※この企画の記事内では個人名は敬称略で記載しております、ご了承ください。
レーベル分析シリーズ第四回は一気にポニーキャニオン、メディアファクトリー、5pb.、ブシロードの4レーベルについて一気にふれていきます。というのはこの4レーベル、それぞれ関係があるため、まとめて記事にして方が分かりやすいためです。
詳細は読んでいただければわかると思いますので、よろしくお願いします。
- 1-1:ポニーキャニオンとアニメソングの歴史
- 1-2:ポニーキャニオンのアニソンアーティスト
- 2-1:メディアファクトリー(KADOKAWA)とアニメソングの歴史
- 2-2:メディアファクトリーのアニソンアーティスト
- 3-1:5pb.(MAGES.)とアニメソングの歴史
- 3-2:5pbのアニソンアーティスト
- 4-1:ブシロードとアニメソングの歴史
- 4-2:ブシロードのアニソンアーティスト
- 5:アニサマにおける4社
- 6:まとめ
1-1:ポニーキャニオンとアニメソングの歴史
ポニーキャニオンはフジテレビや産経新聞、ニッポン放送などのメディアを運営するフジサンケイグループの音楽・映像ソフトメーカーです。当然アニメソング専門のメーカーでは無く、ドラマやバラエティ番組、映画まで様々な映像作品に関係しています。
そんなポニーキャニオンの大本は1955年にニッポン放送の関係会社として設立された「株式会社ニッポン放送事業社」です。1966年には当時車の中で曲を聴くソフトとしてカセットテープの流行を見越し、その販売のために「株式会社ニッポン放送サービス」となり、1970年にはカセットテープやビデオの販売を担当する「株式会社ポニー」と社名を変更、はCDやレコードの販売を担当する「株式会社キャニオン・レコード」も設立されました。この時代のヒット曲といえば1975年にリリースされたフジテレビ系列の子供向け番組「ひらけ!ポンキッキ」の番組内で流された、子門真人の「およげ!たいやきくん」です。この曲はオリコン調べで450万枚、現在に至るまで日本で最も売れたシングル曲となり、当時日本コロムビア一強だった子供向け楽曲の世界を崩すと共に、業界全体のキャパを広げる事となったほか、一般社会でもたい焼きが爆発的に売れる等の現象を起こし、この楽曲の印税で新社屋が建てられるほどでした。
こういったヒットの中1987年にポニーはキャニオン・レコードを吸収合併し「株式会社ポニーキャニオン」が設立しました。その後のフジサンケイグループの再編等の結果、現在ではフジサンケイグループを統括するフジ・メディア・ホールディングスの完全子会社となっています。
こういった経緯によりポニーキャニオンはアニメにおいてもフジテレビ作品との関係が非常に強く、「らんま1/2」「キテレツ大百科」「Dr.スランプ」「タッチ」「ドラゴンボール」といったフジテレビ系列で放送されたアニメの製作にも大きく関わっています。同じくフジテレビ系列で放送された「北斗の拳」の主題歌であるクリスタルキングの「愛をとりもどせ!!」のようにポニーキャニオンのアーティストが主題歌を担当する事も多くあります。
フジテレビ専門の製作会社というわけでも無く、NHKの「忍たま乱太郎」、TBSの「けいおん!」、MBSの「進撃の巨人」、テレビ東京の「ダイヤのA」といった様々な放送局のアニメ制作に関わっており、特にTBS系列の作品は現在では多くがポニーキャニオン所属のアニソンアーティストが担当しています。
そんなポニーキャニオンですが専門のアニソンアーティストが多く現れ始めるのは2010年代からで、それ以前はアニメソング専門歌手は殆どいませんでした。そんな数少ない2000年代のアニソン歌手の一人が「下川みくに」です。ポニーキャニオンに所属していたアイドルグループ「チェキっ娘」のメンバーであり、解散後ソロの歌手として活動していた彼女はTVアニメ「幻想魔伝 最遊記」ED「Alone」で初のアニメ主題歌を担当、以後「フルメタル・パニック!」シリーズや「ドラゴンドライブ」、「キノの旅」シリーズ等の主題歌を担当、アニサマ初回にも唯一ポニーキャニオンから出演する等活動をし、現在も続いています。またシンガーソングライターの「奥華子」はアニメソングをあまり担当する事はありませんが2006年にアニメ映画「時をかける少女」の主題歌「ガーネット」をリリース、自身最大のヒット曲となり後に多くの声優にカバーされる事となります。長い間その他にアニメ主題歌を担当する事はありませんでしたが、2017年にはTVアニメ「セイレン」の主題歌「キミの花」を久しぶりに担当しました。
その他も2004年に「喜多村英梨」が「最初の」アーティストデビューをし「金色のガッシュベル」等の主題歌を担当しましたが活動は短期間に終わり、また子供向けアニメ「しゅごキャラ!」の主題歌をポニーキャニオンに所属するハロー!プロジェクト系列のアイドルグループ「Buono!」やこの作品から誕生した同じくハロプロ系アイドルグループ「しゅごキャラエッグ!」を担当する等ありましたが、00年代前半から中盤までのポニーキャニオンのアニメ主題歌はこういった昼間から夕方、子供向けアニメが中心でした。また深夜アニメに関してはランティスやビクター等他社が担当する事が主でした。また声優アーティストとしては加藤英美里がポニーキャニオンで音楽活動をしていましたが、アニメの主題歌を担当する事はありませんでした。
そんなポニーキャニオンが深夜アニメのアニメソングに本格的に参入するきっかけとなったのが2009年にアニメ化された「けいおん!」です。既に「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」を大ヒットさせ「フルメタル・パニック!」シリーズでポニーキャニオンとの繋がりのある京都アニメーションが製作を手掛けたこの作品は社会現象クラスの大ヒット作品となり、2010年に2期が、2011年には劇場版が製作されいずれも大ヒット、2009円には横浜アリーナで、2011年には当時としては異例であったさいたまスーパーアリーナで作品の単独イベントを開催する等歴史的ヒット作品となりました。
作品ユニット「放課後ティータイム」の主題歌やキャラクターソングも次々と大ヒットしました。特に主題歌は「Cagayake!GIRLS」「GO! GO! MANIAC」「NO,Thank You!」等のアニメ1期2期のOPED全6曲全てが13万枚を超えるヒットとなり、最大のヒット曲となった1期ED「Don't say "lazy"」は19万枚の大ヒット曲となりました。これは2000年代の声優ユニットのCD売り上げとしては最大のものとなります*1。
なおその後もポニーキャニオンは「中二病でも恋がしたい!」「Free!」「響け!ユーフォニアム」「小林さんちのメイドラゴン」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」等多くの京都アニメーション作品の製作を担当していますが主題歌関係は「たまごマーケット」等一部の作品のみとなります。
2010年代に入るとポニーキャニオンは個別のアニソンアーティストや作品ユニットに帆無くて気に力を入れ始めます。声優アーティストの実質的第一弾としてデビューしたのが「愛美」です。今では「アイドルマスターミリオンライブ!」や「Poppin’Party」で有名な彼女ですがそれ以前にソロアーティストとして活動していました。TVアニメ「アスタロッテのおもちゃ」OP「天使のCLOVER」でデビューしその後も「ベン・トー」「織田信奈の野望」等の主題歌を担当しました。2014年に実質的に個人のアーティスト活動は休止してしまいますが、ポニキャの声優アーティストの大きな一歩となりました。
「けいおん!」の出演声優からは2012年に「竹達彩奈」が、2013年には「日笠陽子」がデビューしました。竹達はデビュー後しばらくはアニメ主題歌を担当していませんでしたが2014年に自身も声優として出演したTVアニメ「デンキ街の本屋さん」OP「齧りかけの林檎」で初のアニメ主題歌を担当、その後「ランス・アンド・マスクス」や「だがしかし」等の作品に出演すると共に主題歌を担当しています。一方日笠は2013年にTVアニメ「進撃の巨人」ED「美しき残酷な世界」でデビューし「ダイヤのA」「Z/X IGNITION」といったアニメの主題歌を担当しましたが、こちらも2014年頃にアーティスト活動を実質休止してしまいます。
こういった声優アーティストの中で頭角を現したのが2013年にアーティストデビューした「三森すずこ」です。ソロデビュー当時既に「ミルキィホームズ」「ラブライブ!」等の作品で人気声優となり、作品ユニットとしても場数を踏んでいた三森はこの年ソロアーティスト活動を開始し「マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜」主題歌「ミライスタート」で初のアニメ主題歌を担当し、「アウトブレイク・カンパニー」や「まじもじるるも」等の作品で声優としてメインヒロインを、アーティストとしては「ユニバーページ」「せいいっぱい、つたえたい!」等の主題歌を担当しポニーキャニオンを代表するアーティストとなりました。
2014年には「内田真礼」と「遠藤ゆりか」がデビューしました。「さんかれあ」「中二病でも恋がしたい!」といった作品で人気新人声優となった内田は「悪魔のリドル」主題歌「創傷イノセンス」でデビュー、続く「俺、ツインテールになります。」OP「ギミー!レボリューション」のヒットにより人気アーティストとなる事となります。遠藤は元々2012年にポニーキャニオンが開催したオーディションのグランプリに選ばれ、昨年同じくグランプリとなった声優の高橋花林とのユニット「YURI*KARI」として2013年にアニメ「断裁分離のクライムエッジ」ED「君と二人」でデビュー、同年に声優デビューをすると共に14年には「Z/X IGNITION」ED「モノクロームオーバードライブ」でソロデビューしました。その後も「まじもじるるも」ED「ふたりのクロノスタシス」等の主題歌を担当していましたが2018年に残念ながら体調不良のため引退する事となりました。
一方作品ユニットとしては2011年に放送されたアニメ「ゆるゆり」からメインキャラクターを演じる声優4人によるユニット「七森中☆ごらく部」が誕生しました。アニメ作品としての「ゆるゆり」、主題歌「ゆりゆららららゆるゆり大事件」のヒットと合わせて活発に活動、作品のシリーズ化に合わせて現在に至るまで活動を続け2010年代の作品ユニットブームの走りとなりました。その他にも2012年の「キルミーベイベー」、2014年の「桜Trick」「結城友奈は勇者である」、2015年の「ローリング☆ガールズ」「えとたま」「SHOW BY ROCK!!」シリーズ等の作品で声優ユニットが主題歌を担当しています。また2015年にはKADOKAWAと共同でメディアミックス作品「Re:ステージ!」を開始する等しています。
一方で専業のアニソンシンガーとしては2016年にデビューし「迷家-マヨイガ-」「クロムクロ」等の作品の主題歌をしている「和島あみ」や現在は系列の「EXIT TUNES」に所属し「だがしかし」「つぐもも」等の作品を担当した「MICHI」等数えるほどのアーティストしかいません。
2014年にはポニーキャニオン所属の声優アーティストを集めて開催されたのがポニーキャニオン初のアニソンライブ「P's LIVE」が開催され、翌2015年には声優アーティストだけでなく「ごらく部」や「勇者部」等の作品ユニットを加えた出演者が出演、会場も横浜アリーナと規模を拡大した「P's LIVE! 02」が開催されました。
ここまで女性アーティストばかりですが、男性アーティストについても触れていきましょう。ポニーキャニオンの男性アーティストといえば「OxT」です。2013年、「けいおん!」の楽曲制作を担当した「Tom-H@ck」が漫画「ダイヤのA」の主題歌製作を担当する事となった際にボーカルのオーディションを開催し、選ばれたのがバンド「Sound Schedule」のボーカルでありソロアーティストとしても活動していた「大石昌良」でした。当初は「Tom-H@ck featuring 大石昌良」という名義で活動し「Go EXCEED!!」でデビュー、2015年に「OxT」に改名して正式なユニットとして活動を開始しました。これをきっかけに大石も「オーイシマサヨシ」としてアニソン歌手や楽曲提供者として活動を開始しましたが、オーイシのソロ活動やOxTの「ダイヤのA」以外の楽曲はメディアファクトリー(KADOKAWA)での活動が主であり、そちらについては別の項で触れていきます。しかし2018年にポニーキャニオンの製作作品であるアニメ「SSSS.GRIDMAN」のOP「UNION」を担当しオーイシも特撮ドラマ「ウルトラマンR/B」の主題歌「Hands」をポニーキャニオンからリリースしその後もポニーキャニオンのアニメ主題歌を担当する等ポニキャ内での活動も増えていきます。
そして忘れてはならないのは「Linked Horizon」です。ポニーキャニオンに所属する音楽ユニット「Sound Horizon」のタイアップ用名義であるこのユニットを有名にしたのは何といっても2013年に放送された同名の漫画のTVアニメ版である「進撃の巨人」です。同作品の大ヒットに伴い、主題歌「紅蓮の弓矢」「自由の翼」を収録した「自由への進撃」は26万枚の大ヒットとなりこの年への紅白歌合戦出演に出演するまでになりました。以後も同作品の劇場版や続編においても主題歌を担当する等深い関係にあります。
また「カブキブ!」「ニル・アドミラリの天秤」といった作品の主題歌を担当した「下野紘」や2019年に「真夜中のオカルト公務員」ED「約束のOverture」を担当する「土岐隼一」といった男性声優もポニーキャニオンに所属しています。男性の声優ユニットとしては「美男高校地球防衛部LOVE!」シリーズから生まれた「地球防衛部」等がいます。
近年では2016年に「ラブライブ!」等で知られる「久保ユリカ」がソロデビューし(2017~18年の一時期アーティスト活動を休止)、声優ユニット「ゆいかおり」として活動していた「石原夏織」が同ユニットの活動休止後2018年にソロデビューし、2019年には「鬼滅の刃」「まちカドまぞく」等に出演する人気若手女性声優である「鬼頭明里」がデビューする等新しいアーティストがデビューし、2016年には三森すずこがポニーキャニオンの女性声優アーティストでは初となる日本武道館単独公演を、2017年には内田真礼が代々木第一体育館で、19年には武道館で単独公演を行うなど大規模ライブを行うアーティストも増えています。
また2018年にはブシロードによる「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のアニメ版の製作や主題歌を担当しています。前出の愛美や三森がブシロード系列の事務所に所属する等、ポニーキャニオンとブシロードは深い関係にあるのですが、これについてはブシロードの項で触れていきます。
1-2:ポニーキャニオンのアニソンアーティスト
・下川みくに:05
・七森中☆ごらく部:11、12、13、15
・あいう♥らぶ:13
・竹達彩奈:13、16、18
・日笠陽子:13
※現在事実上アーティスト活動を行わず
・三森すずこ:14、16、17、18、19
※18年はソロ及び他作品ユニットで3日間全出演
・内田真礼:15、16、17、18、19
・SHOW BY ROCK!!:16、【20】
※16年は「プラズマジカ(SHOW BY ROCK!!)」名義で1ユニットが出演、20年は「SHOW BY ROCK!!」名義で5ユニットから全メンバー及び一部メンバーが出演。
・MICHI:16
・地球防衛部:16
・奥華子:17
・スタァライト九九組:18、19、【20】
※ブシロードのコンテンツであるが、アニメ関係の楽曲はポニーキャニオンなのでこちらに記す
・石原夏織:19
・放課後ティータイム:19
※シークレット出演
・ AiRBLUE:【20】
・鬼頭明里:【20】
・えりぴよ&舞菜 from 推し武道:【20】
2-1:メディアファクトリー(KADOKAWA)とアニメソングの歴史
メディアファクトリーは人材派遣で(色んな意味で)有名な株式会社リクルートの書籍部門が1986年に株式会社リクルート出版として独立した事が始まりであり、1991年に「株式会社メディアファクトリー」と改名しました。
独立していた会社の時代の主なアニメやゲームに関わる事業と言えば、ポケットモンスターシリーズへの参加です。任天堂のゲームであった「ポケットモンスター」がアニメやカードゲーム等のメディアミックス化される際に多くの事業を担当、関係書籍やポケモンカードゲーム、アニメの楽曲等を担当しました。
中でも楽曲については1997年のアニメ化と同時に独自のレーベル「ピカチュウレコード」を設立しCDや映像作品等の販売を行い、ポケモンのアニメの主題歌のほぼ全てを担当しました。特に主人公のサトシを演じる「松本梨香」が歌う「ライバル」「OK!」「ベストウィッシュ!」等の主題歌は次々とヒット、特に初代OPである「めざせポケモンマスター」は100万枚を超えるミリオンヒット曲となり、現在でも声優の歌うアニメソングとしては最大のヒット曲です。
他にも出版業出身という事で独自のライトノベルレーベル「MF文庫J」(元々翻訳作品中心の小説レーベル「MF文庫」があり、そのサブレーベルとして名前にJapanとJuvenileから「J」の文字を加えた)を2002年に創刊、ここからはアニメ化された人気作品として「ゼロの使い魔」「けんぷファー」「インフィニット・ストラトス」「緋弾のアリア」「ノーゲーム・ノーライフ」「Re:ゼロから始める異世界生活」等があります。
また漫画雑誌としては「ふたつのスピカ」等の作品がある「コミックフラッパー」、「のんのんびより」等の作品を連載する「コミックアライブ」、他にも「コミックジーン」「コミックキューン」等があります。
そんなメディアファクトリーは2001年に角川グループ(現:KADOKAWA)が買収、子会社化され2013年には「株式会社KADOKAWA メディアファクトリー」となり、それまでメディアファクトリーが持っていた映像・グッズ販売もKADOKAWAが持っていたものに一本化され、これ以降メディアファクトリーはブランド名としてのみ残り、それもまただんだんと廃止されています。このためこの文中でも以後は「KADOKAWA」」として記載します。
またこの合併の前後にメディアファクトリー内でポケモン関係の仕事をしていた一部社員は独立、ポケモン関係のプロデュースやグッズの担当をしていた「株式会社ポケモン」の出資を受け「株式会社オーバーラップ」を設立しポケモン関係の書籍の発行を引き継ぎ、また「インフィニット・ストラトス」等MF文庫Jの一部引継ぎ作品や「灰と幻想のグリムガル」等新規作品による「オーバーラップ文庫」を創刊する等の活動をしています。またポケモン関係の楽曲はソニー系列のアーティストが担当するようになりました。2017年にリリースされた「めざせポケモンマスター」の新規verもソニー系列からリリースされています。
メディアファクトリー(KADOKAWA)の過去の所属者としては前出の「松本梨香」やポケモン関係のCDをリリースしていた「田村直美」、声優として「バカとテストと召喚獣」「ひだまりスケッチ」シリーズなどに出演すると共に「機巧少女は傷つかない」「精霊使いの剣舞」「魔弾の王と戦姫」等のMF文庫J作品原作、「アルカナ・ファミリア」「閃乱カグラ」等のゲーム原作の作品の主題歌を担当していた「原田ひとみ」がいます。
現在のKADOKAWA所属者の代表が「鈴木このみ」です。彼女は2011年に第5回全日本アニソングランプリでグランプリを獲得、翌12年にTVアニメ「黄昏乙女×アムネジア」OP「CHOIR JAIL」でデビュー、当時まだ15歳の若さながら高い歌唱力で話題となりました。「さくら荘のペットな彼女」ED「DAYS of DASH」や曲名と同じ名の漫画とそのアニメ化のOP「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」等を担当しましたが、特にその名を高めたのがMF文庫Jの作品のアニメ化である「ノーゲーム・ノーライフ」のOP「This game」です。このアニメ自体のヒットも後押ししこの曲は2万枚とそれまでの鈴木の売り上げの倍近いセールスを記録、彼女の代表曲となりました。また2017年の同作品の映画化の際にも主題歌「THERE IS A REASON」を担当しています。
その後も「アブソリュート・デュオ」OP「Absolute Soul」や「Re:ゼロから始める異世界生活」OP「Redo」等MF文庫Jの作品主題歌を中心として活動する一方、2016年には所属事務所をKADOKAWAからMAGES..系列のアミュレートに移籍し、2018年にはレーベルも同じくMAGES.5pb.に移籍、また同社原作のTVアニメ「LOST SONG」の主演声優と主題歌「歌えばそこに君がいるから」を担当する等しました。(現在ではレーベルはKADOKAWAに再移籍、所属事務所はサイバーエージェントグループのDigital Double)これはMAGES.とメディアファクトリー(KADOKAWA)との関係によるものですが、これについては5pb.の項で触れます。
2014年にKADOKAWAで「デビュー」したのがポニーキャニオンの項で名前が出ました「オーイシマサヨシ」です。既にバンドやソロでの活動を経て14年目となっていた大石は「ダイヤのA」の仕事をきっかけにアニメ関係の仕事が増えてきた事を受け名前をカタカナ表記した「オーイシマサヨシ」としてアニメ関係の仕事を本格化させ、2014年6月、「月刊少女野崎くん」のOP「君じゃなきゃダメみたい」でアニソンアーティストとして本格的にデビュー、18年には同スタッフによるアニメ「多田くんは恋をしない」OP「オトモダチフィルム」をリリースしました。オーイシとTom-H@ckによる「OxT」も2015年にTVアニメ「オーバーロード」OP 「Clattanoia」でKADOKAWAでの活動を開始、「オーバーロード」シリーズや「プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ」「ハンドシェイカー」等の作品を担当しています。
同じく「オーバーロード」でデビューしたのがTom-H@ckによる音楽ユニット「MYTH & ROID」です。同作品のED「L.L.L.」でデビューし、以後「オーバーロード」シリーズや「Re:ゼロから始める異世界生活」「幼女戦記」等のKADOKAWA系列を中心として多くのアニメ作品の主題歌を担当しています。
他に近年デビューしたアーティストとしては「やがて君になる」「彼方のアストラ」等の主題歌を担当する「安月名莉子」、「魔法少女特殊戦あすか」「彼方のアストラ」等の主題歌を担当する「nonoc」らがいます。
そんなKADOKAWAは独自のアーティスト数こそ少ないですが、多くのコンテンツを持っています。2016年に開催されたKADOKAWA作品のアニソンフェス「かどみゅ!」では鈴木このみやオーイシ、OxT、MYTH & ROID、原田ひとみといった自社レーベルのアーティストだけでなくランティスの茅原実里、日本コロムビアの石田燿子やMachico、フライングドッグの野水いのりや西沢幸奏、5pb.のいとうかなこといった様々なレーベルからのアーティストが参加しました。この幅広いタイアップを自社のアーティストに任せられる所がKADOKAWAの強さなのか漏れません。
2-2:メディアファクトリーのアニソンアーティスト
・鈴木このみ:12、13、14、15、16、17、18、19、【20】
※18~19年の楽曲の一部は5pb.系列
・艦隊これくしょん -艦これ-:14
※TVアニメ版の楽曲はビクター系列からリリース
・オーイシマサヨシ15、18,19、【20】
※一部楽曲はポニーキャニオンからリリース、20年のテーマソング制作を担当。
・OxT:15、16、17、18、19
※一部楽曲はポニーキャニオンからリリース
・松本梨香:16:詳細は4-2:トリ担当アーティストその1(2005~12)参照
・MYTH & ROID:18
3-1:5pb.(MAGES.)とアニメソングの歴史
アニサマに参加するアニソンレーベルは数多くあれど、アニサマ運営そのものを行っているのは「5pb.(MAGES.)」だけです。5pb.株式会社は2005年にアニメ・ゲーム音楽制作会社のサイトロン・デジタルコンテンツ株式会社から、取締役兼音楽プロデューサーであった志倉千代丸が独立し社長に就任して成立しました。ちなみにサイトロンは翌年それ以前からグループ会社入りしていたハピネットに事業を移行しハピネット音楽企画部となりました。独立直後の5pb.は映像・広告制作会社の株式会社ティー・ワイ・オー(TYO)のグループ会社でありましたが2009年にはTYOが志倉に保有する5pb.の全株式を安価で売却、独立した会社となりました。
その後5pb.は2010年に文化放送とドワンゴの合弁会社でありアニサマの運営を文化放送と共同で担当する「AG-ONE」に一部株式を譲渡しその親会社であるドワンゴのグループとなりました。1-2:アニサマ2008~2012の概要でも触れましたがAG-ONEはドワンゴと文化放送の合弁会社であり、さらにドワンゴからアニサマ運営を移管された子会社のDPDを吸収合併していました。さらに2011年にはAG-ONEが5pb.を吸収合併し「株式会社MAGES.」が誕生する事となりました。これにより5pb.(MAGES.)はアニサマの参加レーベルとしてだけではなく、アニサマ運営にも大きく関わる事となります。
MAGES.は5pb.時代から引き続き志倉が社長となり、AG-ONEの社長だった中西孝が袱紗長となりました。その後MAGES.は2013年にAG-ONE時代からの文化放送の株をドワンゴが購入した事によりドワンゴの完全子会社となり、さらに2014年にドワンゴがKADOKAWAグループに入る事により同時にKADOKAWAグループの一員となりました。このころ中西が副社長を退任し、代わってアニサマのエグゼクティブプロデューサーを設立から務めている太田豊紀が就任、2015年には志倉が会長、太田が社長に昇格しました。
しかし2019年に志倉が全株式をドワンゴから購入、アニサマ運営事業はドワンゴに分割される事によりMAGES.はアニサマ運営から退く事となり、太田もまたMAGES.から離任し志倉が社長、中西が特別顧問という形となりました*2。ただし後援にもレーベルのMAGES.として名前があります。さらに2020年に「白猫プロジェクト」等のオンラインゲーム・ソーシャルゲームを手掛けるコロプラが全株式を取得、子会社となりました。
そんな5pb.(ここからはMAGES.時代を含めてブランドとして継続している5pb.の名前で記載します)の主な事業はゲーム制作と音楽レーベルです。ゲームレーベル「5pb.Games」*3の作品には権利を引き継いだ美少女ゲーム「Memories Off」シリーズやホラーゲーム「コープスパーティー」等がありますが看板作品と言えば「科学アドベンチャーシリーズ」とされる一連のシリーズ作品です。志倉自身が企画・原作を担当しニトロプラスと共同で製作したこのシリーズは2008年の第一作「CHAOS;HEAD」から始まりました。当初はシリーズ化する予定はありませんでしたが、世界観を引き継いだ第二作「STEINS;GATE」の製作から本格的にシリーズ化が始まり、「ROBOTICS;NOTES」「CHAOS;CHILD」と続いていく事となります。このシリーズは全てがアニメ化されており、特に「STEINS;GATE」はゲームだけでなくアニメもヒットし同社の代表作となっています。
また変わり種の作品としてはアニサマ出演時に志倉と意気投合した西川貴教との共同アイドルプロジェクト「B-PROJECT」があり、アニメ、ゲーム、漫画、舞台等幅広く展開しています。
音楽レーベル「5pb.Records」*4所属のアーティストの多くは同社関係の作品の主題歌を担当する事が多いのですが、それ以外の作品の主題歌も担当します。特徴としては社長(一時期会長)である志倉がミュージシャンや音楽活動をしている事もあり所属アーティストに楽曲の提供をすることが多い点があります。
5pb.の代表的なアーティストが「いとうかなこ」です。いとうは5pb.成立以前からアーティストとして「鬼哭街」「沙耶の唄」「機神飛翔デモンベイン」等ニトロプラスのゲームの主題歌を担当し、成立後は「Myself ; Yourself」「破天荒遊戯」といったゲームや「ひぐらしのなく頃に」シリーズのゲーム移植版主題歌を担当していました。5pb.作品としては「CHAOS;HEAD」のゲーム版主題歌を担当し、アニメ化においても主題歌を担当しました。その後も科学アドベンチャーシリーズには全ての作品に関わりますが、何と言っても「STEINS;GATE」の主題歌であるゲーム版OP「スカイクラッドの観測者」、アニメ版OP「Hacking to the Gate」が有名です。特に「Hacking to the Gate」は2万枚近い自身最大のヒット曲であり、アニサマでも複数回歌唱されている代表曲となりました。
同じく科学アドベンチャーシリーズで主題歌を担当しているのがパワフルなボーカルが売りのガールズバンド「Zwei」です。シリーズ第三作「ROBOTICS;NOTES」のゲーム版OP「拡張プレイス」、アニメ版OP「純情スペクトラ」や「STEINS;GATE 0」等の主題歌を担当し、他にも「Memories Off」「うみねこのなく頃に」等のゲーム、他社作品ではアニメ「テラフォーマーズ リベンジ」等の主題歌を担当しています。
サイトロン時代から志倉から楽曲提供を受けているなど縁が深い所属者であるのが「彩音」です。「11 eyes」シリーズや「ウミショー」、「ひぐらしのなく頃に」といったゲーム、アニメの主題歌を担当しています。
5pb.の声優アーティストとして有名なのが「今井麻美」です。声優としても「アイドルマスター」シリーズへの出演などで知られ5pb.関係作品では「STEINS;GATE」「コープスパーティー」等に出演していますが、「STEINS;GATE」のゲーム版発売と同時期の2009年にアーティストデビューをし「にゃんこい」「プラスティック・メモリーズ」等の主題歌を担当、「シュタインズ・ゲート ゼロ」*5ED「World-Line」では初となる自身出演作品の主題歌を担当しています。
注目の若手アーティストといえば「亜咲花」です。2016年に17歳の若さでアニメ「オカルティック・ナイン」ED「Open your eyes」でデビューし、「ゆるキャン△」OP「SHINY DAYS」が1万枚のスマッシュヒットとなり一躍名を挙げる事となります。現在21歳の若さながら高い歌唱力に定評があり、今後も注目のアーティストと言えます。
他にもLiSAと共にGirls Dead Monsterのメンバーとして活動後ソロデビューしゲームソングを中心に活動するmarina、「プラスティック・メモリーズ」「ゆるキャン△」等の主題歌を担当し楽曲提供なども行う「佐々木恵梨」等がいます。
また過去の所属者としては志倉と桃井はるこの共同プロデュースによるアイドルユニット「アフィリア・サーガ」*6、メディアファクトリーの項でも説明しました「鈴木このみ」、長年ゲーム主題歌や他レーベルで活動し5pb.では「PRISM ARK」「かのこん」といったアニメの主題歌を担当し、現在でもキャラクターソングなどで関わっている「榊原ゆい」等がいます。
そして近年加わった人気アーティストが「田村ゆかり」です。長年キングレコードで活動してきました彼女ですが、2016年にキングとの契約終了後に17年に5pb.内のプライベートレーベル「Cana aria」を立ち上げアーティスト活動を再開します。移籍後のアニメ主題歌は自身が出演する「ISLAND」OP「永遠のひとつ」などごくわずかですがその盛り上がりと人気は健在です。なお田村は声優としてもMAGES.内のタレント事業部「アミュレート」に所属を移しています。
こういったアーティストを擁する5pb.は自社単独のアニソンフェス「Live5pb.」を2008年から2016年までほぼ毎年開催しています。ほぼ毎年という周期の速さや2008年という昨今のアニソンフェスのなかでも比較的初期に開催されたという先進的なフェスであり、2017年以降も後継的イベントである志倉主催の作品フェス「CHIYO-ST. LIVE 2017 -GENESIS-」や「科学アドベンチャーライブ2018」「科学ADVライブ S;G 1010th ANNIVERSARY*7」が毎年開催されています。
なおMAGES.は2019年にドワンゴから独立した際に5pb.のブランド名を順次廃止しMAGES.へ統一していく事を発表しました。2020年のアニサマ公演レーベルも5pb.ではなくMAGES.の名義になっています。メディアファクトリーと同様にだんだんとその名を目にする事も少なくなっていくのかもしれません。
3-2:5pbのアニソンアーティスト
・いとうかなこ:09、10、11、12、13、14、15、18
※10~11年はいとうかなこ + 志倉千代丸名義、12年はいとうかなこ×志倉千代丸-科学アドベンチャーユニット-名義
・榊原ゆい:09
※現在は所属していないが5pb.との縁は切れておらず下記のキャラクターソング等で活動
・ファンタズム(FES cv.榊原ゆい):11
※キャラクターソング、メディアファクトリーからのリリースであるが、5pb.系列の楽曲であるのでこちらに記す
・アフィリア・サーガ:12、13、14
※12年はアフィリア・サーガ・イースト名義、現在は「純情のアフィリア」と改名して系列のアイドル専門レーベル「Stand-Up! Records」に所属
・Zwei:12、13、16、18
・今井麻美:15、19
・佐々木恵梨:15
※シークレット出演
・つん♡へご:15
※メンバーである新田恵海と大橋彩香はそれぞれソロアーティストとして出演しているが別名義でのシークレット出演
・田村ゆかり:詳細は4-2:トリ担当アーティストその1(2005~12)参照
・B-PROJECT:17
※アニメ関係楽曲はソニー系列からのリリースであるが歌唱せず
・亜咲花:18、19、【20】
4-1:ブシロードとアニメソングの歴史
アニサマに参加しているアニソンレーベルの中で最も歴史が新しいのが「ブシロードミュージック(旧響ミュージック)」です。まずはブシロードミュージックの親会社である、ブシロードとその創設者にして現ブシロードミュージック会長である木谷高明について見ていきましょう。
アニサマ運営同様ネット上において賛否多いアニメ関係者の一人であり、一部では蛇蝎の如く嫌われている(俺はこの一部じゃねーよ!)木谷は1994年、イベント運営会社「ブロッコリー」を設立、拡大していくと共にキャラクターグッズショップ「ゲーマーズ」やキャラクタービジネス事業にも乗り出し「デ・ジ・キャラット」や「ギャラクシーエンジェル」等の作品をヒットさせます。その中でトレーディングカード事業が大きな利益を上げていた事や、自社のコンテンツで新人声優をデビューさせ育成していく手法は後のブシロードと共通する所があります。特にブロッコリー作品でデビューした声優はデ・ジ・キャラットの真田アサミや沢城みゆき、「ギャラクシーエンジェル」の新谷良子や後藤沙緒里、「G.G.F」*8の井口裕香、阿澄佳奈といった現在でも活躍する人気声優が多くいます。
しかし急激な店舗や事業の拡大、売れ行き予想の外れによる在庫の増加による負担は赤字を増価させ業績が悪化、2003年にはタカラの*9、続いて2005年にはオンラインゲーム事業を行うガンホーの子会社となり木谷も社長を辞任、2007年の黒字回復後に木谷はブロッコリーを退社します。なおブロッコリーは「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズや株主であるガンボーの「パズル&ドラゴンズ」のヒットにより復活を遂げますが、これはまた別の話です。
こうしてブロッコリーを退社した木谷は同年に新会社、「ブシロード」を設立します。この社名はブロッコリー時代にメディアミックス作品として手掛けていたがアニメが未完成のままであった作品「熱風海陸ブシロード」からであり、企画の主要参加者であり当時既に故人であった吉田直の遺族から許諾を得た上で名づけ、社名に当時のタイトルロゴをそのまま使用していた事からその力の入れようが伺えます。
ブシロードの設立時の主要コンテンツはブロッコリー時代と同じくトレーディングカードでした。特に設立したその年にスタートしたトレーディングカードゲーム「ヴァイスシュヴァルツ」は様々な人気コンテンツがカードとしてクロスオーバーする作品であり、3年間で2億枚を生産する大ヒットコンテンツとなりました。2009年に入るとグループ会社として株式会社響を設立、関係書籍の出版、ネットラジオ「響 - HiBiKi Radio Station -」の運営、声優事務所「響」の運営などを行う事となります。なお以後「響」と表記する場合は注釈や説明がない場合この声優事務所としての「響」についての表記となります。*10
この「響」の所属声優にはそれ以前からブシロード関係イベントの司会等をしていた「橘田いずみ」、橘田と同じ声優育成学校に所属していた「徳井青空」※2018年4月にエイベックス・ピクチャーズに移籍、舞台女優として活動していた所を木谷が見に来ていた事をきっかけに声優となった「三森すずこ」*11、後述の「ミルキィホームズ」のオーディションで合格した「佐々木未来」、同オーディションで準優勝となった「寺川愛美」といった面子がおり、ブシロード関係作品の中核を担う事となります。
その第一弾が2009年に開始したプロジェクト「Project MILKY HOLMES」から誕生した声優ユニット「ミルキィホームズ」です。「ギャラクシーエンジェル」のようにメディアミックス作品として始まった作品から誕生したこの声優ユニットは三森すずこ、徳井青空、橘田いずみ、佐々木未来の響所属声優からなり、2010年にアニメ、漫画、CD、ラジオ等の作品展開が本格的に開始されると活動を活発化、2010年のアニサマ出演やアニメのヒットをきっかけに人気声優ユニットへの道を進む事となります。声優ユニットとしては2012年の日本武道館単独公演を初めとして毎年ホールクラスの会場でライブをしアニサマやANIMAX MUSIX等のフェスへの出演、アニメもシリーズ4作、単独特番4作、劇場版1作が製作され、様々な作品とのコラボを実施する等活発な活動を行いました。またシリーズ3作「ふたりはミルキィホームズ」では寺川愛美と、同じく響に所属する「伊藤彩沙」による姉妹ユニット「フェザーズ」も誕生しました。
残念ながら2019年をもって「Project MILKY HOLMES」は終結し同年1月の武道館ファイナル公演をもって声優ユニットとしてのミルキィホームズは解散となりましたが、2010年代の声優ユニットブームの嚆矢として、そして代表的な存在としての活動はアニメ業界に大きな影響を与えました。ミルキィホームズの声優はその後もブシロード関係作品を初めとした多くの作品に出演し、特に主演であった三森すずこは大人気声優への道を歩む事となります。
2010年にはカードゲーム「カードファイト!! ヴァンガード」のプロジェクトが開始され2011年にカードの発売と共にアニメ放送が開始されました。この作品もカードゲームとアニメだけでなくTVゲーム、ソーシャルゲーム、実写化、舞台化などのメディアミックス展開を広げ、金を刷るようにカードを刷るとまで言われるほどの大ヒット作品となり、現在に至るまでシリーズ作品は放送が継続され「遊戯王」「デュエル・マスターズ」「バトルスピリッツ」等の他社のカードアニメと肩を並べる事となります。またこの作品にも三森すずこや橘田いずみ、森嶋秀太、寺川愛美といった響所属の声優が多く出演する事となります。他にも2013年の「フューチャーカード バディファイト」、2016年の「ラクエンロジック」等の様々なカードゲーム作品を発表、アニメ化を初めとするメディアミックス展開を行っています。
また2012年には元々プロレスファンである木谷が新日本プロレスを買収、経営・運営に乗り出すと共にプロレスを題材にした作品や自社の他作品とのコラボレーション企画を盛んに開催する等アニメ関係に留まらない活動を行っています。そして2013年末には社名の由来となった「熱風海陸ブシロード」のアニメ化をついに成し遂げる事となりました。
こういったブシロード作品は当初他社のアーティストに楽曲を担当していました。ヴァンガードの主題歌アーティストはJAM Projectや麻生夏子、佐咲紗花といったランティス所属のアーティストであり、ミルキィホームズも初期の楽曲はランティスからリリースしていました。
しかし2012年10月に独自の音楽レーベル「響ミュージック」をブシロードの子会社として設立、さらに2014年には「ブシロードミュージック」と名を改め自社作品のアーティスト楽曲をこちらからリリースする事となります。またサイキックラバーやSuara等主に他社で活動するアーティストでもブシロード関係作品のCDはこちらからリリースをする事が多くあります。ちなみに木谷社長は2017年にブシロード本社の社長を退任すると自ら恩典つつくりの最前線に立つとしてブシロードミュージックの社長に就任しました。よく間違えられますが、現在木谷はブシロード本社の社長ではありません。
ただしブシロード関係の主題歌が響・ブシロードミュージックのアーティストというわけでは無く「ヴァンガード」の第二シリーズである「カードファイト!! ヴァンガードG」では声優としても出演している宮野真守や小倉唯が、「バディファイト」ではfripSideや蒼井翔太といったキングレコードやNBCのアーティストが主題歌を担当する事もあります。
ちなみに設立から翌年までの短期間、響ミュージックの作品はポニーキャニオンに販売を委託していましたが2014年頃から自社流通をメインとしております。しかしミルキィホームズ作品はプロジェクト終了まで販売を行い、また後述の「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のアニメ関係楽曲はポニーキャニオンからリリースされています。またポニーキャニオンの項でも触れたように「響」所属の寺川愛美は「愛美」名義で2011年から14年までアーティスト活動を行い*12、三森すずこも2013年からポニーキャニオンでアーティスト活動を開始し、個人名義でヴァンガードの劇場版アニメの主題歌を担当する等、ブシロードはポニーキャニオンと深い関係が続いています。
またランティスについても「ラブライブ!」のソーシャルゲーム「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル」の運営をブシロード系列のゲームブランド「ブシモ」が配信し、「アイドルマスターミリオンライブ」に愛美が声優として出演する等協力関係は続いています。※アイドルマスターシリーズにおいては設立初期から現在に至るまでライブの協賛企業に名を連ねています。特にミリオンへの愛美の出演は次のプロジェクトに大きな影響を与える事となります。
そのプロジェクトこそ2015年から始まった「BanG Dream!」(バンドリ)です。ガールズバンドのキャラクターコンテンツであるこのプロジェクトが誕生したのは2014年2月に開催されたアイドルマスターシリーズの合同ライブ「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!! 2014」がきっかけでした。このライブに出演した愛美がギターによる生演奏を披露、好評を博した事をこのライブを見たブシロード社員が木谷に話し彼女によるバンドのアイデアを話した所、音楽を主体にした新プロジェクトを考えていた木谷はこれを採用、「キャラクターを演じる声優によるリアルバンド」というコンセプトのコンテンツがスタートする事となります。
「BanG Dream!」プロジェクトは他のメディアミックス作品と同様にアニメ、漫画、ゲーム、CD、リアルライブ等々の各方面での活動がありますが、このコンテンツの特徴としては2020年現在で登場する7バンドの内4バンドが実際に楽器を演奏するリアルバンドとしての活動を行っている点があります。他には楽曲制声優が作を水樹奈々や宮野真守等への楽曲制作で知られる「Elements Garden」がほぼ全ての楽曲制作を担当、またアニメソングやボーカロイド楽曲を中心とする様々な曲をカバーするという点があり、これが大きな人気を博す事となります。
「BanG Dream!」プロジェクトのメインバンドであり、愛美がギター&ボーカルを担当するバンド「Poppin'Party」は愛美の他にキーボード担当としてフェザーズから共演しており楽器は初挑戦となる伊東彩紗、リードギター担当として以前から音楽活動を行っており声優としては初挑戦となる大塚紗英、ベース担当としてフェザーズのオーディションを受けた経験がありまた音楽経験もある西本りみ、ドラム担当としては既に当時人気声優でありドラムを趣味としていた大橋彩香の計5人がキャスティングされ、2015年のプロジェクト開始初期にはイベントごとにメンバーが発表されるという形式が取られていました。
2016年2月の1stシングル「Yes! BanG Dream!」発売から正式にデビューし、同年4月に1stライブを開催、12月に発売された3rdシングルが初のオリコントップ10入りをし、2017年冬にはアニメ1期が放送され同年8月には4thライブを日本武道館で開催しました。デビューから1年半という速さは、ガールズバンドの日本武道館単独公演としては最速のものとなります。
同じくリアルバンドとして活動する「Roselia」は2017年2月にPoppin'Partyの3rdライブのシークレット出演から本格的に活動を開始し4月にリリースされた1stシングルはデビュー曲にして当時のバンドリ楽曲でオリコン最高位となる週間7位を獲得し、有明コロシアムや幕張メッセ等の大規模会場でのライブ開催やFNS歌謡祭への出演など活発な活動を行っています。
2018年から活動を開始したのが「RAISE A SUILEN」です。元々バンドリには声優が実際に演奏も行うリアルバンドだけでなく、声優が歌唱のみを担当し演奏をしないバンドもいます。そういったバンドの声優がイベントに出演し歌唱する際に結成されたバックバンド「THE THIRD(仮)」が元となり、後に独立したバンドとして「RAISE A SUILEN」と改名、2018年12月の初の単独ライブでキャラクターとしてのバンドリプロジェクトへの参加が発表されました。
こういったライブ活動や2017年3月にリリースされたアプリ「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」のヒット、2019年冬に放送されたアニメ2期等コンテンツ全体の盛り上がりの中、2019年には上記3バンドによる日本武道館3days公演、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「COUNTDOWN JAPAN」等国内のロックフェス出演等を達成し、2018年にはブシロードで最も利益を出すコンテンツとなりました。アニメ3期が放送された2020年冬、1月8日には音楽関係作品の出荷累計が200万枚を突破、同日に発売されたPoppin'PartyのⅠ5thシングルであるアニメ3期主題歌「イニシャル/夢を撃ち抜く瞬間に!」がプロジェクト初となるオリコン週間ランキングを獲得する等、プロジェクトスタートからわずか5年で他社の大規模コンテンツと肩を並べるまでになりました。
また2020年には第4のリアルバンドである「Morfonica」が活動を開始し、また2018年に世界観を別としながら同じくバンドリの名を冠する男性バンドプロジェクト「ARGONAVIS from BanG Dream!」がスタート、2020年にはアニメ放送も開始される等、さらなる世界観の広がりを見せています。
バンドリに続いて声優がリアルで声の演技以外にも活動するというコンセプトで始めたのが2017年にスタートした「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」です。アニメや漫画を原作として舞台化する作品はこれまでも多くありましたが、この作品はミュージカルそのものが原作であり出演する声優がアニメの声だけでなく実際に俳優として舞台を演じるという点でそれまでの舞台とは異なります。出演声優も主人公を演じる小山百代、準主役である三森すずこを初め全員が舞台経験者である一方、この作品が声優初経験となる人も少なからずいます。同作品から誕生した声優ユニット「スタァライト九九組」は舞台とライブ双方をこなしステージのクオリティの高さやフェスへの出演、2018年のアニメのヒット等により評価を高め、2019年には横浜アリーナで単独公演を行うまでになりました。
他にも2019年にDJを題材としバンドリやスタァライトと同様に声優がDJをプレイする「D4DJ」のプロジェクトがスタート、既にアニメ化等のメディアミックスが決定しており、ブシロード初の企画以外でもフィギュア・ドールメーカーであるアゾンインターナショナルと創作集団acusによるメディアミックスプロジェクト「アサルトリリィ」の舞台版政策を担当、こちらも既に製作が決定されているアニメの出演声優がそのまま舞台を演じるという他のブシロード作品との共通点があります。
さて、これまで紹介したレーベルと同様にブシロードも自社フェスを行っています。2009年に「ブシロードカードゲームLIVE2009」として初回が開催されたこの自社フェスは、当初ブシロードが自社レーベルを持っていなかったため自社作品の主題歌を担当した他社のアーティストやカードゲームに参加・関係するコンテンツのアーティスト・作品ユニットが参加しており、JAM Project、アイドルマスター、μ's、KOTOKO、LiSAといった人気アーティストも出演した事があります。またミルキィホームズのオーディションもこのライブ内のイベントの1つとして開催され、結成後は毎回出演、司会を担当した年もありました。2014年に横浜アリーナで開催された「ミルキィホームズ&ブシロード7周年記念ライブ in 横浜アリーナ」からカードゲームの名がタイトルから無くなり、ブシロードミュージックのアーティストが中心となります。現在の所2017年7月の「ブシロードカードゲームライブ with 戦略発表会2017夏」を最後に開催されていませんが、今開催された場合ならば規模が拡大されることは間違いないでしょう。
4-2:ブシロードのアニソンアーティスト
・ミルキィホームズ:10、11、12、13、15、17、18
※10~12年まではランティス所属
・新田恵海:15
※2018年に契約が終了、現在は元ランティスに所属し「ミルキィホームズ」「ラブライブ!」を手掛けた木皿陽平の「ストレイキャッツ」に移籍
・Poppin’Party :16、18、19
※16年の出演時は「Poppin’Party from BanG Dream!」名義
・Roselia:17、19
※17年の出演時は「Roselia from BanG Dream!」名義、18年にメンバー2人が交代
・RAISE A SUILEN:19
・弦巻こころ&ミッシェル fromハロー、ハッピーワールド!:19
※シークレット出演、ユニット「ハロー、ハッピーワールド!」より伊藤美来(弦巻こころ役)及びミッシェル(CV:黒沢ともよ)が出演
・Peaky P-key from D4DJ:【20】
・Photon Maiden from D4DJ:【20】
・ARGONAVIS from BanG Dream!:【20】
・GYROAXIA:【20】
・Assault Lily [一柳隊]:【20】
5:アニサマにおける4社
今回は4社一挙に紹介してきましたが、ここでは1社ごとに関わりを見ていきます。
ポニーキャニオンはアニサマ初回の2005年から参加しているレーベルではありますが、それ以後2011年まで不参加が続いていました。そのため「アニサマとポニーキャニオンの間で問題が発生した」という噂が起き、瀬田Pが公式で否定する発言をした事まであります*13。しかし2011年以降レギュラーとしての参加が再び始まり、三森すずこや内田真礼のようにレギュラー陣としても数えられる出演者もいます。
メディアファクトリー(KADOKAWA)はレーベルとしてのアニサマとの関係は比較的遅く、出演アーティストも多くありません(そもそも所属アーティスト自体少ないのですが)しかしアニサマのレギュラー出演者であり今や重要なポジションを任せられる鈴木このみやOxTがおり、無視できない存在と言えます。
一方運営そのものに大きく関わっているのが5pb.(MAGES.)とブシロードです。MAGES.は2010年から18年までアニサマ運営の主体であり、アニサマに行ってMAGES.の名を見かけない事はありえないほどです。シュタゲ関係の曲を聴くのは夏の風物詩と言えるほどです。19年からレーベルの一つという形に戻りましたが、これからもアニサマの一角に存在する事は変わることは無いでしょう。
そしてブシロードも自社レーベル誕生前の2009年から特別協賛と言う形でグッズ販売やブースのイベント等でアニサマ運営に関わり、自社レーベル誕生後は次々と自社のコンテンツを送り出してきました。他のレーベルと異なるアーティストの独自性があるブシロードはアニサマに新たな要素を足してきた事は明らかです。
4社それぞれ形は違えど、アニサマの歴史を語る際には外すことが出来ないレーベルである事は疑いようがありません。
6:まとめ
今回の4社に通じるのは意外とアニメソングレーベルとしての歴史が新しいという事です。ポニーキャニオンそのものは古くからの歴史のあるレーベルですがアニソンレーベルとしての本格的指導は10年ほど、メディアファクトリーはポケモンを除けば本格的なレーベルとしての活動はこれまた10年ほど、5pb.は設立そのものが15年前、ブシロードは会社そのものは13年前、レーベルは7年前の設立です。しかしながらそれぞれのレーベルからの代表曲やアーティスト名を挙げれば、聞いたことがある人はけっこういるはずです。
そして互いにアーティストや企業運営で深い関係性があるのは、持ちつ持たれつという今のアニソン業界を感じさせる所があります。レーベル間の関係性という点に着目するのも、アニソンの楽しみ方の一つなのかもしれません。
・・・というわけで、レーベル紹介シリーズ第4弾は4レーベルを纏めてみました。前回3レーベルが語らなければならない事が多すぎて単独にしたのですが、決して個人的な思い入れの差があるわけではありません。「何かブシロードだけ分量が多くね?」と思う方がいるかもしれませんがまあ間違っていないのですが個人的な感情はないはずです、多分。もっと知識のある方がいれば濃い文章にできるのですが、こればかりは自分の力不足です、申し訳ありません。
それでは今回も読んでいただいてありがとうございました。次回も今回と同じく複数のレーベルを纏めて紹介したいと思います。よろしくお願い致します。
目次代わりの記事→Animelo Summer Live15年史勝手に分析 0
前のシリーズ初回の記事→1-1:アニサマ15年と2005~07の概要
このシリーズ初回の記事→2-1:アニサマ出演者音楽レーベルについてその1(ランティス)
前回の記事→2-3:アニサマ出演者音楽レーベルについてその3(ソニー)
次回の記事→2-5:アニサマ出演者音楽レーベルについてその5 (NBCユニバーサル、ワーナー、日本コロムビア、ユニバーサルミュージック)
次のシリーズ初回の記事→3-1:アニサマ主要パート担当アーティスト一覧と分析
*1:ver違いの累計売上としては「ハッピー☆マテリアル」と「もってけ!セーラーふく」に次ぐ3位
*2:2020年も「協賛」という形で参加し、他レーベルとは別の扱いになっています。
*3:旧「Five Games」
*4:旧「Five Records」
*5:アニメ版のタイトルはカタカナ表記
*6:「純情のアフィリア」に改名し同系列のアイドル専門レーベル「Stand-Up! Records」に移籍
*7:元々2019年10月に開催される予定だったが台風の影響で2020年1月に延期となりました。
*10:現在「株式会社響」は「株式会社ブシロードメディア」に改名、書籍出版関係業務が主となっており音楽・ネットラジオ・声優事業は後述の響ミュージック→ブシロードミュージックに、さらにラジオ・声優事業は株式会社響(二代目、初代の「響」が改名後に改めて設立した同名の事務所)→ブシロードムーブ(改名)に移譲された。
*11:なお三森の従妹であり様々なゲームや映画のプロデュースを手掛けていた黒川文雄はブシロード設立初期に副社長を務めていた
*12:2013年末に声優での活動名義も「愛美」で統一しました