリル・ノーム starring May'n」名義でリリースされた「射手座☆午後九時 Don't be late/ダイヤモンドクレパス」は10万枚の大ヒット曲となりました。
もう一人のヒロイン、ランカ・リーを声優として、そして歌唱アーティストとして演じるのがこの作品のオーディションでデビューした当時18歳の新人声優、「中島愛」でした。中島は13歳で芸能界デビューしましたが5年間殆ど仕事が無い中最後のチャンスとして受けたこのオーディションに見事合格し声優・アーティストとしての道を歩む事となります、
ランカの役柄が歌を好きな少女が歌手としてデビューしアイドルの階段を駆け上がっていくという事もあり、アイドル風の楽曲が多く作られました。その代表曲が「ランカ・リー=中島愛」の「星間飛行」です。作中の折り返しである12話の重要なシーンで使用されたこの楽曲は振り付けやフレーズが大反響を呼び、この曲の為にこの話のシナリオや演出が変更されたというほどの人気曲となり、セールス上も8.5万枚を記録ました。なおこの曲の作詞は70年代から数多くのアイドルの歌で作詞を手掛け、初代マクロスでリン・ミンメイを演じた飯島真理が歌手デビューした際にも楽曲提供した大作詞家、松本隆が担当しましたが、松本は「初代の頃からマクロスはやりたいと思っていた」と語っており、実現する事となりました。
そしてこの二人のデュエットソングが後期OP「ライオン」です。ストーリーが後半に至る中での盛り上がりを反映するような熱いこの楽曲はマクロスF関係の中でも最大のヒット曲となり、オリコンウィークリーチャート3位、12枚枚のセールスを記録、この年最も売れたアニメソングとなりました。またこの楽曲はマクロス関係のライブ以外ではMay'nと中島が共演しても歌唱される事がほぼ無く、数年に一度しかライブでは聴けないというレア曲となっています。
こういった数多くのヒット曲を生んだマクロスFはイベントも大盛況となり、08年11月に日本武道館で開催されたライブイベントは応募が23万件、抽選倍率が20倍と言う狭き門となりました。その勢いは留まる事無くアニメ最終回に劇場版の制作が決定され、09年に前編「虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜」、11年に後編「恋離飛翼 〜サヨナラノツバサ〜」が公開され、この作中で使用されたシェリル・ノーム starring May'nの「ユニバーサル・バニー」「pink monsoon」「禁断のエリクシア」、「ランカ・リー=中島愛」の「放課後オーバーフロウ」と言った楽曲も次々とヒットしました。
また初代マクロスの劇中時代である2009年には幕張メッセイベントホールにてマクロスシリーズの歴代楽曲を担当してきたアーティスト達によるフェス「マクロス クロスオーバーライブ」が開催され、2013年に国際展示場へ規模を拡大し「クロスオーバーライブ30」が、2019年には「CROSSOVER LIVE 2019」が後述の増えていくシリーズに合わせて出演者も拡大していきます。マクロスF自身も2021年に新作劇場版である「劇場短編マクロスF 〜時の迷宮〜」の公開が決定する等、アニメから10年以上経過しながらもその勢いは健在です。
そしてマクロスFからデビューした二人のアーティスト、「May'n」と「中島愛」はマクロスに限らないアーティストとして活動の幅を広める事となります。
May'nは2009年、TVアニメ「シャングリ・ラ」OP「キミシニタモウコトナカレ」でソロのアーティストであるMay'nとしてのソロ活動を開始します。その後も「オオカミさんと七人の仲間たち」「緋弾のアリア」「ブラッドラッド」「いなり、こんこん、恋いろは。」等数々のフライングドッグ作品だけでなく「アクセル・ワールド」「タブー・タトゥー」「アズールレーン」等他社のアニメ主題歌も多歌唱し、2017年にはTVアニメ「異世界食堂!」のOPを声優ユニット「Wake Up, Girls!」とのコラボユニット「Wake Up, May'n!」として担当しました。ライブ面では2010年にフライングドッグ初となる日本武道館単独公演を、2012年には横浜アリーナ単独公演を開催、また2010年の初のアジアツアーを皮切りに海外でも積極的にライブを開催し、アジアを中心に世界各国の単独ライブ開催やアニソンフェス参加等世界的に有名なアニソンアーティストとなりました。
最近でも「ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王」「胡蝶綺 〜若き信長〜」等の作品の主題歌を担当していましたが、2021年にフライングドッグからDigital Doubleへの移籍を発表しました。
中島愛も同じく2009年にソロアーティストとしてデビュー、TVアニメ「こばと。」ED「ジェリーフィッシュの告白」で初のアニメ主題歌を担当しました。その後も「たまゆら」シリーズ、「輪廻のラグランジェ」「琴浦さん」等のフライングドッグ作品主題歌を担当、2014年から一時音楽活動を休止していましたが16年から活動再開、17年に復帰第一弾としてTVアニメ「風夏」ED「ワタシノセカイ」を発表し現在も「ネト充のススメ」「すのはら荘の管理人さん」「星合の空」等数多くのアニメ主題歌を担当しています。
さて2010年代に入るとさらに多くのアーティストがフライングドッグからデビューしていきます。2011年には声優の野水伊織が「野水いおり」名義でアーティストデビュー、声優としても出演したTVアニメ「これはゾンビですか?」OP「魔・カ・セ・テ Tonight」を担当、しその後も「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」「棺姫のチャイカ」「空戦魔導士候補生の教官」等の作品主題歌を担当すると共に声優としても作品に出演しています。
2012年に「ファイ・ブレイン 神のパズル」の主題歌でデビューした「ナノ」は現在に至るまで「BTOOOM!」「魔法少女育成計画」「CONCEPTION」「ケムリクサ」等数々のフライングドッグ作品の主題歌を担当していますが、特に有名なのがTVアニメ版OP「SAVIOR OF SONG」や劇場版主題歌「Rock on」等シリーズを通して5曲を担当した「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」です。同作品からはメインヒロイン3人による声優ユニット、「Trident」も誕生しTVアニメED「ブルー・フィールド」等の主題歌・挿入歌を担当しました。またメンバーの一人である「沼倉愛美」は2016年に自身も出演した「魔法少女育成計画」OP「叫べ」でアーティストデビューし2020年のアーティスト活動終了まで「風夏」「かくりよの宿飯」「CONCEPTION」といった作品の主題歌を歌いました。
他のレーベルと同様このTridentのように、2010年代のフライングドッグでも作品ユニットの活動が活発になります。2013年にアニメ化され2015年の2期、17円、そして2021年の劇場版とシリーズが続いている「きんいろモザイク」から生まれた作品ユニット「Rhodanthe*」は作品と共に活動を続けシリーズ全ての主題歌を担当、現在まで活動を続けています。
一方でこの時期にアーティストデビューした人には現在フライングドッグで活動していない人もいます。「悠木碧」は2012年にアーティストデビューし「世界征服〜謀略のズヴィズダー〜」*9や「彼女がフラグをおられたら」といった作品の主題歌を担当しましたが、2017年に一時活動休止の後日本コロムビアに移籍しました。
フライングドッグの次世代アーティスト発掘オーディションである「フライングドッグ・オーディション」の第一回グランプリ受賞者である「西沢幸奏」は2015年、TVアニメ「艦隊これくしょん -艦これ-」ED「吹雪」でデビューしました。「吹雪」は5.5万枚を売り上げえる大ヒット曲となり、西沢はその後同作の劇場版や「学戦都市アスタリスク」「ラーメン大好き小泉さん」といったアニメ主題歌を担当しましたが2019年、ソニー系列のSACRA MUSICに移籍、名義も「EXiNA」と変更して活動しています。
また2016年に「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」でデビューし「ネト充のススメ」等の主題歌を担当した「相坂優歌」も2018年に一時活動休止をし、復帰後のライブ活動等はありましたが、活発なアーティスト活動は見られません。
この2016年に放送されたのがマクロスシリーズの最新作であるTVアニメ「マクロスΔ」です。この作品の歌唱を担当するのは作中で「戦術音楽ユニット」と称される5人組の音楽ユニット「ワルキューレ」です。ワルキューレは今までのマクロスシリーズの伝統であるキャラクターを演じる声優本人が歌唱を担当するパターンとキャラクターの声優担当と歌唱担当を分けるパターンを組み合わせています。ヒロインであるフレイア・ヴィオンを演じ、歌唱も担当するのは8000人の中から選ばれ本作でデビューした「鈴木みのり」、ワルキューレのエースボーカルである美雲・ギンヌメールの歌唱を担当するのは放送当時わずか15歳、マクロスシリーズ最年少の歌唱担当となった「JUNNA」です。他メンバーもカナメ・バッカニア役の「安野希世乃」、レイナ・プラウラー役の「東山奈央」、マキナ・中島役の「西田望見」と既に経験を積み、歌唱力が評価された声優が選ばれました。ちなみにJUNNA以外の4人はマクロスFの視聴者であり、安野はFのオーディションに応募した経験もあります。
またワルキューレの音楽面はほぼ全ての楽曲を菅野よう子がプロデュースした「F」と異なり様々な音楽家が製作に参加しています。1stシングルであり前期OPである「一度だけの恋なら」や挿入歌の「僕らの戦場」等の作詞・作曲はジャニーズやハロプロ等アイドルソングの製作を中心に活動し、数多くのアニメソング製作経験もある加藤裕介が担当しており*10、加藤の担当楽曲には唐沢美穂が共同作詞をしています*11。
フレイア(鈴木)のメインボーカル曲である「ルンがピカッと光ったら」や美雲(JUNNA)のメインボーカル曲である「破滅の純情」や「いけないボーダーライン」といったED・挿入歌は作詞を「カードキャプターさくら」「たまゆら」等のフライングドッグ作品に参加してきた西直記の作詞とSMAPの「SHAKE」「ダイナマイト」「らいおんハート」等数多くの大ヒット曲を手掛けたコモリタミノルの作曲のコンビが製作し、後期OP「絶対零度θノヴァティック」は2ピースバンド、Eidyが作詞作曲を担当、他にも北川勝利、松本良喜、姉田ウ夢ヤ等様々なジャンルの音楽家が楽曲制作に参加、さらに坂本真綾や岩里祐穂といったこれまでのマクロスシリーズに深くかかわるアーティストも参加しています。
ワルキューレとしてのライブは2016年や2021年のZeppライブツアー、2017年や18年の横浜アリーナライブを成功させ、マクロスシリーズお馴染みの劇場版も2018年に「劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ」を公開し、2021年には「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」の公開を予定しています。後者のイメージソングである「未来はオンナのためにある」は自身初、そしてマクロスシリーズ初であるオリコンウィークリーチャート1位を獲得する等、その活動は未だ留まる事を知りません。
またワルキューレのメンバー5人は全員ソロアーティストとしてフライングドッグからデビューしています。まずは2017年2月に「東山奈央」がTVアニメ「チェインクロニクル 〜ヘクセイタスの閃〜」ED「True Destiny」でデビュー、「月がきれい」「かくりよの宿飯」等の主題歌を担当しています。2018年2月には声優アーティストとしては異例の日本武道館での1stライブを開催し、2020年にはキャラクターソングアルバム「Special Thanks!」のリリースとキャラソンライブを開催する等、声優アーティストの強みを生かした活動を行っています。
同年6月には「JUNNA」がミニアルバム「Vai! Ya! Vai! 」でデビューし、同年11月にTVアニメ「魔法使いの嫁」OP「Here」で初のアニメ主題歌を担当、「ロード オブ ヴァーミリオン 紅蓮の王」「賭ケグルイ××」「BEM」等の作品でその若さからは信じられないほどの歌唱力を魅せています。7月には「安野希世乃」がミニアルバム「涙。」でデビューし、このアルバムに収録されているTVアニメ「異世界食堂」ED「ちいさなひとつぶ」で初のアニメ主題歌を担当しました。「カードキャプターさくら クリアカード編」「ソウナンですか?」「アルテ」等のアニメ作品の主題歌を担当しており、こちらではワルキューレでの力強さとはまた別の、穏やかな歌声が魅力な曲となっています。
2018年1月には「鈴木みのり」が「ラーメン大好き小泉さん」OP「FEELING AROUND」でアーティストデビュー。「あまんちゅ!〜あどばんす〜」「手品先輩」「恋する小惑星」等の作品でその作風に合わせて、アップテンポで元気な曲やポップで可愛らしい曲、染み入るバラード等様々なタイプの曲をその高い歌唱力で使い分けています。ワルキューレメンバーでは最後となった「西田望見」は2019年1月にソロデビューとなりましたが、彼女に見現在アニメ主題歌を担当していません。なおそれぞれのアーティスト活動では、ワルキューレの楽曲を提供した音楽家からそれぞれ楽曲提供を受けています。
さてこういった数多くのアニメやアニメソングを生み出してきたフライングドッグは会社設立から10周年を迎える2019年2月、初のレーベルフェスである「フライングドッグ10周年記念LIVE―犬フェス!―」を開催しました。菅野よう子が急病で出演中止となったアクシデントこそあったもののフライングドッグだけでなくビクター時代からのアーティストも集結しました。ALI PROJECT、新居昭乃、梶浦由記、石川智晶、FictionJunction YUUKA 、AKINO with bless4といったベテラン側から中島愛、ナノ、May'n、ワルキューレといった比較的若手アーティストに加え、遠藤正明やTrident、Fire Bomberといったアーティストのシークレット出演、プレゼンターとして登場した田中公平や山寺宏一のサプライズ歌唱、事前にメンバーが発表されていたとはいえ5年ぶりとなるMay'nと中島愛の「ライオン」歌唱や活動休止していたSee-Sawの13年ぶり共演等豪華共演が続きました。
そしてこのライブのトリを務めたのはフライングドッグを代表するアーティスト、坂本真綾です。デビュー10年後を超えても精力的に活動し「たまゆら」「M3〜ソノ黒キ鋼〜」「幸腹グラフィティ」「あまんちゅ」そして自身の代表シリーズ新作である「カードキャプターさくら クリアカード編」といった数々のアニメ主題歌を担当し、最近では自身も出演するソーシャルゲーム「Fate/Grand Order」の主題歌も担当、2015年には自身最大となるさいたまスーパーアリーナの単独公演を開催する等依然第一線で活動する坂本ですが、実はアニソンフェスへの出演自体が殆どありませんでした。そんな坂本が出演するという意味でも貴重な機会となった犬フェスは、坂本自身とフライングドッグを代表する曲である「プラチナ」で幕を閉じました。また同年10月には豊洲pitで「犬フェス2!」が開催され沼倉愛美やRhodanthe*、ワルキューレのソロメンバーやTVアニメ「私に天使が舞い降りた!」から誕生した作品ユニット「わたてん☆5」、TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」OP「真っ白」でデビューしこのライブが初ステージとなる声優アーティスト「諸星すみれ」が出演しました。
最後にフライングドッグに所属していない、ビクター所属のアニソンアーティストやアニメソングについて見ていきます。「ラブライブ!」等に出演している声優の「Pile」はビクター社内レーベルの「Colourful Records」に所属しています。2014年にTVアニメ「テンカイナイト」ED「伝説のFLAME」でデビューし「デュエル・マスターズ VSR」「ワールドトリガー」「境界のRINNE」等のアニメ作品の主題歌を担当しました。
もう一つ忘れてはいけないのが2017年にアニメが大ヒットした「けものフレンズ」です。特に有名なのがTVアニメ1期の主題歌である「どうぶつビスケッツ×PPP」の「ようこそジャパリパークへ」です。アニソン歌手オーイシマサヨシとしても知られるアーティストの大石昌良が手掛けたこの曲はアニメの大ヒットと共に大人気となり、星野源や平井堅等人気アーティストがラジオで話題にし、「ミュージックステーション」へ出演する等の活躍を遂げこの年を代表するアニメソングとなりました。2019年のアニメ2期の主題歌「乗ってけ!ジャパリビート」やけものフレンズの派生ユニットである「Gothic×Luck」等同シリーズのアニメ、ゲームなど関係楽曲は全てビクターから発売されています。
ビクターはレコード会社としても老舗であり古くからアニメソングに関わってきた事もあり、多くのヒット作の人気アニメソング、それを歌うアニソンアーティストを多く擁していました。マクロスシリーズやカードキャプターさくらのように長く愛され、現在でもシリーズが作られ、アニソン業界そのものに影響を与えてきた作品も多くあります。一方で現在のアニソン業界の影響を受け声優アーティストの増加やアニソンシンガーの離脱が起こるなど、大きな変化を続けているアニソンレーベルです。老舗として積み重ねてきた経験をもとに、更なる変化を見せているビクターはこれからどうなるのでしょうか。
1-2:ビクターのアニソンアーティスト
1-2-1:フライングドッグ所属のアニソンアーティスト
・ALI PROJECT :06、07、08、09、12、16
※16年を除いて一部はランティス楽曲、08年の一部楽曲は徳間ジャパン系列
・石川智晶:06、08、09、10、11、12
※2014年から自主レーベルで活動
・savage genius:06、08、09
・AKINO with bless4(AKINO from bless4):08、12、15、16
※08年及び15年は「AKINO from bless4」としての出演
・May'n :08、09、10、11、12、13、14、16、17
※2021年にDigital Double へ移籍、12年及び17年 は一部ワーナー系列の楽曲
・manzo:09
※2009年にティー・オー・ビーに移籍
・FictionJunction:09
※南里侑香がメンバーの一人、FictionJunction YUUKAとしてシークレット出演
・南里侑香:10、12、13
※09年はFictionJunction YUUKAとしてシークレット出演
・野水いおり:12、13、15
・中島愛:13、17、18、19
※2014~16年まで活動休止
・悠木碧:14、18
※2017年に契約終了、日本コロムビアに移籍、18年の出演は日本コロムビア楽曲のみ歌唱
・Rhodanthe*:15
・西沢幸奏:15、16、17
※15年はシークレット出演、2019年にEXiNA名義に変更の上ソニー系列に移籍
・相坂優歌:16
・ナノ:16
・沼倉愛美:16
※16年はソロアーティストとしての初ステージ、2020年に活動休止
・東山奈央:17、18
・鈴木みのり:18,19
・JUNNA:19
1-2-1:フライングドッグ以外のビクター系列所属のアニソンアーティスト
・山本正之:13
※1977年から2000年までビクターに所属、
・Pile:15、16
・けものフレンズ:17、19
2-1:エイベックスとアニメソングの歴史
エイベックス株式会社は昭和末期に誕生し90年代から00年代を中心に、平成のJ-POPブームを大きく牽引したレコード会社です。その存在はアニメ業界にも大きな影響を齎しました。まずはその誕生から見ていきましょう。
エイベックスは元々、現在もエイベックスの代表取締役会長である松浦勝人らによって1988年に設立された輸入レコードの卸売業者である「エイベックス・ディーディー株式会社」が前進であり、1990年に独自のレコード部門「avex trax」を設立し本格的にレコード会社として活動していく事となります。avexは流行していたクラブでのユーロビートやテクノといったダンス系音楽に着目、「スーパー・ユーロビート」シリーズ等クラブ系音楽のCDをヒットさせます(「スーパー・ユーロビート」シリーズはペースこそ大幅に落ちていますが2020年でも続いています。)。
この勢いに乗り、1993年ごろからエイベックスは本格的な邦楽アーティスト活動を行っていきます。その中心的プロデューサーであったのが、TM NETWORKのリーダーであった「小室哲哉」です。小室はエイベックスと音楽プロデューサーとして契約し、プロデュース活動を本格化させます。これは一時的にTMNが所属していたソニーとの関係を悪化させ(様々なマネジメント契約で和解)、プロデュース活動を中心とする中で94年にTMNが活動終了(99年から活動再開)する等の影響を齎しました。そんな小室プロデュースの邦楽アーティスト、所謂「小室ファミリー」の第一弾として1993年にデビューしたのが現在も様々な理由でアニメファンに知られる(後述)「DJ KOO」をリーダーとするボーカル&ダンスユニット、「TRF」です*12。TRFは93年にリリースしたセカンドシングル「EZ DO DANCE」がオリコントップ100に1年近くランクインするロングヒットとなり、78万枚のヒット曲*13となり一気に知名度を上げました。翌1994年にTRFは「survival dAnce 〜no no cry more〜」が初のオリコン1位&ミリオンセラーを達成し、以後「CRAZY GONNA CRAZY」「masquerade」等の楽曲が5作連続でミリオンセラーを達成、95年には「Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜」がオリコン1位&ミリオンセラーに加えエイベックス初となるこの年のレコード大賞を受賞し93年から始まり、90年代のCD好景気時代を象徴する「小室ブーム」のきっかけとなりました。
またエイベックス楽曲ではありませんが1994年、ガールズアイドルグループである「東京パフォーマンスドール」のメンバーであり現在は女優として活動している篠原涼子が「篠原涼子 with t.komuro」として「恋しさと せつなさと 心強さと」をリリースしました。この曲はアニメ映画「ストリートファイターII MOVIE」の主題歌としてタイアップされ、7月のリリースから2か月後にオリコン週刊1位を獲得、最終的には当時の女性ソロ歌手としてはトップの売り上げ記録となる202万枚の大ヒットとなりました*14。この数字は現在のオリコン歴代シングル売り上げ22位でありアニメタイアップ曲としては歴代1位となり、現在でもアニソン歌手によって度々カバーされています。
90年代にはglobe、安室奈美恵、華原朋美といった小室ファミリーのアーティストが90年代中盤に次々と大ヒットしていきました。主な記録を並べると以下のようになります。
・日本レコード大賞の大賞を4年連続受賞(1995~98年)
・オリコン作詞・作曲家ランキングで4年連続1位(94~97年)、編曲家ランキングでも3年連続1位(95~97年)
・ダブルミリオン(200万枚以上)楽曲4曲、ミリオン楽曲(100万枚以上)16曲
・現在までの女性ソロアーティスト歴代1位(安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」、229万枚、97年年間ランキング1位、レコード大賞受賞)
変わり種では1995年に小室自身がお笑いコンビの「ダウンタウン」の浜田雅功と組んだユニット「H Jungle with t」の「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」が210万枚の大ヒット、年間2位の売り上げをたたき出し、まさに当時の小室は時代の弔辞となりました。
小室の全盛期であった90年代中期は日本のCD売り上げの全盛期であり、100万枚売ってもトップ20にも入れないほどCDが売れていた時代でした。例えば1996年に発売された林原めぐみの「Give a reason」は23万枚とアニメソングの中でも大ヒット曲ですが、それでもオリコン年間ランキング130位であり、トップ100にすら入る事が出来ないほどでした。2020年にLiSAの「炎」が約22万枚の売り上げでオリコン年間ランキング22位にランクインしているのを見れば、当時と売り上げの水準が大きく異なっていたことが理空き出来るかと思います。
しかしこのCD好景気も98年をピークに現在まで一貫して左肩となり、ミリオンヒット曲は99年には10枚を切り、その後年間数枚、今では年に1枚あるかなないかにまでなっています。小室ブームも同時期陰りを見せ、98年には小室プロデュース曲がトップ30にも入らず、00年代初頭にはトップ100にあるかないかという衰えを見せていき、エイベックスの中心アーティストも浜崎あゆみやEvery Little Thing といった小室では無く松浦らエイベックス創業者のよるプロデュースアーティストに移っていきました。この時代の変化が起こっていた1999年11月、エイベックスはアニメの映像・音楽事業に参入を開始し、専用レーベル「avex mode」を設立しました。
その第一弾作品として制作されたのがしげの秀一原作のカーレース漫画をアニメ化した「頭文字D」です。なお読みは「イニシャルD」であり「かしらもじ」ではありません。決して「あたまもじ」でもありません。この漫画は累計5000万部の大ヒット作となりましたが、アニメの方も音楽CDが累計70万枚、映像作品は累計50万枚のセールスを記録するヒット作となりました。アニメは98年のTVアニメ第一作から2014年の最終作までTVアニメシリーズ5作と劇場版1作、OVA6作、さらにリブート版である新劇場版が14年から16年に製作される等息の長い作品となりました。
アニメの作中では上記のスーパー・ユーロビートがBGMとして使用され、こういったリズミカルな音楽は頭文字Dの激しいカーレースとマッチし、相乗効果を生みました。主題歌もエイベックスのアーティストが担当しましたが、このアニメシリーズで新劇場版以前の作品において、殆どの主題歌を担当したのが「m.o.v.e.」です。m.o.v.e.の音楽はエイベックスらしいユーロビート、テクノ、トランス、サイバーといった要素が多く使われ、さらにメンバーである「motsu」のラップが楽曲の盛り上がりを高めています。アニメの主題歌や挿入歌、さらにゲーム版等を併せて頭文字D関係のタイアップ曲は30曲以上に上りますが、その中でも最も有名なのはm.o.v.e最大のヒット曲となった「頭文字D Third Stage」OP「Gamble Rumble」です。そのスピード感やラップの勢いはユーロビート・テクノファンのみならずアニソンファンにもヒットしました。
m.o.v.e.のメンバーも作中のゲスト出演やPVでのコラボレーションを展開する等同作のファンであり、こうした活動からアニメソング関係のイベントにも出演し、「Animelo summer Live」には2007年から09年まで3年連続出演、2009年から12年までアニソンカバーアルバム「anim.o.v.e」シリーズをリリースし、その中ではTVアニメ「らき☆すた」で頭文字Dとm.o.v.e.のパロディソングである「m.o.e.v」の「Gravity」をカバーし返た事もありました。
m.o.v.e.は2013年に解散してしまいましたがmotsuはその前後からアニメソング業界に反核的に参加し、2010年には田村ゆかりとのコラボレーション楽曲「田村ゆかり feat. motsu from m.o.v.e」の「You&Me」を、12年には「パーティーは終わらない」を製作、田村のライブにも度々ゲスト出演する等の活動をし、2011年から16年まではワーナーのアニソンユニット「ALTIMA」のメンバーとして活動しました。これらの他にも様々な形でAnimelo Summer Liveには2007年以後も2018年を除く全年に何らかの形で出演しており、アニソン界にラップという新たな風を運んだ存在となっています。またエイベックスでは別のアニソン関係ユニットにも出演していますが、それは後述する事とします。
2000年代に入ると夕方・ゴールデンタイムに放送されたアニメを中心にでエイベックスの所属アーティストが主題歌を担当するケースが多く見られました。いくつか例を上げますと「犬夜叉(2000~04)」「ONE PIECE(2000~)*15」「サイボーグ009(2001~02)」「ヒカルの碁(2001~03)」「ブラック・ジャック(2003~06)」「メジャー(2004~10)」「うえきの法則(2005~06)」といった作品があります。
これらの作品の多くはavex mode制作ではありますが所属アーティストはエイベックス内の一般レーベルであり、「V6」「Do As Infinity」「day after tomorrow」「島谷ひとみ」「安室奈美恵」「dream」「倖田來未」「島谷ひとみ」「globe」「ロードオブメジャー」「Janne Da Arc」といった多くの一般アーティストが主題歌に起用されました。これらの作品の主題歌は作品の雰囲気に合致しアニメファンにも好評を博し、後にアニソンアーティストにカバーされたものも少なくありませんが、作品の為に作られたアニソンではなく、こういったJ-POP側の押しつけに対するアニメ・アニソンファンやアニソンアーティスト側からの反発も少なくありませんでした。
一方でavex modeにも所属アニソンアーティストがおり、自社制作作品だけでなく他社制作作品であり楽曲のみ制作担当をする、というケースがいくつかありました。前者では「ヤミと帽子と本の旅人(2003)」「天上天下(2004)」がavex mode制作担当かつ、所属アーティストである「嘉陽愛子」が主題歌を担当し、後者では他社作品である「サムライガン(2004)」の挿入歌や「天上天下」のOVA主題歌を、同作に出演している声優の「茅原実里」が担当しています。茅原は後にランティスからアーティストデビューし同レーベルを代表する声優アーティストにまでなりますが、実は最初のデビューはこちらになります。また深夜アニメ以外でも「サクラ大戦TV(2000)」は夕方に放送されたavex mode制作アニメですが、原作である「サクラ大戦」のゲーム版や以前に製作されたOVA版と同じく、「檄!帝国華撃団」が主題歌であり*16、EDや挿入歌もOVAやゲームと同じく田中公平が製作したキャラソンでした。
アニメ以外でも長年日本コロムビアが担当してきた「仮面ライダー」シリーズの主題歌を、平成になってからのTVシリーズ第三作である「仮面ライダー龍騎」から担当し始めました。龍騎の「松本梨香」はアニソン歌手でしたが、第四作である「仮面ライダー555」からはエイベックス所属のアーティストである「DA PUMP」の「ISSA」が担当し、以後はエイベックス所属の一般アーティストが担当する事となりました。特に2007年の「仮面ライダー電王」は従来のファンに加えキャラクターを演じる声優ファンや女性ファン等幅広い層から評価され平成ライダーシリーズ最大級のヒット作となり、「AAA」が歌う主題歌「Climax Jump」*17は10万枚を記録し、仮面ライダーシリーズ主題歌としては最高位であるオリコン週間ランキング5位を記録しました。ちなみに平成仮面ライダーシリーズの主題歌は日本コロムビア時代から現在までほぼ全ての楽曲の作詞を「藤林聖子」が担当しています。藤林は多くのアニメソングや一般アーティストの楽曲、そして特撮作品の作詞を担当しており、一般アーティストの楽曲でありながら作品に非常に会う楽曲を作り上げています。
2007年に入るとエイベックスのアニメ作品は従来のavex modeによる製作形態から変化し、原作があるアニメ作品を中心とする「avex entertainment」とオリジナル作品を中心とする「ZOOM FLICKER」に分割され、2010年代にはavex mode 製作のアニメ作品はほとんどなくなり、2014年頃にはavex modeそのものが事実上消滅してしまいました。この二つのレーベルについてですが、「ZOOM FLICKER」では「ウエルベールの物語 〜Sisters of Wellber〜」「CODE-E」シリーズ等いくつかしか製作されませんでした。エイベックスの主要アニメ制作レーベルは「avex entertainment」となります。
「avex entertainment」はアニメ作品及び音楽制作レーベルでありますが、音楽レーベルとしてはずっと継続所属して音楽活動をするアーティストはあまりおらず、作品ごとにこのレーベルから楽曲を発表する、というアーティストが殆どでした。
数少ない例外が「桃井はるこ」です。桃井はそれ以前からインディーズや他レーベルで活動していましたが、2000年代後半のアニメ主題歌ではそれ以前から所属していたavex modeからこのavex entertainmentでの活動を主軸としていました。桃井は声優として「CODE-E」シリーズや「瀬戸の花嫁」に声優として出演すると共に「Mission-E」ED「Feel so Easy!」や「瀬戸の花嫁」OP「Romantic summer」*18等本人名義やキャラソンで主題歌を担当しました。
アーティストの少なさから他社のアーティストが主題歌を担当する作品もありました。「School Days」「あかね色に染まる坂」「NEEDLESS」といった作品は音楽制作がランティスを担当し、栗林みな実、美郷あき、橋本みゆき、GRANRODEOといったランティス所属アーティストが主題歌を担当しています。また2012年の「トータル・イクリプス」はそれまでランティスとバンダイビジュアルで製作されていた「君が望む永遠」とそのスピンオフ作品「マブラヴ」シリーズでありながら「avex entertainment」が製作を担当、前期OPはエイベックスのアーティストである「倖田來未」が担当する事となり、様々な議論を起こしました。なお前期EDや後期のOPED、挿入歌の多くはシリーズ初期から主題歌を担当してきた栗林みな実らランティスのアーティストが担当しています。
変わった所ではavex entertainment制作のアニメ「SKET DANCE」の作中の同名バンドの演奏担当から誕生したバンド「The Sketchbook」がいます。同バンドは「SKET DANCE」で数多くの主題歌や挿入歌を担当し、アニメの終了後もエイベックス制作アニメである「キングダム」や「ガイストクラッシャー」等の作品の主題歌を担当し2015年の解散まで活動しました。またこのバンドでギターを担当していた小原莉子は2014年に声優デビューし、2018年にはブシロードのメディアミックスプロジェクト「BanG Dream」でのバンド「RAISE A SUILEN」の声優・ギタリスト両方で活動しています。
ちなみに前出の平成ライダーシリーズは2009年の「仮面ライダーW」からavex entertainmentが製作を担当しています。avex mode時代から続き、「仮面ライダーオーズ」の「大黒摩季」や「仮面ライダーフォーゼ」の「土屋アンナ」といった一般アーティストが主題歌を担当する事が多いのですが、「フォーゼ」ではフライングドッグ所属(当時)のアニソン歌手である「May'n」が音楽ユニット「SURFACE」のボーカルである椎名慶治とのユニット「Astronauts:」として挿入歌や同作劇場版の主題歌を担当しました。May'nはその後もエイベックス関係の作品に何度か関わる事となります。
2010年、エイベックスは同時資本提携関係にあったドワンゴ*19と共同でアニソンレーベル「DIVE II entertainment」を設立しました。このレーベルは当初3人組女性声優ユニット「LISP」の専用レーベルとして誕生しました。「LISP」は大手声優事務所である81プロデュースに所属している阿澄佳奈、片岡あずさ*20、原紗友里の女性声優3人から結成されたユニットであり「這いよる! ニャルアニ リメンバー・マイ・ラブ(クラフト先生)」「爆丸バトルブローラーズ ガンダリアンインベーダーズ」等のアニメ主題歌を担当しましたが1年ほどで活動休止しました。しかしこの活動時期に長期シリーズに繋がる1つの作品に関わる事となります。それが「プリティーリズム・オーロラドリーム」です。
「プリティーリズム」はタカラトミーによる2010年に稼働を開始した女児向けアーケードゲーム、「プリティージリーズ」の第一弾であり、2011年にはこのゲームを原作とするTVアニメシリーズ第一作「プリティーリズム・オーロラドリーム」の放送が開始されました。ちなみに同じ女児向けアーケードゲームを原作とするバンダイナムコ・ランティスのアイカツ!シリーズとはライバル関係にありますが、どちらもテレビ東京系列で放送され(アイカツシリーズは夕方アニメ、プリティーシリーズは休日の朝アニメ)、シリーズを通して一部出演声優が共通している点があります。
LISPの3人は同作の主題歌を担当すると共にメインキャラとして出演、LISPの活動休止後は作中のユニットとして主題歌を担当しました。プリティーリズムは女児人気を博し、翌年から第2作「ディアマイフューチャー」、第3作「レインボーライブ」とアニメシリーズが続いていく事となります。なおこの作品から誕生した女性アイドルユニット「Prizmmy☆」は「オーロラドリーム」終盤からプリティーシリーズ第二作「プリパラ」まで多くの主題歌を担当し、2012年から17年まで活動していましたが、「レインボーライブ」では「EZ DO DANCE」「CRAZY GONNA CRAZY」といったTRF楽曲のカバーが主題歌となりました。またレインボーライブ作中にはTRFのリーダーである「DJ KOO」のパロディーキャラである「DJ.Coo」が登場する等、プリティーシリーズとTRFの繋がりはさらに後の作品に大きな影響を与える事となります。
また、LISPが主題歌を担当した「這いよる! ニャルアニ」はライトノベル「這いよれ! ニャル子さん」を原作としたFLASHアニメでしたが、2012年から本格的なTVアニメ「這いよれ! ニャル子さん」としてTVシリーズ2作とOVAが製作・放送され、声優ユニット「後ろから這いより隊G」が歌う「太陽曰く燃えよカオス」等の主題歌もヒットしました。
2008年からシリーズ展開され同年にアニメが放送開始されたバンダイのカードゲーム「バトルスピリッツ(バトスピ)」は第1作から3作までバンダイと関係の深いランティス所属アーティストが主題歌を担当していましたが、2011年に放送開始されたシリーズ第4作「バトルスピリッツ 覇王」からDIVE II entertainmentが音楽関係を担当し始めました。このアニメの主題歌を担当したのが人気男性声優である「羽多野渉」です。既に人気声優への道を着実に歩んでいた波多野は2011年にDIVE II entertainmentからアーティストデビューし、このアニメに声優として出演すると共にED「My Hero,My No.1」で初のアニソン主題歌を担当。翌2012年には同作の後期OP「Wake Up! My Heart!!」も担当、その後も「ハマトラ」「Dance with Devils」「ひとりじめマイヒーロー」等の作品の主題歌を担当、2016年には大人気となったアニメ「ユーリ!!! on ICE」のED「You Only Live Once」を「YURI!!! on ICE feat. w.hatano」名義で担当しました。
次のシリーズ第5作「バトルスピリッツ ソードアイズ」のED「Color」でデビューしたのがエイベックスと大手声優事務所である81プロデュースの共同オーディションでデビューした6人組*21声優ユニット、「i☆Ris」です。i☆Risはデビュー当初はイベントに13人しか来なかった等大変な下積み時代を送っていましたが「バトスピ」シリーズ第6作「最強銀河 究極ゼロ 〜バトルスピリッツ〜」*22や「ムシブギョー」等のアニメ主題歌を担当していましたが、2013年に先ほども触れた「プリティーリズム」シリーズ第3作「レインボーライブ」でシリーズ初のED「§Rainbow」を担当した事からブレイクへの道が開ける事となります。
2014年には「プリティーリズム」に次ぐ「プリティーシリーズ」の第二作であるアーケードゲーム「プリパラ」が稼働し、同時期にアニメ放送が開始されました。「プリパラ」のTVアニメはプリティーリズムのアニメが1年で次作に移行したのと異なり2年9ヶ月ずっと1つの作品が継続放送され、3rdシーズン中盤の2クールを除く2年3ヶ月の9クール、8曲をi☆Risが担当し*23、i☆Risのメンバー6人もレギュラー出演するという強力なタイアップ関係を作り展開しました。最終的に「プリパラ」シリーズでは2018年に続編「アイドルタイムプリパラ」の最終OP「Memorial」を含めて9曲の主題歌を担当し、この間i☆Risは全国ツアーやエイベックスのアニソンアーティストとしては初となる日本武道館単独公演を開催、子供向けイベントから大規模アニソンフェスへの出演等幅広い活動を行い、エイベックスを代表するアニソンアーティストとなりました。現在ではプリティーシリーズの主題歌を担当していませんが、「双星の陰陽師」「魔法少女サイト」「賢者の孫」「手品先輩」等のエイベックス制作のアニメ作品主題歌を多く担当しています。
i☆Ris と同じくエイベックスと81プロデュースの共同オーディションで選ばれた7人の新人女性声優で結成されたユニットが「Wake Up, Girls! (WUG)」です。同名のアニメ作品の主要キャラ7名を担当する声優によるこのユニットは2013年に結成し劇場版放映・TVアニメ放送が開始した2014年に単独ライブツアーやフェス出演等のアーティスト活動を本格的に開始します。2015年の劇場版続編や17年のTVアニメ新章等のアニメ展開、17年と18年の声優自身がキャラクターを生身で演じた舞台といったWUGとしての展開だけでなく「灼熱の卓球娘」や「恋愛暴君」といったエイベックスの他作品主題歌をアーティストとして担当しMay'nとのコラボレーションユニット「Wake Up, May'n!」としての企画など作品の枠に収まらない活動を広めました。また元々この企画が東日本大震災の復興への想いも加えられ、宮城県を主な舞台とした事もありライブツアーでは必ず宮城県で講演し、東北地方では単独イベントや地元企業とのコラボを数多く展開しました。しかし2018年には2019年3月での解散を発表、1年近くかけて最後の全国ツアーを開催し、19年3月に劇中でも舞台となったさいたまスーパーアリーナでのファイナルライブで有終の美を飾る事となりました。
話は前後しますが2014年、エイベックスは子会社でありアニソンを含む音楽政策全般を担当している「エイベックス・エンタテインメント」と営業販売を担当していた「エイベックス・マーケティング」の2社からアニメ制作関係事業を切り離し、アニメ製作専門の子会社「エイベックス・ピクチャーズ」を設立しました。これにより「avex mode」「avex entertainment」「DIVE II entertainment」といったレーベルはエイベックス・ピクチャーズが担当する事となり、アニメ制作部門は実写作品を含めた映像制作担当の「avex pictures」とアニソンレーベル「DIVE II entertainment」の二つとなりました。
一方でこれまで「avex mode」、さらに「avex entertainment」が担当していた平成仮面ライダーシリーズ等の特撮音楽は、2014年の「Mitsuru Matsuoka EARNEST DRIVE」が主題歌を担当する「仮面ライダードライブ」から主要音楽レーベルである「avex trax」に担当が変わり、現在までavex traxの担当となっています。
この2014年には1つのエイベックス関係作品が幼年層を中心に大ヒットしました。レベルファイブ原作ゲームをアニメ化し、エイベックス系列レーベルの「FRAME」が作品楽曲制作を担当した「妖怪ウォッチ」です。
「FRAME」は元々2008年にレベルファイブがハロー!プロジェクト等で知られるアップフロントワークスと共に作品のためのアニメ主題歌を作るために立ち上げられたレーベルであり「イナズマイレブン」シリーズや「ダンボール戦記」シリーズの主題歌を担当数アーティストが所属していましたが、2012年にアップフロントワークスからエイベックスへと移籍し同時に「イナズマイレブン」シリーズの主題歌を担当する「T-Pistonz+KMC」といったアーティストもエイベックスへ移籍する事となりました。このレーベルも再編後、エイベックス・ピクチャーズの管轄となります。
「妖怪ウォッチ」の主題歌のため結成されたユニット「キング・クリームソーダ」によるTVアニメ版初代OP「ゲラゲラポーのうた」は15万枚を超える大ヒット曲となり、この年のアニソン歌手によるアニメ主題歌としては最大のヒット曲となりました。他にもキング・クリームソーダの「祭り囃子でゲラゲラポー/初恋峠でゲラゲラポー」や「Dream5」の「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」「ようかい体操第一」といった主題歌が次々と大ヒットしこの2組のアーティストはこの年の第65回紅白歌合戦を初めとする数多くの音楽番組に出演し、2014年のアニソンヒットチャートではラブライブと人気を二分するほどでした。現在ではブームは落ち着いていますが展開は続いており、アニメシリーズ5作、劇場版6作を初めとして数多くのゲーム、漫画、各種メディアミックス作品が製作・放送等が続いています。ちなみにキング・クリームソーダのラッパー兼ボーカル担当であるゲラッパーは先ほど名前の出た元m.o.v.eのmotsuその人でありキング・クリームソーダの各楽曲の作詞も担当しています。
エイベックス・ピクチャーズが設立された2014年前後は他レーベルと同じく作品ユニットが主題歌を担当する事が増えました。「暗殺教室」の「3年E組 うた担」、「あんハピ♪」の「Happy Clover」、「ゾンビランドサガ」の「フランシュシュ」等です。また作品ユニットと言う意味ではこれらの作品と共通していますが、高い女性人気を獲得したのが「キンプリ」こと「KING OF PRISM」シリーズです。
この作品はシリーズ第1作である2016年の劇場版が「KING OF PRISM by PrettyRhythm」と題された通り「プリティーリズム」「プリパラ」と同じく「プリティーシリーズ」の系譜に属し、「プリティーリズム・レインボーライブ」に登場する男性キャラクター達のその後を描くスピンオフ作品です。女子向け作品からの男性主人公スピンオフ作品という異例の展開となったこの作品は映画上映中に観客が歓声や声援を上げ、ペンライト等でキャラクターを応援する「応援上映」の元祖となり、当初は14館だった公開映画館数は最終的に100館以上、興行収入7億円のヒット作となりました。2017年には劇場第2作「PRIDE the HERO」、19年にはTVアニメ「Shiny Seven Stars」が製作される等展開が続いています。この作品の楽曲としては主題歌・挿入歌としてのキャラソンが多数制作されている他、「EZ DO DANCE」「CRAZY GONNA CRAZY」といったTRFの楽曲がカバーされ、「Shiny Seven Stars」では毎回のEDがTRFのカバーとなりました。
またプリティーシリーズは2018年から第3弾「キラッとプリ☆チャン」がスタートしました。こちらの主題歌を担当するのがi☆RisやWUGと同じくエイベックスと81プロデュースの共同オーディションで選ばれた3人組声優ユニット「Run Girls, Run!」です。この声優ユニットはTVアニメ「Wake Up, Girls! 新章」作中で同名のアイドルユニットと演じるキャラクターの声優としてデビューしました。WUG新章の終了後は作品から独立したユニットとして活動を始め、「キラッとプリ☆チャン」ではメインキャラ3人をメンバー3人が演じると共に同作の2年間8曲全てのOP主題歌を担当しています。他にも「ガーリー・エアフォーズ」「アサシンズプライド」といったエイベックス・ピクチャーズ作品の主題歌を担当しており、このレーベルでは期待の新人と言えます。
「キンプリ」と同じく高い女性人気を得たのが2015年からTVアニメシリーズが始まった「おそ松さん」です。赤塚不二夫原作の漫画であり過去の2度アニメ化された「おそ松くん」を主人公である6つ子が大人になった話としてアレンジしたこのアニメは、6つ子をそれぞれ別の人気男性声優が演じる、様々なパロディを取り入れながらもハチャメチャなギャグ等様々なタイプの話を作り上げる等の工夫により大ヒット作となり、現在までTVアニメシリーズ3作と劇場版1作が製作されました。このおそ松さんシリーズの主題歌を担当したのが「A応P」です。A応Pは大手雑誌の日経エンタテインメント!とアニメ専門チャンネルのAT-Xによる「アニメ“勝手に”応援プロジェクト」によって結成された女性アイドルグループであり、「おそ松さん」1期前期OP「はなまるぴっぴはよいこだけ」が最終的に4万7千枚のヒット曲となり、後期OP「全力バタンキュー」も4万のヒット曲となった事で一気に名を知られる事となります。A応P自体はエイベックスに所属しておらず*24、様々なレーベルのアニメ主題歌を担当しましたが2021年に活動を終了、その最後のシングルは「おそ松さん」3期後期OP「6つ子の魂ナユタまで」であり、TV版3期6曲全てのOPを担当した「おそ松さん」シリーズがまさに代表的なタイアップアニメとなりました。
先ほど「avex entertainment」ではアーティストの少なさから他社のアーティストが主題歌を担当する作品もあったと言いましたが、エイベックス・ピクチャーズ時代になっても他社レーベルのアーティストが主題歌を担当する場合が多くあります。こういった場合は他社レーベルに所属していてもエイベックス作品ではエイベックスから楽曲をリリースする場合が多くあります。「トリニティセブン」シリーズのZAQ(ランティス所属)、「シュヴァルツェスマーケン」のfripSide(NBCユニバーサル所属)、「タブー・タトゥー」のMay'n(当時はフライングドッグ所属、現在はDigital Double所属))等です。しかし「魔法少女サイト」の山崎はるか(NBCユニバーサル所属)、「グリムノーツ The Animation」の竹達彩奈(ポニーキャニオン所属)のように他社レーベルからそのまま楽曲をリリースする場合もあります。特にフライングドッグ所属アーティストは「ラーメン大好き小泉さん」「手品先輩」の鈴木みのり、「異世界食堂」「ソウナンですか?」の安野希世乃*25、「賭ケグルイ××」の JUNNAのようにエイベックス作品で主題歌を担当し、所属レーベルからそのまま楽曲する例が多くあります。
なお2010年代におけるエイベックス制作アニメ作品の多くのプロデューサーであった田中宏幸は現在サイバーエージェント社のグループである芸能事務所「Digital Double」の取締役ですが、May'nがフライングドッグからこちらに移籍したのはこういったエイベックス時代からの繋がりがあったためです。
このようにエイベックスのアニソンアーティストは規模を拡大していく一方、本家筋であるI-POPアーティストがアニメ主題歌を担当する事も多くあります。これまでアニメ主題歌を多く担当してきた「Do As Infinity」はエイベックス・ピクチャーズ設立後も「FAIRY TAIL」「十二大戦」といった作品の主題歌を担当し、「ブラッククローバー」「フルーツバスケット*26」といった作品でも一般アーティストが主題歌を担当しています。
最後にエイベックスにおけるアニソンとJ-POPの関係で、今回何度か名前を出したmotsuとDJ KOOの活動について触れておきます。motsuは前出の通りALTIMAやキング・クリームソーダ、田村ゆかりとのコラボ等様々な活動をしていますが、他にもAnimelo summer live関係や様々なアニソンフェスやDJイベントに出演しています。DJ KOOはKING OF PRISM関係のイベント出演をきっかけにアニソンDJイベントに出演する等アニメ関係のイベントに本格的に関わるようになり、2019年には「アイドルマスターシンデレラガールズ」のライブにDJとしてシークレット出演、同作品でTRFの楽曲がカバーされゲーム中でコラボイベントが開催されDJ KOOもアイドルマスターのプロデューサーとなって度々ゲームのプレイをtwitterにアップする等の活動が大きな話題となりました。
2021年にはi☆Risのメンバーであり2017年にソロアーティストとしてデビューした芹澤優とこの二人がコラボし、TVアニメ「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω」の主題歌を「芹澤 優 with DJ KOO & MOTSU」として担当しています。
大手J-POPレーベルとして始まったエイベックスとアニメソングの関りは、時に順応と反発を生み出しながらエイベックスのアニメソングとアニソンアーティストを成長させると共に、アニソン業界そのものにも大きな変化を及ぼしていったのです。
2-2:エイベックスのアニソンアーティスト
・嘉陽愛子:06
※2007年にエイベックスとの契約は終了
・m.o.v.e:07、08、09
※2013年解散
・AAA:08
※2020年活動休止
・後ろから這いより隊G:12、13
※メンバーの一人である松来末祐は2016年に死去、事実上の活動休止
T-Pistonz+KMC:13
※2014年活動休止
・i☆Ris:13、15、16、17、18、19、21
※2021年にメンバーの一人である澁谷梓希が卒業し、これ以前は6人、これ以後は5人で出演予定。
・土屋アンナ:13
※シークレット出演
・Wake Up, Girls!:14、15、17、18
※2019年解散
・キング・クリームソーダ:15
※映像ソフトには収録されず
・BACK-ON:15
・3年E組サマ担:15
・Mitsuru Matsuoka EARNEST DRIVE:15
・KING OF PRISM:17
・羽多野渉:17
・Do As Infinity:18
3-1:ビーイングとアニメソングの歴史
ソニーやエイベックスと同じく、J-POPアーティストによるアニメ主題歌の大手レーベルとして知られるのがビーイングです。前2社がアニソン専用レーベルを持っている一方、ビーイングは現在に至るまで独自のアニソンレーベルを持っていないレコード会社でもあります。
「株式会社ビーイング」は1978年、テレビ番組製作・タレント事務所であるオフィス・トゥー・ワンを独立した音楽家の長戸大幸が当時のオフィス・トゥー・ワン社長である海老名俊則と同社に所属していた昭和を代表する作詞家である阿久悠(日本の作詞担当シングル売り上げ2位)と共同出資して設立したレコード会社です。社名のビーイング(Being)の名前は長戸大幸の大(Big)と海老名俊則の頭文字(e)から取られています。
ビーイング設立時から音楽家として所属しているのが「織田哲郎」です。70年代末からアーティストや作曲家として活動していた織田は1986年に「TUBE」に楽曲提供した「シーズン・イン・ザ・サン」のヒットで作曲家として注目される事となり*27、80年代後半から90年代に至るまで日本を代表する作曲家の一人となりますが、その中には多くのアニメソングも含まれる事となります。
まずは1990年、「B.B.クィーンズ」のデビュー曲である「ちびまる子ちゃん」の初代ED「おどるポンポコリン」です。作詞を同作の原作者であるさくらもも子が、作編曲を織田が担当したこの曲は現在まで続く国民的アニメとなった「ちびまる子ちゃん」と共大ヒットし、アニメソングとは初となる第32回日本レコード大賞ポップス・ロック部門※32年から34年までレコード大賞は歌謡曲部門とポップス・ロック部門の2つの大賞があった。を受賞し紅白歌合戦へ出演、セールス面でも100万枚の売り上げを記録しました。EDとしての仕様は放送開始から1年3ヶ月ほどでしたが放送開始20年後からOPとして再起用されます。さらに数多くのアーティストにカバーされ現在まで使用されています。
ちなみに初代OPである関ゆみ子*28の「ゆめいっぱい」も織田が作編曲を担当し、他にも2代目EDである西城秀樹の「走れ正直者」も「おどるポンポコリン」と同じ作詞・作編曲コンビで作られました。この曲はさくらが西城のファンだった事がきっかけにOPとして実現し、1年半ほどEDとして起用されました。後には2018年の西城の没直後の放送と翌年以降の忌日前後の放送では特別に年に1回EDとして再起用されています。
B.B.クィーンズは1992年に「クレヨンしんちゃん」の二代目OP「夢のENDはいつも目覚まし!」で再びアニメ主題歌を担当します。この曲は作詞が長戸大幸、作曲が織田哲郎という完全にビーイング製作の曲でした。B.B.クィーンズは1993年に活動を休止しますが2011年に活動再開を発表、度々CDリリースやフェスへの出演をしておりアニメ主題歌である2曲もセルフカバーで主題歌を再度担当しました。ちなみにB.B.クィーンズの名前はビーイングと当時の所属レーベルであるBMGビクターから取られました。BMGビクターは買収と統廃合によりソニー系列に分割されており、「おどるポンポコリン」と「「ゆめいっぱい」の原板権利はソニーが保有しています。
1992年頃からビーイングは日本のJ-POP界で急成長を遂げます。多くの所属アーティストが人気番組やCMのタイアップ曲に起用され、TVの音楽番組でも次々と取り上げられました。ビーイングブームと呼ばれるこの一大ブームは92年12月から93年7月まで、31週中27週のオリコンシングルチャート1位を独占、数週間トップ5を独占した事もありました。織田哲郎はこのブームの中ビーイング所属の多くのアーティストをプロデュース、楽曲提供をしました。1993年のオリコン年間ランキングで100万枚以上の売り上げを記録した楽曲は17曲ありますが、内10曲がビーイング所属アーティスト、7曲が織田哲郎作曲のものでした。当然この年の作曲家売上げ1位は織田です。
このブームの中アニメソングにも多くのビーイングアーティストが進出します。その代表的な作品が1993年から96年までテレビ朝日系列で放送された「スラムダンク」です。同名の大ヒットバスケットボール漫画を原作としてこのアニメは原作同様に大ヒットしましたが、この作品の主題歌はビーイングのアーティストが担当、多くの楽曲が大ヒットしました。
初代EDである「大黒摩季」の「あなただけ見つめてる」はスラムダンクの主題歌として最大のヒット曲となり123万枚を記録、既に多くのヒット曲を持つ大黒にとっても当時最大のヒット曲となりました。続く2代目EDである「WANDS」の「世界が終るまでは…」は122万枚のセールスを記録、既に3曲のミリオンヒット曲を持つWANDSにとっても代表曲となり、現在でも愛されている名曲です。最終EDである「ZARD」の「マイ フレンド」は既に大人気アーティストであったZARDにとって初のアニメタイアップ曲であるこの曲は自身最高の初動売り上げを記録、21週チャートインするロングヒット曲になった末自身3曲目、最後となるミリオンヒット曲となりました。
「スラムダンク」の放送終了後の後番組である「地獄先生ぬ〜べ〜」でもビーイングのアーティストが主題歌を担当、「FEEL SO BAD」の「バリバリ最強No.1」は作品を印象付ける楽曲となり、前期ED「ミエナイチカラ 〜INVISIBLE ONE〜」は既に数多くの大ヒット曲を持つ大人気アーティストであった「B'z」にとって初めてのアニメ主題歌となりました。
同時期にフジテレビ系列で放送されたTVアニメ「ドラゴンボールGT」はドラゴンボールのTVアニメシリーズ第三作ですが、本作は原作のエピソードではないアニメオリジナル作品である等独自の展開を遂げます。主題歌でも変化があり、影山ヒロノブら日本コロムビアのアニソン歌手が担当していたこれまでのシリーズとは異なり今作はビーイングを中心としたJ-POPアーティストが担当する事となりました。「FIELD OF VIEW」の歌うOP「DAN DAN 心魅かれてく」は50万枚のヒットとなりました。この曲はZARDのボーカルである坂井泉水が作詞、織田哲郎が作曲しています。そのZARDは3代目ED「Don't you see!」を担当しています。最後の4代目EDはWANDSの「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」であり、スラムダンク以来のアニメタイアップ曲となりました。なおWANDSはこの曲の前にボーカルがこれまでの担当だった上杉昇から和久二郎が担当しています。また初代ED「ひとりじゃない」を担当したのは既に人気バンドでありミリオンヒット曲を出している「DEEN」でした。これらの楽曲は多くがヒットしましたが、一方でこれまでのDBシリーズのアニメそのものを体現したではない事や「ドラゴンボールGT」自体が賛否両論だった事から評価が分かれる曲となり、スラムダンクの楽曲ほど原作・アニメファンには受け入れられませんでした。
1996年頃になるとavex等新規レーベルの躍進が見られるようになりビーイングブームはだんだんと落ち着いていき、トップアーティストとしてはB'zやZARD、TUBE等いくつかを残してレーベルとしての勢いは落ちていきます。ブームの立役者である織田哲郎も98年にビーイングを脱退、様々なレーベルでアーティストへのプロデュースや楽曲提供を行っていきます。さて、ここで忘れてならないのは織田哲郎自身のアーティスト活動についてです。様々なバンドでメンバーとして活動し、1983年に個人名義でソロデビュー、92年には「いつまでも変わらぬ愛を」がオリコン1位を取る等ソロアーティストとしても活躍していた織田ですが、ソロデビューと同じ83年に別名義でも曲を出しています。それが「TETSU」名義で発表したTVアニメ「装甲騎兵ボトムズ」OP「炎のさだめ」ED「いつもあなたが」です。
マジンガーZのようなスーパーロボットアニメとは違う、ガンダムのようなリアルロボットアニメとも少し異なる、ハードボイルドな作風のロボットアニメである「装甲騎兵ボトムズ」は大ヒットとはいかないものの独自の人気を博し、90年代や00年代に至るまで多くの続編や外伝が作られています。「炎のさだめ」は当時織田が契約していなかったキングレコードからの発売であり、契約の問題上別名義でリリースする事となりました。長年名前と歌声でわかる公然の秘密となっていましたが2001年に織田自身がTETSUは自分であることを公表、2009年にはボトムズの劇場版アニメ「ペールゼン・ファイルズ劇場版」の主題歌として「炎のさだめ 2009」を、2011年には同じく劇場版アニメ「孤影再び」の主題歌「いつもあなたが2011」をそれぞれ再録音して再度TETSU名義でリリース、パチスロ版のボトムズ主題歌を担当する等の活動をしています。
また「孤影再び」の音楽制作を担当した事をきっかけにアニメ作品の音楽政策そのものを担当し始めます。2012年の「武装神姫」、2013年の「ムシブギョー」、2021年の「怪病医ラムネ」等です。2012年には「Animelo Summer Live」のテーマソング「INFINITY 〜1000年の夢〜」の作曲を担当、初のJ-POP系アーティストによるアニサマテーマソング制作担当者となりました。このアニサマ2012には2日目にシークレットゲストとして出演、自らTETSUとして「炎のさだめ」を初めて歌うだけでなく他アーティストと自身が作曲したDAN DAN 心魅かれてく」をコラボし、さらに同じくシークレットゲストとして出演した元WANDSの上杉昇と共に「世界が終わるまでは・・・」を歌いました。この二人が同じステージに立つのはこの日が初であり、WANDS自体が数えるほどライブをしたことが無く、上杉自身も前年に1回歌っただけであるという歴史的なものでした。このライブ映像はアニサマの公式YouTubeチャンネルで無料視聴が可能であり、現在まで750万回以上視聴されています。織田は最後のテーマソング歌唱にも参加し、他のアニソンアーティストと共にこの年のアニサマの幕を降ろしました。後に本人もYouTubeにテーマソングの生歌唱動画を上げる等、印象深いライブとなっています。
1996年、現在まで続くビーイングアーティストが主題歌を担当する代表的アニメが始まりました。「名探偵コナン」です。日本を代表する探偵漫画であり、今や子供から大人まで幅広い人気を獲得しているこの作品については説明の必要はないでしょう。ここでは楽曲について見てみます。TVアニメ「名探偵コナン」の主題歌は放送開始から1年程度はポリグラム(現在のユニバーサルミュージック)所属アーティストが担当していましたが、3代目ごろからビーイング所属のアーティストが主題歌を担当しています。
初期の代表的な主題歌が「小松未歩」の「謎」です。小松のデビュー曲であるこの曲は同作主題歌最長の1年間起用された影響もありロングヒット、小松と名探偵コナンを代表する楽曲となりました。その後小松は「願い事ひとつだけ」「氷の上に立つように」「あなたがいるから」等TVアニメや劇場版のコナンシリーズの主題歌を担当、他にも「忍ペンまん丸」「モンスターファーム 〜円盤石の秘密〜」「メルヘヴン」等のアニメ作品で主題歌を担当しましたが、小松は2006年に音楽活動を事実上休止し2009年には事実上引退しています。
なお小松は作詞・作曲家としても同じビーイング所属アーティストの楽曲を製作しており、その中には先ほどのWANDSの「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」や同じく名探偵コナンの主題歌を担当したアーティストであるDEENの「君がいない夏」やTVアニメ「中華一番!」OP「君さえいれば」といったアニメ主題歌も含まれます。ちなみにDEENはこれらの他にもゲーム「テイルズオブデスティニー」主題歌「夢であるように」等テイルズオブシリーズのゲーム主題歌を担当、2003年のビーイングからソニーへの移籍後もタイアップが続いています。
2000年前後はビーイングアーティストの多くが解散や移籍をしました。先ほどの織田哲郎やDEENだけでなく、大黒摩季が2001年に移籍、WANDSが2000年に「解体」、FIELD OF VIEWが2002年に解散する等アニメ主題歌も担当した人気アーティストが次々とビーイングを離れていきました。一方で残ったアーティストもいます。これらのアーティストではZARDが「運命のルーレット廻して」、B'zが「ギリギリchop」といった、「名探偵コナン」の主題歌を担当しています。またこの時期入れ替わるように新しいアーティストが多くデビューしました。その代表が「倉木麻衣」です。デビュー当初ほぼメディア出演をしなかったことによるミステリアスさと裏腹に親しみやすい歌声によってデビュー当初から話題のアーティストとなった彼女はデビューから2曲連続でミリオンヒットを飛ばしました。それに次ぐ3曲目が初のアニメタイアップである名探偵コナンED「Secret of my heart」です。この曲は96万枚の売り上げを記録、現在に至るまでコナン関係楽曲最大のヒット曲となります。またこの年のアニメタイアップ楽曲としては最大のヒット曲となりました。その後も倉木は「always」「Winter Bells」「Time after time〜花舞う街で〜」等々コナンシリーズのOPED、劇場版主題歌を度々担当、2017年には「名探偵コナン から紅の恋歌」の主題歌「渡月橋 〜君 想ふ〜」までの主題歌担当楽曲数21曲が「同じアーティストにより歌われたアニメシリーズのテーマソング最多数」としてギネス世界記録に認定され、これを記念したコンピレーション・ベストアルバムがリリースされるまでになりました。この記録は現在も更新され続け、同作のTVアニメ放送1000回を記念して製作された2021年の最新タイアップである「ZEROからハジメテ」までで24曲に至ります。
2000年にはビーイングからコナン関係のアーティスト2組がデビューしました。1組は4人組バンド「GARNET CROW」です。元々ビーイングの他アーティストに楽曲提供していたメンバーが多かったこのバンドはアニメ主題歌の担当も多くありました。デビュー曲「Mysterious Eyes」からしてコナンとの初のタイアップであり、2シングルリリースされた34枚中21枚がアニメ・ゲーム関係タイアップになります。これにアルバムのみ収録曲や両A面シングルを加えるとそれ以上になります。コナンでは「夏の幻」「夢みたあとで」「Over Drive」等10曲を担当、倉木麻衣に次ぐ歴代2位のコナンタイアップ曲数です。また「MÄR-メルヘヴン-」では「君の思い描いた夢 集メル HEAVEN」等OP全てとED2曲を担当、同作を代表するアーティストとなりました。GARNET CROWは同作の楽曲タイアップに対して原作を読んだうえで作品に合った楽曲を製作し、これに対して同作の原作者である安西信行はGARNET CROWに敬意を表し主題歌CDや漫画の扉絵にメンバーのイラストを提供する等、原作とアーティスト双方が友好的な関係にありました。
他にも「ゴルゴ13」や「PROJECT ARMS」といったTVアニメ、ゲーム「テイルズオブエターニア」等の作品の主題歌を担当し、2000年代のビーイングを代表するアーティストの一組となったGARNET CROWですが、2013年に解散する事となりました。
同じく2000年にビーイングからデビューしたのが「愛内里菜」です。愛内はデビューシングルがTVアニメ「モンスターファーム 〜円盤石の秘密〜」OP「Close To Your Heart」であるという、アニソンタイアップから始まったビーイング歌手です。そんな彼女の名を一躍高めたのは「恋はスリル、ショック、サスペンス」です。自身初となる名探偵コナンとのタイアップとなったこの曲は当時ブームだったパラパラをコナンが踊るというOP映像が話題となり曲もヒット、一躍ブレイクしました。その後も「I can't stop my love for you♥ 」「START」等累計7曲がコナンシリーズの主題歌となりました。他にも「格闘美神 武龍」「蒼天の拳」等のアニメ主題歌やゲーム、特撮作品の主題歌を担当し、2005年と06年には一般アーティストとしては初となるAnimelo Summer Liveに出演しました。当時はアニサマ初期とは言え、その後も続く一般アーティストの出演の先駆けとなりました。愛内は2010年、病気の為歌手活動を引退しましたが2015年に垣内りか名義で活動を再開、2021年に再度愛内里菜名義での活動を開始しました。
他にもこの時期にデビューしコナン関係の主題歌を担当する事となったビーイングアーティストには「君と約束した優しいあの場所まで」「眠る君の横顔に微笑みを」等のソロ曲に加え愛内里菜とのコラボで「100もの扉」「七つの海を渡る風のように」といった数多くのコナンシリーズの主題歌を担当し、他にも「小生意気な天使」「格闘美神 武龍」等の主題歌を担当、さらにといったコナンの主題歌を担当した。「三枝夕夏 IN db」や「青い青いこの地球に」「無色」等のコナンシリーズの主題歌を担当した「上原あずみ」等がいますが、いずれも様々な理由で2010年頃までには活動休止や引退をしてしまいます。
そして忘れてはならないのはZARDについてです。ZARDはデビューから大ブレイク、美イングブーム後まで一貫してビーイングに所属し続けたアーティストであり、コナンシリーズでも「明日を夢見て」「夏を待つセイル(帆)のように」といった主題歌を担当していましたが2007年にボーカルの坂井泉水が急逝。日本社会に大きな衝撃と悲しみが走りました。それでもZARDは解散することなく残っていた音源からいくつかの楽曲をリリースします。その中には「グロリアス マインド」「翼を広げて」「愛は暗闇の中で」といったコナンシリーズの主題歌もあり、最終的にZARDはシリーズを通して9曲の主題歌を担当しました。没後10年以上経った現在、全ての音源を出し終えた後もZARDはフィルム・コンサートを開催する等の活動を続けています。坂井泉水の歌声は今も愛され続けています。
2007年にデビューした「BREAKERZ」は歌手のDAIGOがボーカルを担当する3人組バンドです。BREAKERZもまた名探偵コナンで多くの主題歌を担当しており、。2009年の「Everlasting Luv」から「月夜の悪戯の魔法」「幾千の迷宮で 幾千の謎を解いて」等7曲を担当しています。また他社(ブシロード)の「カードファイト!! ヴァンガード」シリーズでは「CLIMBER×CLIMBER」等の公式イメージソングや主題歌を担当しています。ちなみにDAIGOは個人のアーティスト活動でもこの2作の主題歌を担当しています。
現在でもこれまで紹介されたアーティストの他にも様々なアーティストが「名探偵コナン」の主題歌を担当しています。B'zは「ギリギリchop」の後も「Everlasting」「ゆるぎないものひとつ」「Don't Wanna Lie」等劇場版を中心に主題歌を担当しており、これとは別にボーカルの稲葉浩志も個人名義で主題歌を担当した事もあります。
近年では全盛期のビーイングブームを支えていたアーティストが復帰し、再びアニメ主題歌を担当する事もあります。大黒摩季はビーイングからの移籍後病気療養のため活動休止していましたが2015年に活動を再開、17年にはビーイング復帰後初となるシングルとして名探偵コナンの主題歌「Lie,Lie,Lie,」をリリースしました。2019年には新ボーカル上原大史を迎えWANDSが活動を再開、2020年には21年ぶりとなるシングル「真っ赤なLip」をリリースしました。こちらももちろん、名探偵コナンの主題歌です。
現在のビーイングは90年代のようなトップレーベルではありませんが、人気アーティストを多く擁するレーベルである事は間違いありません。その存在を支えるのは単なるJ-POPというだけではなく、アニソンアーティストではなくとも人気アニメとのコラボレーションを実現したアーティストとその楽曲も多くあるから、というのも間違いでは無いのかもしれません。
3-2:ビーイングのアニソンアーティスト
・愛内里菜:05、06
※2010年に引退、15年に別名義で活動再開、現在は当時と同じ名義で活動。
・三枝夕夏 IN db:06
※2010年解散
・BREAKERZ:11
※一部楽曲は映像収録されず。
・上杉昇:12
※シークレット出演、「WANDS」の初代ボーカル、ソロアーティストとしては個人のレーベルで活動しているがビーイング楽曲の歌唱であるため便宜上こちらへ記載
・WANDS:21
・大黒摩季:21
4:アニサマにおける3社
今回紹介した3社は実はアニサマ初期から関わっているレーベルです。フライングドッグはビクター時代の2006年から、エイベックスも同じく2006年から、ビーイングは初回の2005年から関わっており、数多くのアニソンレーベルよりも早くから関わっています。
フライングドッグは現在まで毎年アーティストを出演させており、時には主要3レーベルに次ぐ数の出演者数がいる年や石川智晶やMay'nといったアーティストがトリに次ぐ立ち位置にいたように、アニサマの中でも有力レーベルの1つです。
エイベックスはアニサマ初期からアニソンも歌うJ-POPアーティストを送り込み、自社内でのアニソン歌手が育った後はアニソンレーベルとして参加しています。一時期を除きアニサマにはほぼ毎年アーティストが出演しており、今やアニサマには無くてはならないレーベルの一つです。
一方ビーイングはアニサマ出演は初期のみであり、2011年、12年を除けば長らく出演していない時期が続いていました。しかし2021年には2名のベテランアーティストが出演予定であり、久しぶりに大手レーベルの底力を見せてくれそうです。
5:まとめ
今回紹介したレーベルはJ-POPレーベルとしても大手の3社ですが、戦前以来の老舗であるビクター(フライングドッグ)と昭和後期の新興レーベルであるエイベックス・ビーイング、独自のアニソンレーベルを持つフライングドッグとエイベックス、持たないビーイングという違いがあります。
もちろんフライングドッグやエイベックスのアニソンアーティストや曲は多くのアニソンファンに愛されていますが、それ以外のJ-POPや一般アーティストの活動やアニメタイアップも、賛否両論ながらアニメとアニソンを作り、またアニソンアーティストの活動へつながっていきました。J-POPの影響が無ければ誕生していなかったアニソンアーティストやアニメソングはたくさんありますし、アニメ好きになったきっかけの作品の主題歌がJ-POPのアニメタイアップ曲だったという事もよくあります。
アニメソングの歴史を見ていく中で、J-POPとのかかわりは避けては通れない道となるでしょう。
・・・はい、というわけでレーベル分析シリーズがついに完結しました。他にもアニサマに出演経験のあるレーベルはたくさんあるのですが、ある程度の大手と言うことで今回迄6回、14社に絞ってみました。
そしてお分かりのように、初回から今回迄だんだんと分量が増えていきました。これはレーベルごとの熱意が異なるというわけでは無く、これも説明しないとわからないかな、これも入れた方がいいかなとやっていったらこの分量になったというだけです。初回と今回だと分量が3倍ぐらいになっていると思います()。一度このシリーズを完結させた後に時間が余ったら、初期の文章はリファインしたいと思います。まあ期待はするな。
今回も読んでくださってありがとうございました。次回もよろしくお願い致します。
ひと月以上更新しなかった事は内緒な!
目次代わりの記事→Animelo Summer Live15年史勝手に分析 0
前のシリーズ初回の記事→1-1:アニサマ15年と2005~07の概要
このシリーズ初回の記事→2-1:アニサマ出演者音楽レーベルについてその1(ランティス)
前回の記事→ 2-5:アニサマ出演者音楽レーベルについてその5(NBCユニバーサル、ワーナー、日本コロムビア、ユニバーサルミュージック)
次のシリーズ初回の記事→3-1:アニサマ主要パート担当アーティスト一覧と分析
*2:翌2004年の同名作品主題歌であるサイキックラバーの「特捜戦隊デカレンジャー」がその記録を更新し、さらにその翌2005年の同名作品主題歌である岩崎貴文の「魔法戦隊マジレンジャー」が現在に至るまで最大のヒット曲である
*3:水樹奈々の「Invisible Heat」(劇場アニメ「魔法少女リリカルなのはReflection」挿入歌)や「粋恋」(TVアニメ「バジリスク~桜花忍法帖」ED)や鈴木このみ「THERE IS A REASON」(劇場アニメ「ノーゲーム・ノーライフ ゼロ」主題歌)等の楽曲。
*4:2010年にSound Horizonが「Märchen」で記録を更新。2021年現在最高記録を保持しているのはLiSAの「LEO-NiNE」。
*6:こちらが芸名であり、本名の加藤あすかからFJでの名は取られた
*7:「オムナ マグニ」は2006年にリリースされた牧野の1stアルバム「天球の音楽」に初収録されたため、「アムリタ」のリリースの方が先となった。
*8:それ以前にもビクターでは2003年に「石川知亜紀」名義で「高橋留美子劇場 人魚の森」OP「Like an angel」を担当していた。
*10:製作した代表的なアニメソングとしては藍井エイル「ラピスラズリ」、大橋彩香「ワガママMIRROR HEART」、水樹奈々「禁断のレジスタンス」等。
*11:唐沢のアニメソング歌手であるTRUEとしての代表曲である「DEARM SOLISTER」の作曲者も加藤である。
*12:デビュー当時から96年の改名までは「trf」名義でしたが、現在はこちらがメジャーですので大文字表記で記載します。
*13:当時のCD売り上げ基準では100万枚で大ヒットと言えるのでヒット曲扱いとします。
*14:発売時期の関係で1994年のオリコン年間ランキングでは3位(年間集計では162万枚)となりましたが、最終的な売り上げでは同年の1位であるMr.Childrenの「innocent world」(年間181万枚、累計193万枚)を上回っています。
*15:放送自体は1999年からであり初期は他社のアーティストが担当していた。
*16:正式なアニメ版主題歌のタイトルは「ゲキテイ(檄!帝国華撃団)」
*17:同曲での名義は「AAA DEN-O form」
*18:歌唱名義は同作のダブルヒロインを演じた桃井と野川さくらによるユニット「SUN&LUNAR」。
*19:お馴染み「Animelo Summer Live」の運営企業、2006年からドワンゴはエイベックスと資本提携関係にあったが2014年に所属する株式を全て売却し現在は資本提携関係に無い。
*20:現在は榎あずさに改名し81プロデュースを退所している。
*21:2021年にメンバーの一人である澁谷梓希が卒業し、現在は5人で活動している。
*22:この作品を最後にバトスピのアニメシリーズは一旦終了し、エイベックスの楽曲制作体制も終わる。2015年から放送されたアニメ7作「バトルスピリッツ 烈火魂」以降のTVアニメ・ネット配信シリーズは再びランティスが楽曲制作を担当している。
*23:2ndシーズンの第1クールと第2クールのOPであった「ドリームパレード」のみ2クール、他のOPは1クール使用された。
*24:所属レーベルはAT-X、アニメ制作会社のトムス・エンタテインメント系列であるアルテメイトを経てインディーズで活動していた
*25:ただし安野は声優としてはエイベックス・ピクチャーズに所属している
*26:2001年のアニメ版と同じ原作の作品であるがスタッフ・キャストは一新されている。
*27:TUBEはアーティストとしての所属レーベルは一貫してソニー系列ではあるが2008年までビーインググループが音楽制作を担当していた。デビューから現在まで所属している芸能事務所であるホワイトミュージックは芸能事務所のぐあんばーるとビーイングが共同出資で設立している。
*28:関は織田の従妹であったが、織田自身は歌手オーディションに関わっておらず、楽曲制作に取り掛かってから初めて知った。なお現在関は有馬ゆみこと名義を変え声優事務所である大沢事務所に所属、ナレーター、舞台女優、歌手などの活動をしている。