※この企画の記事内では個人名は敬称略で記載しております、ご了承ください。
それでは今回から第二部、もしくは第二章に入っていきます。こちらではアニサマに参加するアーティストの所属レーベルについて語っていきたいと思います。
初回はアニサマの成立当初から現代にいたるまでの主要レーベルで、現在においてもアニサマ最多出演組数を誇る大黒柱的存在、ランティスについて解説します。
- 1:ランティスの誕生前史と井上社長について
- 2:初期のランティスとアニソンアーティスト
- 3:アーティストの多様化とランティス祭り
- 4:大規模化するライブと新星達の誕生
- 5:株式会社ランティスの終わり、そして新たな始まり
- 6:ランティスのアニソンアーティスト
- 6-1:ランティスのアニソンシンガー
- 6-2:ランティスの声優ソロアーティスト
- 6-3:ランティスの声優ユニット
- 6-4:ランティスの作品ユニット
- 7:アニサマにおけるランティス
- 8:まとめ
1:ランティスの誕生前史と井上社長について
まずはランティスの設立から現在までを見ていきます。ランティスは1999年に設立されたアニメ・ゲーム専門の音楽関係の製作会社です、いや「でした」と言うべきでしょう。これについては後に語ります。
ランティスはかつて業績不振から清算されたバンダイ系列のアニソン製作会社「バンダイ・ミュージックエンタテインメント」とその子会社でありバンダイとアミューズの合弁会社であった「エアーズ」の元従業員によって設立され、両社の持っていたガンダムシリーズ等の音源も引き継いで保有していました。
設立から一貫して社長を務めていたのはかつて「エアーズ」で音楽ディレクターを務めており1-1でも名前が出てきました井上俊次です。井上がアニソンに関わるきっかけとなったのは高校時代、同級生であった影山ヒロノブに誘われてロックバンド「LAZY」のキーボード担当として加入した事です。「LAZY」は影山(ボーカル)、井上(キーボード)、高崎晃(ギター)、田中宏幸(ベース、故人)、樋口宗孝(ドラム、故人)といったいずれも伝説級のアーティストとなるメンバーが揃っているバンドでした(自分は門外漢なので細かい言及は避けますが)。「LAZY」はその後メジャーデビューをしてヒットしていきましたが音楽性の違いから解散しました。ロックバンドにはよくあることです。
その後影山はソロ歌手となり苦難の末、「電撃戦隊チェンジマン」の主題歌を担当した事をきっかけに、「聖闘士神話 〜ソルジャー・ドリーム〜」、「CHA-LA HEAD-CHA-LA」、「鳥人戦隊ジェットマン」といったアニメ・特撮ソングをヒットさせていきます。
一方井上はいくつかのバンドを結成していましたがいずれも解散した後、1990年には「AIRBLANCA」を結成します。メンバーは影山(ボーカル)、井上(キーボード)、田中宏幸(ベース)、松尾洋一(ギター)、須藤賢一(キーボード)、岩田ガンタ康彦(ドラムス)。
このバンドも1年ほどの活動しかしませんでしたが、松尾はアニサマ開始以来ほぼ全ての公演でアニサマバンドとして参加、須藤と岩田もJAM Projectや茅原実里等数多くのランティスアーティストの楽曲に参加する等後のランティスに繋がっていきます。
「AIRBLANCA」の解散後井上は音楽プロデューサー業に専念し、1997年に担当策であった特撮作品「ウルトラマンダイナ」の主題歌に「LAZY」を起用する事を決めた事をきかっかけに1998年に再結成し、1999年のランティス設立に繋がっていく事となります。
2:初期のランティスとアニソンアーティスト
こうして1999年11月26日に株式会社ランティスが設立し、新たなる歴史の1ページが始まる事となります。当時のランティスは井上社長を含め社員が4人、恵比寿のマンションの1室からのスタート。販売・流通も2009年3月までキングレコードに委託していたほどの小規模会社でした。ちなみに名付け親は漫画家の麻宮騎亜。「アトランティック」や「アトランティス」といった夢の島、大陸からの造語です。
1999年設立というのはアニソン業界ではかなりの新参です。戦前からの歴史がある日本コロムビア(アニソン業界への参入は60年代半ばから)やキングレコード(系列のスターチャイルドの設立が1981年)、ポニーキャニオン(1955年設立)といった会社と比べれば一目瞭然です。
設立当初のランティスから現在までを支え続けているのが2000年7月に結成された「JAM Project」です。2000年7月に水木一郎、影山ヒロノブら実力派アニソンシンガーによって「アニソンシンガーの手によるアニソン」を作り上げるために結成されたこのユニットはメンバーの卒業や新加入を経て2020年にはデビュー20周年を迎えます。初期の曲にはデビュー曲であるOVA「エクスドライバー」OP「疾風になれ」やOVA「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」OP「STORM」等がありますが、何と言ってもJAM Projectが主題歌を担当する作品といえばゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズ(通称スパロボ)です。2001年4月25日にリリースされたゲーム、スーパーロボット大戦α外伝主題歌「鋼の救世主」を皮切りに2003年の「第2次スーパーロボット大戦α」OP「SKILL」、2004年の「スーパーロボット大戦MX」OP「VICTORY」、2005年の「第3次スーパーロボット大戦α 終焉の銀河へ」OP「GONG」といった曲が次々とヒットしていきます。これらの曲はJAM Projectの代表曲となっており、さらに「スパロボ」シリーズは現在まで数多くの作品が製作され、アニメ化された作品など含めほぼ全ての作品の主題歌をJAMが担当、合計44曲が作られています。
また2001年11月24日、SHIBUYA ON AIR EAST(現TSUTAYA O-EAST)で開催されたランティスアーティスト初のライブ「JAM Fight! Live in JAPAN」を開催したのもJAMでした。始まりから現在まで、ランティスアーティストの精神的支柱となっているのがJAM Projectなのです。なお影山緋色の部、井上社長と関係の深いLAZYもランティス設立と共に移籍、最初期からの所属アーティストとなっています。
また同じくランティス初期から所属し、JAMと同じくアニサマ初回から出演しているのが「栗林みな実」です。栗林は2001年にヒットしたアダルトPCゲーム「君が望む永遠」のメインヒロインの声優と主題歌「Rumbling hearts」を担当し、同作のヒットと共にアーティストとしての活動を本格化していきます。2002年に栗林は「君望」のスピンオフ的作品「マブラヴ」主題歌「マブラヴ」でランティスからメジャーデビューし、2003年に「君望」のアニメ版OP「Precious Memories」で初のアニメ主題歌を担当、その後はTVアニメ「クロノクルセイド」OP「翼はPleasure Line」や「舞-HiME」OP「Shining☆Days」といった様々なアニメの主題歌を担当していく事となります。
他にも「D.C. 〜ダ・カーポ〜」シリーズの主題歌などを担当した「yozuca*」や「CooRie」、「舞-HIME」や「ストロベリー・パニック」の主題歌を担当した「美郷あき」、「GIRLSブラボー」や「SHUFFLE!」の主題歌を担当した「橋本みゆき」と言ったアーティストたちが初期からのランティスを支えてきました。
また意外な所では2002年にTVアニメ「おねがい☆ティーチャー」OP「Shooting Star」で「KOTOKO」が初のCDシングルをリリースしました。なお同じCDのカップリング曲として収録されている同作品のED「空の森で」を歌う「川田まみ」も初のシングルCDへの参加となりました。なお続編の作品「おねがい☆ツインズ」のOPでありKOTOKOと佐藤裕美のコラボシングル「Second Flight」もランティスからリリースされました。こちらにも川田まみが歌うED「明日への涙」が収録されています。KOTOKO、川田まみともこの時期からアダルトゲームやインディーズ系の音楽で活躍し、後にジェネオンエンタテインメントからメジャーデビューする事となりますが、アニメとの関わりはランティスからが始まりでした。
また2004年には主にビクターからの楽曲リリースが多かった「ALI PROJECT」が初めてランティス系列レーベルの「オンザラン*1」からTVアニメ「ローゼンメイデン」主題歌「禁じられた遊び」をリリース、同作・楽曲双方がヒットし、以後も「ローゼンメイデン」シリーズ等のアニメ主題歌をビクターでの活動とは別にリリースしていきます。
「ランティス三人娘」と呼ばれた千葉紗子、野川さくら、新谷良子、他にも中原麻衣や清水愛といった女性声優アーティストも忘れてはいけないアーティストです。
男性声優でもTVアニメ「好きなものは好きだからしょうがない!!」でOPを担当した「鈴木達央」とEDを担当した「谷山紀章」がソロアーティストとしてデビューしますが、この二名は後にそれぞれ別の音楽ユニットでの活動が有名です。
2005年にデビューしたのが上記文の谷山紀章が「KISHOW」の名義でメインボーカルを担当するのが「GRANRODEO」です。元々谷山は声優として「君が望む永遠」に出演し、そのキャラクターソングの製作を担当していたのがGRANRODEOのギターを担当するe-ZUKAこと飯塚昌明であり、これが結成のきっかけとなりました。また飯塚は栗林みな実の楽曲の多くに作編曲者として参加し、ライブの際にはサポートメンバーとして参加しています。また谷山も栗林とは「君望」での共演以来の仲であり、GRANRODEOは栗林と縁が深く、アニメのOPEDをそれぞれ担当したりOPが変更になった場合栗林からロデオ、またはその逆となるといった場合もありました。
GRANRODEOは2005年にTVアニメ「IGPX」OP「Go For It!」でデビューし、その後も「NEEDLESS」や「ブラスレイター」、「黒神」といった作品の主題歌を担当していきます。
こういったランティスのアーティストは2000年代中盤のアニサマに多く出演し、アニサマの中核たるランティスを作り上げていきました。ちなみにバンダイグループはアニサマの始まりと同時期の2005年6月にナムコとの経営統合が決定し、9月からバンダイナムコグループとして歩み始める事となります。
3:アーティストの多様化とランティス祭り
2006年6月、ランティスは元々関係楽曲を手掛けていたバンダイ系列のバンダイビジュアルの連結子会社となりバンダイグループの仲間入りをしました。また同年には影山ヒロノブが社長を務める音楽事務所「SOLID BOX」を設立、この会社自体はランティスとの直接経営関係はありませんでしたが、ランティスに所属するアニソンアーティストの多くがこの事務所に所属するようになります。
この年に放送され、ランティスの大きな転機となったのが「涼宮ハルヒの憂鬱」です。それまでの「Air」や「フルメタル・パニック!」シリーズ等で知られていた京都アニメーションの名を一気に高め、深夜アニメのみに留まらず日本のアニメ、社会にまで影響を与えたこの作品はCD面でも大ヒットを記録しました。ED「ハレ晴レユカイ」は累計17万枚を超え日本レコード協会にゴールドディスク認定(10万枚以上出荷)、挿入歌集「涼宮ハルヒの詰合」も累計20万枚を超える大ヒットとなり、一躍ランティスの名を広める事となります。またこの作品のメインキャラを演じた「平野綾」、「茅原実里」、「後藤邑子」も各自ランティスでソロ活動を始める事となります*2。特に茅原実里はソロデビュー後アニメ主題歌をなかなか担当しなかったものの曲はヒットしていき、TVアニメ「喰霊―零―」OP「Paradise Lost」で初のアニメ主題歌を担当、その後も「境界線上のホライゾン」「境界の彼方」等で声優としてメインキャラを演じると共に主題歌を担当していき人気声優アーティストへの道を歩んでいく事となります。
その後も2007年にはハルヒと同じく京都アニメーション×ランティスの「らき☆すた」が大ヒットし、OPの「もってけ!セーラーふく」は22万枚を超える売り上げを記録しました。その人気はJAM Projectがカバーしたリミックス版「JAMがもってった!セーラーふく」まで誕生したほどです。その後も京都アニメーション作品の主題歌の多くは、ランティス系列のアーティストが担当していく事となります。
個別のアーティスト面に面を向けると、まずは女性アニソンアーティストでは2007年に「ひだまりスケッチ」シリーズのED等を担当した「marble」や「「sola」「true tears」の主題歌を担当した「結城アイラ」が、2009年には「CANAAN」や「聖痕のクェイサー」の主題歌を担当した「飛蘭(現:Faylan)」がデビューする等新人アーティストの活発な活動が続きます。
また2007年から2008年にかけて小野大輔、鈴村健一、森久保祥太郎といった人気男性声優がランティスでアーティストデビューし、それ以前から歌手活動をしておりランティスに移籍した岩田光央と共に企画ライブイベント「Original Entertainment Paradise」、通称「おれパラ」を開催、新たにランティスからデビューした男性声優アーティストだけでなく、他レーベルからもゲストを呼び現在まで続いています。
またこのころからランティスの海外進出が始まります。2008年にはJAM Projectが2008年に初の海外公演「JAM Project WORLD FLIGHT 2008 No Border」を開催し、台湾、ブラジル、アメリカ、韓国、中国、香港、メキシコ、フランス、スペインと世界9か国・地域でのライブを成功させます。この後もランティスアーティストの海外公演は続いていき、アニメソング文化を世界に広める先兵となっていきます。
そしてランティス設立10周年になる2009年、ランティスは大きな変化を迎えます。
まず2月25日にソニーが販売・流通を担当する新レーベル「GloryHeaven」を共同で設立しました。そしてここからデビューしたのがソニー系列の事務所「ミュージックレイン」に所属する声優4人によるユニット「スフィア」がデビューする事となります。スフィアは声優個人の活動と所属はソニー系列、スフィアの活動はランティスというレコード会社をまたにかけた活動をしていきます。
3月には「バンダイ・ミュージックエンタテインメント」から一部音楽の管理を引き継いでいたバンダイ系列のレーベル「エモーション(モアイ像のアレ)」からさらに管理を引き継いでバンダイナムコが権利を保有する音楽管理を一括して担当し、4月には販売・流通をキングレコードからバンダイビジュアルに委託変更するといったバンダイナムコグループの一部門としての性格が強くなっていきます。
そういった中2009年9月26日・27日の2日間、富士急ハイランドコニファーフォレストでランティスが開催したのが自社所属アーティストによるアニソンフェス「ランティス祭り」です。今でこそ各社が当たり前のように開催しているアニソンレーベルの単独フェスですが、その走りがランティス祭りでした。
出演アーティストも唯一両日出演となったJAM Projectを初めとして栗林みな実*3、ALI PROJECT、yozuca*、CooRie、美郷あき、橋本みゆき、結城アイラ、飛蘭といったアニソンアーティスト、平野綾、茅原実里、後藤邑子、中原麻衣といった女性声優、岩田光央、小野大輔、鈴村健一、森久保祥太郎といった男性声優、GRANRODEOやスフィアといった声優系ユニット、さらにランティス関係作品を始めとする数多くのアニソンの作詞を手掛け、アーティストとしても活動する畑亜紀、そしてLAZYまでもが出演するという、当時のランティスオールスターライブでした。2日間にわたって開催されたライブは、途中雨に振られるといったアクシデントにも負けずライブは大成功し、以後も5年節目に続く事となります。
4:大規模化するライブと新星達の誕生
このランティス祭り前後から、ランティス所属アーティストの日本武道館単独公演が相次いで開催されます。
2009年 |
03月29日 |
らき☆すた in 武道館 あなたのためだから(アニメイベント) |
06月12日 |
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2010年 |
05月03日 |
GRANRODEO(男性声優アーティスト系ユニット初) |
05月30日 |
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09月17日 |
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09月18日 |
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11月23日 |
スフィア(声優ユニット初、声優アーティストの武道館公演としてはデビュー後史上最速) |
これまで武道館単独公演を開催したアニメ関係アーティストの殆どはキングレコードでしたが、他レーベルからも出始めたのが2009年から2010年でありそしてその中でも多かったのがランティス系のアーティストです。
そんな2009年~10年はその後のランティスに、そしてアニメ業界に大きな動きを与えるアーティストやプロジェクトがデビューした年でもありました。
2009年10月に先ほど名前が出ました鈴木達央がボーカルを務める音楽ユニット「OLDCODEX」が同名のミニアルバムでデビューしました。同年にはブシロード初のメディアミックスプロジェクト「Project MILKY HOLMES」がスタートし、同作品の声優ユニット「ミルキィホームズ」が2010年6月に「雨上がりのミライ」でランティスからアーティストデビューしました。同作品の2010年のアニメ化「探偵オペラ ミルキィホームズ」がヒットしユニットとしての「ミルキィホームズ」も人気ユニットへの道を歩んでいく事となります*4
2010年6月に始まったのがKADOKAWAグループ、サンライズ、ランティス3社による共同プロジェクト「ラブライブ!シリーズ」です。8月には同プロジェクトから誕生した声優ユニット「μ's」が活動を開始し1stシングル「僕らのLIVE 君とのLIFE」をリリースしました。その後アイドルアニメの金字塔となる「ラブライブ!シリーズ」はこの年から始まる事となりました。
また2010年代に新たなるアニソンアーティストが多くデビューし、数多くのヒット作品共にアニソン業界へ名を広げていきます。
「花咲くいろは」シリーズや「のんのんびより」シリーズの主題歌を担当する「nano.RIPE」、「日常」や「ガールズ&パンツァー」の主題歌や挿入歌を担当する「佐咲紗花」、「氷菓」や「ガールズ&パンツァー」の主題歌を担当する「ChouCho」といったアーティストです。
他にも「中二病でも恋がしたい!」シリーズや「ささみさん@がんばらない」の「ZAQ」、「バディ・コンプレックス」や「響け!ユーフォニアム」、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の「TRUE」、「ウィッチクラフトワークス」や「小林さん家のメイドラゴン」の「fhána」・・・アニソンと共に歩む新たなるアニソンシンガー達は2010年代のランティスを単なるアーティストだけでなく、作品や他アーティストへの楽曲提供といった形でも支えていきます。
また同年代の女性人気に定評のある作品としては2012年に初アニメ化がされた週刊少年ジャンプの漫画作品「黒子のバスケ」です。元々の作品人気もありアニメもヒットし、TVアニメ3期に加え劇場版まで制作されたこの作品でほぼ全てのOPを担当したのがGRANRODEOです。1期前期OP「Can Do」はロデオにとっての新たなるアンセムとなり、2期前期OP「The Other self」は自身最大のヒット曲となりました。またOLDCODEX はED「カタルリズム」「WALK」等の楽曲を担当、他にも同作品で主人公を演じた「小野賢章」がこの作品の主題歌でアーティストデビューする等の男性声優アーティスト関係の音楽活動を活発化させました。
しかしOLDCODEXのアーティストとして飛躍の作品となったのは翌年2013年に放送されたアニメ「Free!」です。ランティス×京都アニメーションという組み合わせながら女性人気と言う新たなる道を開いた同作品あり、鈴木達央は声優として主人公を演じ、またOLDCODEXとしてOP「Rage on」を担当、3万枚以上のセールスを記録しました。3期迄製作されたアニメシリーズと原作に当たるライトノベル「ハイ☆スピード!」のアニメ化においてOLDCODEXは主題歌を担当し、アーティストとしての飛躍を遂げていく事となります。
また2010年代のアニソン界における大規模ムーブメントであるアイドルアニメにおいても、ランティスは大きな役割を果たしました。
2012年から始まったアーケードゲームと同作のアニメ「アイカツ!」では音楽制作を担当しました。「アイカツ!」はキャラクターの声優と歌唱を担当するアーティストが別と言う体制であり、「アイカツ!」では「STAR☆ANIS」が、続編であるシリーズ作品2作「アイカツスターズ!」でのユニット「AIKATSU☆STARS!」がランティスで活動、声優が歌唱を担当する体制となった3作「アイカツフレンズ!」では声優ユニット「BEST FRIENDS!」がランティスで活動しています。
また2013年からはバンダイナムコグループのコンテンツですが音楽制作は日本コロムビアが行っていたアイドルマスターシリーズにも参入、同年から始まった新シリーズ「アイドルマスターミリオンライブ!」をプロデュースしました。当時は765プロの後輩という位置付けが強かったミリオンですが、2014年のファーストライブ以降独自の活動が強くなっていきます。またアイカツシリーズに連続出演している「大橋彩香」やアイカツやミリオンライブに出演している「田所あずさ」ら新世代の女性声優アーティストもソロデビューを始めたのも同時期です。
そして忘れてならないのは先ほども名前が出た「ラブライブ!」です。同作品は2013年にアニメが放送され大ヒットし2014年には続編のアニメが放送されこちらも引き続き大ヒットしました。楽曲もアニメ化以降毎回数万枚、オリコンチャート上位の売り上げを記録し、特に2014年にリリースされたアニメ2期のOP「それは僕たちの奇跡」は10万枚を超える大ヒット曲となりました。
こういったランティスのアイドルアニメに共通している点は、ランティス所属のアーティストからの楽曲提供が多い点です。ほぼ全ての作詞を畑亜紀が担当するラブライブ!、「スターズ!」以降シリーズ作品の作詞に参加する唐沢美穂*5、といった人がいますが、特に「ミリオンライブ」では唐沢、ZAQ、結城アイラ、nano.RIPEのボーカルであるきみコ、fhánaのリーダーである佐藤純一といった多くのランティスのアーティストが作詞・作曲を担当するクリエイターとして参加しています。
もちろんランティスを支え続けたアーティストの大規模ライブの勢いも続いています。2011年から2014年までのランティスアーティストの大規模ライブをまとめると以下のようになります。
2011年 |
04月17日 |
スフィア |
幕張メッセ国際展示場 9~11ホール |
09月17日~18日 |
国立代々木競技場 第一体育館 |
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10月10日 |
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2012年 |
01月29日~30日 |
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04月28日~29日 |
スフィア |
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06月16日~17日 |
幕張メッセイベントホール |
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09月16日~17日 |
スフィア |
幕張メッセイベントホール |
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11月18日 |
さいたまスーパーアリーナ(アリーナモード) |
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2013年 |
2月11日 |
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02月14日 |
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04月20日~21日 |
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07月20日 |
富士急ハイランドコニファーフォレスト |
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9月15日~16日 |
スフィア |
国立代々木競技場 第一体育館 |
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2014年 |
01月05日 |
さいたまスーパーアリーナ(アリーナモード) |
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02月01日~02日 |
スフィア |
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02月08日~09日 |
μ's |
さいたまスーパーアリーナ(アリーナモード) |
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02月16日 |
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02月11日 |
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11月15日~16日 |
スフィア |
幕張メッセイベントホール |
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11月18日 |
こういった規模・所属アーティストの増加の中、2014年にランティス設立15周年として第二回となる「15th Anniversary Live ランティス祭り 2014」が開催されました。
全国4ヶ所、9日間にわたって開催されたこのライブには設立当初からランティスを支え続けている大物から新人のアーティスト、アニソンシンガー、男女問わぬ声優アーティスト、声優ユニット、作品ユニット等々、60組以上のアーティストが出演しました。またテーマソング「Starting STYLE!!」も作成されるなど5年前に比べさらに発展したライブとなりました。
大雨と落雷によって一時中断となるアクシデントとなった東海公演、アイドルマスターとラブライブの夢の共演となった関東公演、病気療養を終えた後藤邑子がサプライズ出演した東北公演ファイナル等数々の話題と共に終わり、翌年2015年には海外6ヶ国・地域で「Anisong World Tour〜Lantis Festival 2015〜」を開催。ランティスは既に日本だけでなく、世界に冠たるアニソンレーベルとなっていました。
5:株式会社ランティスの終わり、そして新たな始まり
2015年4月1日、「SOLID BOX」はPAエンジニアリング会社のアンバートーンと合併、株式会社「ハイウェイスター」となり、8月にはバンダイナムコグループの子会社となったことでランティスとはグループ内の会社と言う関係となります。
そんな2015年、最もランティスで、そしてアニメ業界で勢いがあったのがμ'sです。この年1月31日・2月1日にさいたまスーパーアリーナスタジアムモードでのワンマンライブを成功させ、6月には劇場版「ラブライブ!The School Idol Movie」が大ヒット、同作の挿入歌CDはいずれも12万枚を超えるヒット曲となり、年末にはアニソン歌手として2組目、そしてランティスのアーティストとして初となる紅白歌合戦へ出場し、翌16年には同じくアニソン歌手2組目となる東京ドーム単独公演を大成功させました。
このライブを最後にμ'sは事実上の活動休止となりますが、同時期の2015年2月から第二のプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」が始まります。これにより活動を開始した作品ユニットが「Aqours」です。同年10月に「君のこころは輝いてるかい?」でデビューしたAqoursはμ'sの存在という大きなハードルがありながらも2016年と17年にアニメ化を、19年には映画化を成功させ、劇場版の主題歌である「僕らの走ってきた道は…」はμ'sですら達成できなかったオリコン週間シングルチャート1位を獲得しました。
ライブの面でも2017年から次々とアリーナ・ドームクラスでのライブを成功させ、2018年にはμ'sと同じくどちらもアニメ関係では3組目となる東京ドーム単独公演と紅白歌合戦の出演を成し遂げました。
また2019年には第三のラブライブである「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」が活動を開始し、2020年にはμ'sも事実上活動を再開、シリーズ合同でのイベント「ラブライブ!フェス」を開催する等ランティスの最有力作品となりました。
またアイドルマスターシリーズもランティス内で規模を拡大していきます。2014年に発表されたシリーズ初の男性アイドル作品「アイドルマスターsideM」は2015年に活動を本格化し同年4月から初のCDシリーズをリリース開始しました。リリースされたCDやライブは次々と好評を博し2017年にはアニメ化される等のヒット作となり、今や男性アイドル作品ではトップクラスの人気作品となりました。
ミリオンライブの方も勢いを拡大し2016年にはアイドルマスターシリーズ初の全国ツアー、2017年には日本武道館での単独公演3days、2018年にはオリコン週間シングルチャート1位を獲得する等の実績を残し、(ユニットとしての)765プロの後輩というだけでなくミリオンライブという単独の存在としての立ち位置が強くなります。アニソンフェスでの出演が(ユニットとしての)765プロがいない、ミリオンライブ単独としての出演が増えてきたのもこのころです。
また2018年にはシリーズ最新作「アイドルマスターシャイニーカラーズ」も開始し、アイドルマスターシリーズ全体での規模はますます拡大していきます。
そういった中、2018年4月1日に行われたバンダイナムコグループの再編によって株式会社としてのランティスは終わりを告げます。この日ランティスはバンダイビジュアルに吸収合併され、「株式会社バンダイナムコアーツ」として統合されました。この再編により井上社長はランティス社長からバンダイナムコアーツ副社長となり*6、また同年にラブライブ!や大橋彩香、田所あずさのプロデュースを手掛けた木皿陽平、茅原実里やTRUEのプロデュースを手掛けた斎藤滋といった名物プロデューサーが退社・独立する等大きな変化を迎えます。企業としてのランティスは終わりを告げましたがその名はバンダイナムコグループの音楽レーベルとして存続しています。
そして2019年6月21、22、23日にはランティス設立20周年を記念し3回目となる「20th Anniversary ランティス祭り2019 A・R・I・G・A・T・O ANISONG」が開催されました。
このフェスはそれまでと同じくランティス所属アーティストのオールスターライブとなり、特に3日目は12年ぶりに勢ぞろいしたSOS団が出演する等好評を博す一方で、出演者による曲数の格差が批判を呼ぶなど、賛否両論の公演となりました。それは現在のランティスの最も有力なアーティストがコンテンツそのものの作品ユニットであり、単独のアーティストが伸び悩んでいる事を表しているようにも見えます。
このように今のランティスには全く問題が無いわけではありませんが、様々な種類・芸歴・立ち位置を持つアーティストが在籍する、業界大手の一つとしてその地位は揺るぎません。
6:ランティスのアニソンアーティスト
さて、そんなランティスのアーティストについて見ていきます。現在ではランティスで活動をしていない人、アーティスト活動自体をしていない人もいます。
人数が多いのでそれぞれのジャンル別に分けてあります。ちなみに名前の前の数字は出演年です。また特記事項がある人は記載してあります。
ただしトリ経験者は別の記事で詳細に書きますので、こちらでは詳しい事は書きません。
6-1:ランティスのアニソンシンガー
・JAM Project:詳細は4-2:トリ担当アーティストその1(2005~12)参照
・栗林みな実(Minami):05、06、07、08、09、10、11、12、13、14、16、17、18、19
※09年、10年のテーマソング作曲担当、最多出演アーティスト
・ALI PROJECT:06、07、08、09、10、12、13、16
※ビクター(フライングドッグ)でも並行して活動
・CooRie:08
・yozuca*:08
・美郷あき:08
・飛蘭:09、10、11
・milktub:10
・ULTRA-PRISM:11
・麻生夏子:11
・佐咲紗花:11
・ヒャダイン:11
・ZAQ:13、14、15、16、17、18、19
※17年のテーマソング制作担当、一部楽曲はエイベックス系列からのリリース
・ChouCho:13
・nano.RIPE:13
※メンバーの一人(当時)、山本直樹の生前最初で最後の出演
・藤田麻衣子:13
・STAR☆ANIS:14
・fhána:14、15、16、17、18、19
※19年のテーマソング制作を担当
・玉置成実:16
※楽曲の多くはソニーからのリリース
・山本陽介:16
※ギタリストであるため演奏のみ
・TRUE:16、17、18、19、【20】
※18年のテーマソング作詞を担当
・ORESAMA:18
・結城アイラ:19
※19年はシークレット出演
6-2:ランティスの声優ソロアーティスト
・鈴木達央:詳細は4-4:トリ担当アーティストその3(2017~19)参照
・茅原実里:詳細は4-2:トリ担当アーティストその1(2005~12)参照
・平野綾:07、08、09
・鈴村健一:12、13、17
・小野賢章:14、15、16
・大橋彩香:15、16、17、18、19、【20】
※19年はソロ及び他作品ユニットで3日間全出演
・田所あずさ:16
・渕上舞:19
・寺島拓篤:19
・畠中祐:19
・鈴木愛奈:【20】
・仲村宗悟:【20】
6-3:ランティスの声優ユニット
・GRANRODEO:詳細は4-3:トリ担当アーティストその2(2013~16)参照
・スフィア:詳細は4-4:トリ担当アーティストその3(2017~19)参照
・妖精帝國:09
・StylipS:12
・OLDCODEX:詳細は4-4:トリ担当アーティストその3(2017~19)参照
・SCREEN mode:15、16、17
・buzz☆Vibes:19
6-4:ランティスの作品ユニット
・SOS団:06、17
※06年は別名義、17年はシークレット出演
・ミルキィホームズ:10、11、12、13、15、17、18、
※2013年からブシロード系列に移籍、2019年に解散
・μ's:12、13、14、15
※2016年に事実上の活動休止、2020年に活動再開
・Aqours:詳細は4-4:トリ担当アーティストその3(2017~19)参照
・虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会:19
・アイドルマスターミリオンスターズ:13、14、17、18
・アイドルマスター SideM:17、18、19
・北宇治カルテット:16、19
・DearDream:18
※2018年にプロジェクトが終了
・ウマ娘 プリティーダービー:18
・アイドルマスター シャイニーカラーズ:【20】
7:アニサマにおけるランティス
何回も言及してきましたが、ランティスは設立当初からアニサマと深い関係があります。
初回から数多くの人気アーティストをを出演させ、その出演者数は年を経るにつれますます増加していきます。近年では出演者の1/3がランティス関係のアーティストとなるほどです。アニサマのトリを担当した全14組のアーティストの内、最多の6組がランティス関係のアーティストである事がその影響力の強さを象徴しています。
アニサマの映像商品の販売担当においても、2007年はキングレコードと共同で、2014年と2017年は単独で担当しています。
もっとも古くから、そして現在においてもアニサマに最も大きな影響を及ぼすレーベルであることは確実です。
8:まとめ
以上がランティスと所属アーティストについての解説です。
ランティスの大きな特徴は自社であるバンダイナムコグループのコンテンツの多くの楽曲を手掛ける事により、数多くの人気コンテンツと直結した人気を得られているアーティ宇都が多く所属している所です。
ジャンルにおいてもアニソンシンガー、男女を問わない人気声優アーティスト、声優ユニット、作品ユニットと隙無く全てのジャンルを揃えています。
未だアニサマに出演した事のないアーティストにも数多くの人気・実力派がいますが、そういった人たちが出演できないほと多くの人を抱えているのも大きな特徴です。この勢いはまだまだとどまらないでしょう。
・・・というわけで、再構成を施し後悔の順序が逆となった本来のシリーズ第一弾でした。
このシリーズは毎回毎回長くしなければいけないのでは、と墓穴を掘った感()
今回もこの記事を見ていただきありがとうございました。
次回以降もこの企画の更新はバラバラになってしまいますが、よろしくお願いします。
目次代わりの記事→Animelo Summer Live15年史勝手に分析 0
最初のシリーズの記事→1-1:アニサマ15年と2005~07の概要
次回の記事→2-2:アニサマ出演者音楽レーベルについてその2(キングレコード)
さらに次回の記事→2-3:アニサマ出演者音楽レーベルについてその3(ソニー)
次のシリーズ初回の記事→3-1:アニサマ主要パート担当アーティスト一覧と分析
*1:2004年に設立したランティスとジェネオンエンタテインメントの合併による株式会社。独自のレーベル「Mellow Head」を持っていたが2006年8月にランティスに吸収合併されたが、「Mellow Head」は2011年の廃止までランティス内のレーベルとして存続しました。
*2:平野は2011年にランティスでの活動を終了、後藤は病気療養のため実質アーティスト活動は休止。
*3:このころになると栗林は仕事をアーティスト活動にほぼ一本化していた
*4:2013年5月にブシロード系列の響ミュージックへ移籍。
*5:TRUEの本名であり、作詞・作曲活動をする際にはこちらの名義を使用する