一見野郎のこれは個人の感想です

こちらは私、一見野郎が周りに気を適当に使いつつアニメ・アニソン・読書等の雑談をするブログです。

LiSAは水樹奈々を超えたのか(後編)

一昨日の金スマ良かったですね!(挨拶)

アニソンアーティストについてあそこまで特集してくれるのは番組制作者よくぞやってくれたと思います。世のマスコミが全ての話題についてあそこまで丁寧に接してくれれば世の中はだいぶ良くなるでしょうに・・・

さてそれはそれとして前回の記事の続きです、よろしくお願いします。

 

 

1:水樹奈々の強さ

水樹奈々の大きな強さの一つに安定性があります。2011年から2013年の間、水樹奈々のCDシングル7枚は全て7万枚を超える売り上げを記録し、2015年まで全て5万枚を記録していました。さらにアルバムも3作連続で10万枚を超えており、その後もさらに3作連続で5万枚を超えています。多少の波はあれどここまで高い水準で安定した売り上げを保っているアーティストは他にいません。もちろん全ての曲が7万枚程度なわけではなく、10万枚を超えた「BRIGHT STREAM」や8万枚を超えた「SCARLET KNIGHT」「Vitalization」のようなさらに高い売り上げを記録した曲もありますし、表題曲がアニソンタイアップでない「POP MASTER」のような曲であっても7万枚を記録しています。

当然ながらアニソンアーティストにとってタイアップ曲か否か、さらにタイアップ作の人気によってCD売り上げは大きく左右されます。タイアップだけでなく声優個人の人気もセールスに左右する声優アーティストはまだ水準の高さ低さがあれど売り上げそのものは安定する傾向がありますが、タイアップ先の人気が大きく影響するアニソンシンガーは大きく売り上げが変化します。LiSAですら人気シリーズアニメとそれ以外の曲は倍以上差が開きます、というよりLiSAの場合売れる曲はとことん売れる為格差が凄い事になっています。前回の記事を見ればわかる通り上と下では10倍近い差があります。水樹を超えたと言われるためには「oath sign」「crossing field」のような8~9万枚クラスとまではいかずとも「Rising Hope」「ADAMAS」のように5万枚クラスの売り上げを毎回出す必要があります。

またライブの規模も水樹奈々の強さの一つです。西武ドーム公演を初開催した2009年以降、ほぼ毎年ドームかスタジアムクラスの会場でライブを開催しています。

2009:西武ドーム

2010:西武ドーム(2days)

2011:東京ドーム(2days)

2012:千葉マリンスタジアム

2013:西武ドーム

2014:横浜スタジアム

2015:西武ドーム(2days)

2016:東京ドーム(2days)+阪神甲子園球場

2018:西武ドーム

2019:千葉マリンスタジアム

2020:ナゴヤドーム(中止)

なおこの中に入っていない2017年もさいたまスーパーアリーナスタジアムモード(2days)とかなり大規模な会場でライブを開催しています。大規模コンテンツでない個人のアーティストとしては並ぶ者がいません。しかもツアーの地方公演においては大阪城ホール日本ガイシホールといった関西・東海地域、公演によっては九州を含めた地域でのアリーナ公演、地方の大ホールを併せて開催しています。この為水樹は茨城県を除く全国48の都道府県でライブ公演を開催した実績があります。LiSAもアニソンアーティストの中でも地方公演を多く行い、アリーナクラスの会場でのライブ経験も多いのですが回数や規模では流石に水樹には劣ります。本人も東京ドームやナゴヤドームでの単独公演を目指しており、そこが当面の目標と言う所です。

そして水樹奈々最大の武器はこういったCD売り上げやライブ動員、メディア出演等の積み重ねで作り上げた「存在感」「ネームバリュー」です。アニサマでは数多くの先輩アーティストがいる中で最も大規模な会場でのワンマン経験者として出演すれば常にトリを担当し、水樹がいてこそのアニサマ、という時代がしばらく続きました。だからこそ2012年に水樹奈々(とJAM Project)が出なかった時大きな騒ぎとなったのです。売り上げでもライブでも2000年代後半から10年代前半までは水樹が先導者として切り開く時代が続きました。オリコンチャートを塗り替え、ドームライブを成功させ、紅白に出演し・・・。

また水樹奈々本人が一般の音楽層に馴染みやすい人間であった事もプラスに作用しました。紅白歌合戦の6年出演と言う快挙もそうですが元々演歌歌手志望であった事もあり音楽番組では大御所・人気歌手と共演する機会を何度も得たことで一般層への知名度を広めていく事に成功しました。T.M.Revolutionとのコラボは本人がアニメファンであるという要素があるから別としても、Kinki Kids堂本剛とクラスメートだったエピソードやスガシカオとの交友からフェスに出演したエピソード等、J-POPや演歌歌手など幅広いアーティストとの交友が、一般層に水樹奈々という存在を広く広める事に貢献していきました。

2000年代からハルヒらきすたけいおん等少しずつアニメ作品が一般社会にも知られるようになり、アニメファンの数も今までと違う規模で増え、音楽番組でも少しずつ取り上げられるようになりましたが、水樹奈々の存在が無ければアニメソングがここまで一般的になる事はなかったでしょう。

そしてライブでのパフォーマンス。圧倒的なパワーを持つ歌声でドームを揺らしたと思えば心に染み渡るバラードで会場を一つし、SSAを端から端まで歌いながら全力疾走でき、客席の上をフライングで飛び回り、野外や屋根の無いスタジアムでは花火が打ちあがり、巨大なゴンドラに乗って何万人の間を駆けまわる。水樹奈々のライブはまるで遊園地のようなエンターテイメントに溢れています。これらの「楽しさ」と「強さ」を圧倒的な実力で併せ持ち、アニメソング界から一般社会にまで影響を及ぼした、これが水樹奈々の「強さ」なのです。

 

2:LiSAの強さ

ではLiSAの強みとは何でしょうか。まず第一に既にかなりの結果を出しながら将来の発展性がある事です。ガルデモ時代があったという事を差し引いてもLiSAのソロアーティストとしての経歴は10年にも至っていません。しかし早いうちに「Fate/Zero」と「ソードアート・オンライン」という2010年代を代表するアニメ主題歌の担当となることが出来、大ヒットを飛ばす事が出来ました。この二作品、FateシリーズとSAOシリーズは2010年代を代表するアニプレックスソニー)の作品、そしておそらく2020年代も続く作品となり、シリーズを通して多くのヒット作品とヒット曲を生む事が出来ました。そしてソニーそのものがアニメ業界においてその規模を急激に拡大し、ヒット作を次々と生み出す事に成功していきました。これに伴いソニー系列のアニソンアーティストのトップにいたLiSAはそのままアニソン界でもその地位を急激に上げていきました。しかしそれだけではここまでの人気が出た理由は説明できません。これらの作品の主題歌を担当したアーティストはLiSAだけではないからです。

第二の理由としてLiSAがアニメソングでは空いていた「ロック系女性アーティスト」のポジションを確保できた事です。もちろん女性アニソンアーティストはそれまでも多くおり、人気声優アーティストに負けない人気や歌唱力を持つ人たちが多くいました。しかしLiSAほどのわかりやすい「力強さ」が売りというアーティストはいなかったように感じます。(他のアーティストが力強くないという意味でも歌唱力でも劣るというわけではありません、間違いないように。)LiSAは「ロックヒロイン」と呼ばれる事が多くありますが、アイドル系でもアーティスト系でもない、「ロックヒロイン」としての立ち位置を獲得する事に成功し、それが発展するアニメソングの流れにマッチした、と言っても間違いではありません。

そして第三の理由がやはり「鬼滅の刃」というコンテンツと出会った事です。と言ってもLiSAが鬼滅頼りのアーティストという意味ではありません。「鬼滅の刃」のアニメ化自体がかなりの力を入れた、ヒットを目指した作品だった為です。既に「空の境界」「Fate」シリーズ等で次々とヒットを飛ばし、制作力に定評のある「ufotable」をアニメ制作に担当し、音楽制作の担当も椎名豪と梶浦由記という既にベテランの域に達した実力者を添えた事からもそのことがわかります。その主題歌を担当するのはソニーでも最も実力があり、そしてアニメファンに人気の高いアーティストでなければありませんでした。だからこそ既に多くの人気アニメを担当し、次々とヒットを飛ばしてきたLiSAが選ばれたのです。誰でも良いわけではなく、人気と実力を兼ね備え、既にアニソンシンガーではトップアーティストと言っても過言ではない人気を得たLiSAでなければ駄目だったのです。

かくて「鬼滅の刃」は2019年を代表するアニメとして大ヒット・・・という次元を超えました。勿論LiSAが鬼滅以前から大人気アーティストであったように、FateもSAOも普通の深夜アニメとしては大ヒットした部類のアニメです。しかし鬼滅はそのレベルを遥かに越えた、エヴァンゲリオン以来の「社会現象」クラスのアニメとなりました。ここまでのヒットとなったのは当のソニー集英社も、もちろんLiSAも予想だにしなかった事でしょう。鬼滅ブームの分析は本筋から外れてしまいますし以前も話題にしていますので触れませんが、これでLiSAは最強の武器を手に入れることが出来ました。それは「多くの国民が知っている曲のアーティスト」であるという事です。どんなに努力しても、アニメファン相手にどこまでヒットしても絶対に手に入らないであろうもの、それが「一般的な人気」です。

かくしてLiSAはわずか2年ほどで一気にその知名度を一般社会にまで広げました。それ以前にも音楽番組の出演やロックフェスへの出演経験が何年もあり音楽ファンにはそれなりの知名度を得ていましたが、鬼滅ブームがもたらしたものは比較にならないものでした。「紅蓮華」が小学生どころか幼稚園児でも歌えるようになり街中どこでも聞こえるようになる時代など、誰も予想できないものでした。かくしてLiSAは「紅蓮華」「炎」の大ヒット、数多くの音楽番組出演による急激な知名度の上昇、アニソン業界初のレコード大賞受賞という快挙を成し遂げ、国民的人気まで得る事となりました。たいていのアーティストならばもうここが到達点です。しかしまだまだLiSAは伸びる可能性があります。

 

3:LiSAがこれ以上伸びる余地

LiSAがこれ以上のヒットアーティストとなる要素は第一に「鬼滅の刃」ブームがこれからも続く可能性です。世の中のブームの移り変わりが早い中、ヒット作の続きは急いで出さなければ簡単に廃れてしまいます。アニメ業界ですらあのヒット作の続編がようやく出来た・・・と思ったら以前ほどヒットしなかった、時期を逃した、という事が多くあります。ソニーufotableも大急ぎで鬼滅のアニメの続編制作を進めている事は軽く想像できます。そしてLiSAがシリーズを通して主題歌を担当する事は確実でしょう。鬼滅は2クールアニメですがFateやSAOのようにクールごとに複数のアーティストが交代で主題歌を担当する形式では無く、2クール通してLiSAが主題歌をずっと担当し、劇場版でも続いていました。ここまで続いていればLiSAが主題歌を続投するのは確実でしょう。しかもここまで社会現象となって一般人からのイメージが「鬼滅のアニメの歌を歌う人」となっている状況で他のアーティストに交代するのはデメリットしかありません。このブームがどこまで続くかはわかりませんが、続く限り「鬼滅の刃」のアーティストとしてのLiSAは安泰でしょう。

第二にソニーのアニメ産業自体の巨大化があります。2010年代のアニメはソニーアニプレックスの天下と言えるほどのヒット作品が次々と生まれました。それこそLiSAのアニソンデビューとなったAngel Beats!(2010)」に始まり、「デュラララ!!シリーズ(10~16)」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない(10、13)」「!WORKING!!(10~16)」「魔法少女まどか☆マギカシリーズ(11、13、20~)」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(11、13)」「Fateシリーズ(11~)」「ソードアート・オンラインシリーズ(12~)」「ハイキュー!(14~)」「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜(19~)」等です。

それ以前から続いているシリーズを含めるとNARUTO -ナルト-シリーズ(02~)」「銀魂(06~)」「夏目友人帳シリーズ(08~)」「黒執事シリーズ(08~)」「〈物語〉シリーズ(09~)」・・・アニプレックスは2010年代に毎年毎年大ヒットアニメを生み出し、歴代深夜アニメの劇場版作品において、興行収入トップ20の内半数がアニプレックス作品です。

アニプレックス外でも機動戦士ガンダム」「ポケットモンスターといった大人気作品でも楽曲関係を担当しており、ひだまりスケッチシリーズ(07~)」や「アイドルマスターシリーズ(11~)」等楽曲は担当していないがアニメ制作はアニプレックスという作品も多くあります。

そしてヒット作を多く出す会社は出版社などの原作サイドとの繋がりが強くなります。強い者の所にはそれに協力し大きくなりたい者、儲けたい者が集まるのは世の常です。そして人気作品のアニメ化がさらに集中しヒットさせ、さらに規模や人気が高まる、という循環が続きます。そういった中でLiSAに新しいタイアップの仕事が増えていきます。元からあったSAOシリーズは既にアニプレの主力作品です。既に今年映画第二弾が決定しており、こちらのタイアップが来る可能性も高くなります*1Fateシリーズはそこまでタイアップは多くありませんが、シリーズ3作で1回づつ主題歌を担当しており、今後も担当する可能性は高いと言えます。他にも過去に主題歌を担当した作品もありますし、何より鬼滅の主題歌を担当する事になった時のように「重要なプロジェクトだからLiSAを主題歌担当に選び万全な体制を作る」という事もありえます。いずれにせよ、ソニーアニプレの規模の強化はLiSAにとって追い風にしかないのです。

第三にメディアそのものに出る機会が増えたことによる知名度の増加です。一般メディアへの出演が増えれば当然知名度は上がり、楽曲に触れる人はどんどん増えます。そしてそれはさらなるファン層の開拓へつながります。水樹奈々の紅白出演がさらなるメディア出演の拡大や知名度の増加につながりました。水樹のCD売り上げのピークは紅白出演後の2010~13年辺りです。アニメファンだけではどうしてもパイが限られる中(10年前よりは人口全体におけるアニメファンが増えているとはいえ)、ある程度アニメファン外へ進出しなければそれ以上の飛躍は望めません。おこぼれを貰いたい、自分たちの手柄にしたいといった下心があったにせよ、既存メディアの後押しが無ければ鬼滅ブームがここまでにはならず、LiSAの知名度がここまでにはならなかったのも事実です。極論を言えば鬼滅ブームによる古参のいら立ちなど、個人のお気持ちの域を出ません。「LEO-NiNE」の売り上げがそれまでのアルバムの最高売り上げの倍近くになったのも、それまでのファンだけではない層への拡大に成功したからでしょう。アニメファンだけでは限界があります。以前も書きましたが、一人でも多くのニワカをファン層に取り込めれば勝ちなのです。

 

4:水樹奈々の弱点その1

そしてもう一つ、避けてはならないのが水樹奈々の弱点です。

未だに水樹奈々は日本で最も売れている声優アーティストでありアニソンアーティストとしてはトップクラスです。おそらくそれはしばらく変わらないでしょう。アイマスラブライブクラスの大人気コンテンツが新しく誕生するか、鬼滅クラスのブームが起きない限りアニメソング界の勢力図に大きな変化はありません。

しかし水樹奈々の勢いは、明らかに落ちている点があります。といっても彼女自身のポテンシャルが落ちているわけではありません。今は妊娠中で事実上の産休中ですが、それは一時的なお休みであり出産後の産休が終わればまたすぐ活動を再開するでしょう。それほど水樹奈々はアクティブな存在です。またそのポテンシャルも少しも衰えてはいません。デビューから20年が経過しているのにも関わらず体力や歌唱力の衰えは全く見られません。むじろ若返り、パワーアップしているのではないかとまで感じています。

と言うより水樹奈々に限らず売り上げやライブの動員が落ちているアーティストでも本人のポテンシャルが落ちているわけではありません。一度フェスに出れば自分以上に売れている若手アーティストを押しのけるステージを魅せてくれます。実力が落ちたなんてとんでもありません。何故ここまで見事なステージを魅せてくれるアーティストの売り上げや動員が落ちているのか理解できないほどです。(だから皆機会があったらライブに行ったりCD買ったりしような!)

問題は彼女自身の努力だけではどうにもならない部分です。

第一に、アーティスト水樹奈々のCD売り上げのピークは、彼女自身のポテンシャルとは無関係に落ちています。前回の記事で出したCD売り上げの表をもう一度見てください。

見ての通り売り上げ上位のCDは2008年から2013年ぐらいの間に集中しています。ではその後はどうなっているのかを見てみると、2014~15年代に出た楽曲は5~6万代に落ちています。これについては「Exterminate(シンフォギア)」や「Angel Blossom(なのは)」といった人気シリーズについても同じです。前回も言いましたが声優アーティストは比較的タイアップによって売り上げが左右されにくい傾向があり、良くも悪くも本人の人気を強く反映されています。そして17年以降は「TESTAMENT(シンフォギア)」や「NEVER SURRENDER」や「Destiny's Prelude(どちらもなのは)」といった人気タイアップですら5万枚を切っており、「METANOIA(シンフォギア)」に至っては自身を代表するシリーズ作品の主題歌ですが4万枚を切っています。最新シングルの「FIRE SCREAM/No Rain, No Rainbow」に至っては3万枚を切っています。この売り上げ水準は00年代中盤の水樹がブレイクした時期とほぼ同じであり、明らかに売り上げ水準が落ちていることを表しています。

当然ながらこれらの楽曲が以前の楽曲よりも出来が悪かったり、水樹の歌唱力が落ちているというわけではありません。また音楽セールスの中心がCDよりも配信に移っている点もあります。「NEVER SURRENDER」は配信DLだけでも1万、「METANOIA」は4万を記録しており「REBELLION」や「FINAL COMMANDER」等の配信限定シングルはどちらも1万DLを超えています。決して水樹奈々の人気そのものが極端に落ちたわけではありません。またこれまでのシングルでも配信されたものの中で15曲(カップリングを含めるのでシングルとしては14曲)が日本レコード協会におけるゴールド認定(10万DL超え)、「ETERNAL BLAZE」がプラチナ認定(25万DL超え)されており、今まで積み重ねていた強さを表しています。

しかし一定の強さを守っているとはいえ水樹の売り上げが少しずつ落ちている事、そしてそれ以上にLiSAの売り上げが伸びてきている事も確かです。変化が明らかになったのは2018年でしょう。この年に水樹とLiSAはそれぞれベストアルバムをリリースしました。そして水樹の「THE MUSEUMⅢ」は7.4万枚、一方でLiSAのベストアルバムは「LiSA BEST -Way-」が9.5万枚、「LiSA BEST -Day-」が9.2万枚とLiSAが上回る結果となりました。またCDシングルでも17年末にリリースされ18年集計となったLiSAの「ADAMAS(SAOタイアップ)」は5.2万枚を記録しました。上記で出した通り「TESTAMENT(シンフォギア)」や「NEVER SURRENDER」や「Destiny's Prelude(どちらもなのは)」を上回っています。どちらも自身を代表するタイアップ作品であり、CD売り上げに与えるタイアップ効果は最大級でありどちらも全力での戦いであったと言えます。また翌年以降も同じく2019年末にリリースされ、SAOタイアップであった「unlasting」が3.7万枚と「METANOIA」の3.6万枚をわずかながら上回っています。瞬間最大風速であり公平な比較とは言い難いとはいえ、互いに最大のタイアップ効果が見込める楽曲での比較としてはLiSAが水樹を上回ったと言っても間違いではありません。しかし前回も言った通りアニソンシンガーであるLiSAはタイアップにより売り上げが大きく左右される事もあり、売り上げの安定性という点では水樹に負けています。ちなみに「紅蓮華」「炎」の売り上げを出さなかったのは条件があまりに違いすぎるためです。

ちなみにLiSAの配信DLを見てみると、楽曲リリース時期などの差がありますが4曲がゴールド認定、4曲がプラチナ認定、そして「紅蓮華」が文字通り100万DLを超えるミリオン認定を受けています。またゴールドまで行かなくとも「unlasting」が7.7万DL、SAOのゲームタイアップである配信限定シングル「Thrill, Risk, Heartless」が6.6万DLを記録している等、CDシングル以上に配信が強いアーティストです。これも時代でしょう。

とはいえ、業界全体で水樹奈々がトップアーティストである事実は変わりません。今までの積み重ねもそうですが、未だにソロのアニソンアーティストとしてはCD売り上げ枚数やセールス面ではトップレベルですし、声優アーティストとしてはシングル・アルバムと共にその年ごと一番売れたCDは誰のものか、というと水樹奈々になります*2

しかし水樹奈々が、かつてのような、並び立つ者のいないアニソン界の絶対的女王では無くなったのも確かです。ではどうしてそうなってしまったかというと、先ほどの言ったような水樹本人のポテンシャルとは全く関係無く、アニソンシーン全体の変化があります。

 

5:アニソンシーンの変化

水樹が「リリカルなのは」と「innocent starter」でブレイクを始めた2004年頃はアニメとアニソンシーンにおいて大きな変化が始まった年でありました。京都アニメーションが2005年に「Air」が、06年に「涼宮ハルヒの憂鬱」をヒットさせ今に続く人気を作り上げ、同じく2005年には「魔法先生ネギま!」の「ハッピー☆マテリアル」が大ヒットする等アニメソングの大きな転換期となりました。ここからの新時代のアニソンブームの中で水樹奈々は大きく飛躍しアニソン界のトップアーティストとなったのですが、「水樹のシングルがその年最も売れたアニソンアーティストの楽曲になった」のは2010年代を待たなければいけませんでした。

2004年に最も売れたアニソンはガンダムSEEDの挿入歌であるFictionJunction YUUKAの「暁の車」であり深夜アニメの主題歌ではangelaの「Shangri-La」でした。2005年はSEED DESTINYネギま、2006年はハルヒ、2007年はらき☆すた、2008年はマクロスF、2009年はけいおん!、2010年はけいおん!!Angel Beats!!・・・水樹奈々は2000年代の中で大きく成長しながらソロのアニソンアーティストとしてトップに立ち、紅白に出演するまでになりながら「その年に最も売れたアニソンアーティスト」には中々なれませんでした。それほどに2000年代に花開いたコンテンツから生まれた声優ユニットは強かったのです。何故ならアニソンアーティストは多くとも1クールに1曲、年に多くともアルバムがオリジナルとベスト1枚ずつが限界ですがコンテンツの作品ユニットは主題歌、挿入歌、キャラソン、アルバム、ミニアルバムetcetc・・・水樹ほど1曲1曲が大きくとも、ある程度の売り上げと圧倒的な量で攻めることが出来る作品ユニットには年間の累計ではかないませんでした。

そんな水樹奈々がついに完全な圧倒的王者になったのが2011~12年の2年間でした。2011年は「うたの☆プリンスさまっ♪」「魔法少女まどか☆マギカ」といった大ヒットTVアニメ作品や「けいおん!」や「マクロスF」の劇場版が大ヒットし、これらの主題歌や挿入歌の楽曲も大ヒットしました。しかしそれ以上に水樹奈々の売り上げが上回ったのです。この年シングルを1年間に3枚出し全てが売り上げ7万枚を超えたという単純な売り上げの質量もあります。しかしこの中で年間のアニソンアーティストの楽曲として最も売れた「SCARLET KNIGHT」が主題歌だった「DOG DAYS」は、評価そのものは比較的高く以後3期まで続いたヒット作だったもののセールス面ではこの年の大ヒットアニメに比べればそこまでではなく、年間3位であった「POP MASTER」はアニメタイアップでは無く、4位であった「純潔パラドックス」が主題歌であった「BLOOD-C」はお世辞にも高評価とは言えず、翌年のシンフォギアに「水樹奈々が主題歌のオリジナルアニメ」というだけの共通点で放送前の期待が下がる影響を与えるほどでした。しかしこういった作品の評価とは別に楽曲が高いセールスを記録した事は、水樹奈々が作品人気に依存せず高セールスを記録できるアーティストにまでなった事を表しています。

また他のアーティストや作品について目を向けてみると人気コンテンツの主題歌アーティストは高い売り上げを出したもののまたこの1年に2作以上のアニメの主題歌を担当したアーティストが殆どいなかった事*3、前出の劇場版作品の売り上げがピークを既に過ぎていた事(売り上げそのものは高かったが、全盛期と比較した場合落ちていた)、コンテンツ作品からのアニメ化では「アイドルマスター」や「うたの☆プリンスさまっ♪」がヒットを飛ばしたものの後年ほどのヒットとは言えず未だ成長過渡期であった事等があり、この前後の時期と比べて強いコンテンツが無かった事があります。ちょうど今のLiSAと同じく、自分自身の実力と運、双方を味方につけたこその絶対的女王だったのです。

2012年もこの状況は続きました。「戦姫絶唱シンフォギア」のヒットや「BRIGHT STREAM」の現在まで続く自身最高記録樹立もありリリースしたシングル3枚が全て大ヒット。アルバムはオリコンの年間集計時期からちょうど外れたにもかかわらず、シングルの売り上げだけでアニソンアーティストのトップとなりました。他作品についても「ソードアート・オンライン」や「劇場版魔法少女まどか☆マギカ」の大ヒットや「アイドルマスターシンデレラガールズ」のキャラソンがその後の大ヒットを予感させるセールスを記録する等の動きがありましたが、それでもアーティスト・水樹奈々を超える事は出来ませんでした。ちなみにこの時期LiSAがソロデビューし、1曲ごとのヒットでは水樹に並ぶほどでしたが、量やタイアップごとの安定性では及びませんでした。

2013年にはシングル首位こそ「進撃の巨人」ブームによってLinked Horizon「自由への進撃」が獲得したものの、アルバム「ROCKBOUND NEIGHBORS」の自己最高記録やT.M.Revolutionとのコラボの大ヒット等により未だ他に並び立たない存在でした。

しかし2014年から流れが変わっていきます。この年の水樹はシングル・アルバム共に1つずつのリリースとなる谷間の年でした。しかしそれ以上に新しいコンテンツの盛り上がりが水樹を上回ったのです。その代表が「ラブライブ!」とそこから生まれた作品ユニットである「μ's」でした。2013年のアニメ1期のヒットから1年、2014年のアニメ2期に合わせその人気も格段に上がりました。そして作品コンテンツという形の違いもありリリースのペースも圧倒的に早く、この年μ'sだけでシングル7枚をリリースしその内6曲が年間アニソンシングル上位トップ6を独占する状況でした。他にもこの年劇場版が公開され系列シリーズが広がっていた「アイドルマスター」シリーズもこれまで以上の活躍を見せ、女性向けコンテンツでは「うたの☆プリンスさまっ♪」が数年間ヒットを続けました。この年のアニサマでは、大トリの水樹以上に同じ日のμ'sの出番が盛り上がっていたという声まで多く聞こえたほどです。そして先に結論から言うと、この年以降水樹が年間トップに返り咲く事は未だありません。

これらのアイドルコンテンツ作品はアニメが主体と言うよりアニメとゲームが並び立ち、アニメの動きが無くてもゲームやキャラソンでリリースが続けることが出来るという特徴があります。2000年代のヒットコンテンツはどうしてもアニメに動きが無ければ関係楽曲のリリースが難しく、ブームを数年間続けることは難しいという問題点がありました。しかしその問題点を解消したアイドルコンテンツ作品は空白期を作る事無く活動を続け、ファンを話す事の無いヒットを続ける事が可能になりました。また複数人の活動が主であるため、ソロアーティストよりも多くの活動が可能となります。水樹奈々がいくらヒットを飛ばそうとも1人で活動するソロアーティストである限りタイアップの関係等もあり1年間に出せるCDの枚数には限界があります。しかしアイドルコンテンツは作品内のソロCDや作品展開に合わせてアニメだけに捕われる事無くリリースが可能です。このブームの継続的ヒットが可能となり安定したペースでのリリースが可能となったコンテンツ作品は、水樹だけでなくソロで活動する声優アーティストやアニソンシンガーにとって最大のライバルとなります。

2015年の水樹はアニメタイアップという点では好条件にありました。14年秋から始まった「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 OP」から数えて1年間タイアップが途切れることなく、さらに15年冬には「DOG DAYS」3期と「クロスアンジュ」の後半が同時に放送されていたため、平均すると1クール1作以上のタイアップがありました。春には「魔法少女リリカルなのはViVid」、夏には「戦姫絶唱シンフォギアGX」と自身の代表作品シリーズが続き、シングル3枚、アルバム1枚をリリースするという活動そのものもかなり活発化していました。しかしそれでもそれ以上にこの年劇場版が大ヒットした「ラブライブ!」の人気を上回ることは出来ず、新規ファンへの流入も勢いがあるラブライブへ向かっていきました。CDにイベント先行申し込みチケットが封入されている、所謂「イベチケ商法」を採用したとはいえ、水樹ですら1曲しか出していないCDシングル売り上げ10万枚突破を3曲も出した事がその人気の証明です*4。さらにこの年「アイドルマスターシンデレラガールズ」のアニメがヒットし楽曲セールスも今まで以上に増加、10周年を迎えるアイドルマスターシリーズそのものへの勢いにも更なる弾みを付けました。そしてこの勢いはCDセールスに留まりませんでした。

この年7月、アイドルマスターシリーズの合同ライブ「M@STER OF IDOL WORLD」が西武ドームで開催され、同年の紅白歌合戦にはμ'sが出演しました。この2つは水樹奈々がこれまで独占していた「アニソン界唯一のドーム公演アーティスト」「アニソン界唯一の紅白歌合戦出演アーティスト」を失う事を意味していました。水樹奈々が絶対的女王であったのは単にCDが売れてきただけではありません。前回説明した通り、ライブ公演やTV出演等数多くの展開を繰り広げ、その中で並ぶもののない存在だったこそ水樹奈々は絶対的な存在であったのです。しかしこの年から、その存在も危うくなっていきました。

2016年にはμ'sが東京ドームで単独ライブを開催、土日では無かったにも関わらず東京ドームを満員としました。翌週に水樹も東京ドーム単独公演を開催し、アニソンアーティストでは唯一である「アニソン界唯一の東京ドーム単独公演の複数回開催」を成し遂げましたが、「アニソン界唯一の東京ドーム公演アーティスト」で無くなった事もまた事実です。μ'sはこのライブをファイナルライブと銘打ち事実上の活動休止となりましたが*5、昨年から開始したシリーズ第2作「ラブライブ! サンシャイン!!」と作品ユニット「Aqours」の本格的活動開始とアニメのヒットはそれを引き継ぐに十分であり、この年の累計セールスはAqoursとμ'sがワンツーフィニッシュを達成しました。またアイドルマスターシリーズはシンデレラガールズがイベチケ商法効果があるとはいえラブライブ!シリーズでも未達成であったオリコンシングルウィークリー1位を達成する等新記録を成し遂げていきました*6。この年の水樹は先ほどの東京ドーム単独公演や音楽界でもソロアーティスト初となり、自身の念願であった甲子園球場単独ライブを成功させるなど大きな話題を呼びましたが、この年のリリースは事実上シングル1枚のみでした。*7。この年シンデレラガールズが全国最大規模のアリーナツアーを開催し、LiSAもアニソンシンガー最大級会場のアリーナツアーを開催、Aqoursうたプリ西武ドーム単独公演を開催する等水樹の専売特許であった全国規模のアリーナツアーやドームライブももはや珍しいものではありませんでした。

2018年にはAqoursがアニソンアーティストとしては3件目となる東京ドーム単独公演と紅白歌合戦出演を達成*8シンデレラガールズ水樹奈々ですら立ったことの無いナゴヤドーム単独公演を達成、またこの公演は西武ドーム単独公演と併せて2会場だけとはいえアニソン業界初となるドームツアー公演となりました。順番が前後しますが2019年から20年にかけて開催されたライブツアーでは同じく業界初となる京セラ大阪ドームでの単独公演を開催しました。LiSAと水樹のアルバム売上の比較については先ほどの通りです。コンテンツ作品とのCDシングルの売り上げの差については言うまでもありません。*9。2019年に入るとアイマスラブライブに加えて「BanG Dream!」シリーズが売り上げ上位に入る変化はありますが作品ユニットが上位を独占する形は変わっていません。しかしそれ以上の大きな変化がありました。言うまでもない「鬼滅の刃」ブームの始まりです。この結果この年のソロアニソンアーティストとしてのCD売り上げはLiSAの「紅蓮華」となりましたが、19年の時点ではそこまで圧倒的な売り上げではありませんでした。

そして2020年。例のアレによりイベチケ商法が壊滅的打撃を受けた影響もあり、作品コンテンツのCDは大きく売り上げを落としました。といっても一定の売り上げ水準は維持している辺りイベチケ頼みではない人気がある事を伺わせます。それと同時に鬼滅の刃の社会現象化によって「紅蓮華」「炎」の売り上げはこれまでの作品ユニットが限界までイベチケ商法を使っても届かなかった20万枚クラスの規模に達し、年間のアニソンセールスとしても8年ぶりとなるソロアーティストの首位奪還を成し遂げ、LiSAは前人未踏である「アニソンアーティスト初のレコード大賞受賞」を達成しました。

2000年からの10年は水樹奈々がアニソン界の絶対的女王になる時代、そして2010年からの10年はその座が変わる時代と言っても過言ではありません。

 

6:水樹奈々の弱点その2

ここまで見てきた人(特に奈々クラの皆さん)は自分が水樹アンチか何かかと思うかもしれませんが、決してそんなことは無いです。アルバムは毎回買っていますしライブにも何回も行きました。ナゴヤドームのチケット当てたんで行きたかったです。何回も言いますが水樹奈々のポテンシャルは決して衰えていません。それに20年間積み重ねたものや記録は追い越される事はあっても無くなる事はありません。水樹奈々がいなければ、アイマスラブライブといったコンテンツやLiSAらアーティストがドームでライブを開催する事も紅白に出る事も無かったでしょう。彼女のアニメソングにおける功績は、未来永劫消え去るものではありません。

そして未だ声優アーティストの頂点と言う座は作品ユニットが水樹の売り上げを上回っても未だ無くしていません。その年に1番売れた声優のCDシングルという点では、未だに首位を守っています。DLを含めれば2番手以降に甘んじる事はあっても。未だにその座は揺るぎません。

しかしながら水樹奈々にはもう一つ弱点があります。それも彼女自身の強さと表裏一体のものです。それは「水樹奈々にはみんながわかる代表曲が無い」という事です。

これに異を唱える人は多いでしょう。水樹にはエタブレ深愛もあるじゃないか。あれだけのヒット曲だしアニメファンやアニソンファンはみんな知っている。バンドリでもカバーされている。他にもヒット曲は山ほどある・・・

その通りです。アニメファンやアニソンファンの殆どで水樹奈々の曲を知らない人はいません。この「みんな」とはそれ以外の人です。アニメをよく知らない一般人の事です。

アニメを知らなくても水樹奈々を知っている人はそれなりにいるでしょう。紅白には6年連続で出ました。FNS歌謡祭でもレギュラーです。ミュージックフェアとかにもよく出ます。朝の芸能ニュースやワイドショーでも取り上げられる事は多いです。水樹奈々は有名な声優でアニメの曲を歌う歌手である、その程度の事はそれなりに知られています。

しかし「代表曲」となると別です。ここの「代表曲」というのは10人いれば1人は知っている人がいるであろうレベルの知名度の高い曲です。凄くわかりやすく言えばLiSAにとっての「紅蓮華」です。これにLiSAには他にも人気曲がたくさんある、という人には高橋洋子にとっての「残酷な天使のテーゼ」、影山ヒロノブの「CHA-LA HEAD-CHA-LA」、きただにひろしの「ウィーアー!」と言えばいいでしょうか。当然ながら4名とも人気のアニメソングは数多くありますが、これらの曲はアニメをそこまで知らない人でも聴いたことぐらいはあるレベルの知名度の曲です。これと同レベルの知名度の曲が水樹奈々にあるか、と言われると自分は無いと答えるしかありません。辛うじて「深愛」が始めて紅白に出た時の曲、として通じるかもしれないかもしれません。パチンコ愛好家ならば別の返事があるかもしれませんが。

そしてこれは逆に水樹奈々の強さを証明しています。水樹奈々はこれほどの知名度と実績を築くのに、みんながわかる代表曲を必要としなかったからです。

水樹奈々のタイアップしたTVアニメ作品のほとんどは深夜アニメであり、それ以外では「まみむめ★もがちょ」「トリコ」「デュエル・マスターズ キング」程度です。深夜アニメ以外でドラゴンボールやワンピース並みの知名度や人気を得る事はほぼ不可能です。ラブライブ進撃の巨人ですら一般人にとっては「何か知っている」レベルです。人口におけるアニメファンがかつてより大きくなっているとはいえ、一般人にまでブームを起こせるほどではありませんでした。だからこそメディアの大規模な後押しがあったとはいえその認識を壊した「鬼滅の刃」ブームは歴史的であったのです。

そしてそれらの作品が無くとも「水樹奈々」という個人の人気でここまで上り詰め、特定の作品を支え、支えられる事はあっても依存することは無く(当然ながら先ほど名を挙げたアーティストが作品に依存しているというわけでは無いです)、紅白6年連続出演、オリコン1位、アニソン初のドーム公演、天皇皇后両陛下の御前で歌唱・・・等々の歴史を重ね続けた、それこそが水樹奈々の強さなのです。

ただ水樹奈々に「紅蓮華」や「残酷な天使のテーゼ」のような知名度と人気のある曲があったら・・・アニメソングの歴史は大きく変わる事となるでしょう。

 

7:キングレコードの問題

そしてもう一つ問題があります。これは水樹奈々というより、キングレコードの問題です。90年代のアニメを知っている人間ならば、当時のキングレコードの勢いを忘れていないでしょう。以前のシリーズで触れましたが、90年代のキングレコードはまさにアニメ界の王者でした。既に大人気であったガンダムシリーズナデシコウテナ、そしてエヴァンゲリオン・・・一つ一つが歴史に残る大ヒット作であり、これらの作品を彩るアニソンアーティストも一人一人が綺羅星の如く輝く存在でした。その代表が何と言っても林原めぐみです。声優としてはもう語るまでもありませんが、声優アーティスト・林原めぐみのCDセールスは水樹奈々ですら並ぶものがありません。CDシングル売り上げ20万枚超えが2枚、10万枚超えが7枚、5万枚超えが10枚。当時は今と比較にならないほどCDが売れていたとはいえ、声優アーティストとして築き上げた記録は揺らぐ事のないものです。主役・ヒロイン格のキャラとして出演し、主題歌を担当した作品でも「スレイヤーズ」を始め「ロスト・ユニバース」「セイバーマリオネット」シリーズ、「シャーマンキング」等々のヒット作を次々と生み出していきました。声優とアーティスト、どちらとしても作品に深くかかわる存在は以前からいましたが、CDセールス的にもここまで大規模なヒットを続いて飛ばした存在は初めてと言ってもいい存在です。

そして堀江由衣田村ゆかりという大人気声優アーティストを挟み、並行しながらも一番の地位を継いだのが水樹奈々でした。水樹の所属する「キングレコード第三クリエイティブ本部」は水樹関係作品だけでも「リリカルなのは」に「バジリスク」、「ロザリオとバンパイア」、「WHITE ALBUM」といった多くの人気作を作り上げ、水樹以外でも「うたの☆プリンスさまっ♪」等のヒット作を生み出しました。それ以前からのキングレコードのアニメ制作主力であったスターチャイルドでも「あずまんが大王」「フルーツバスケット」「宇宙のステルヴィア」「蒼穹のファフナー」「魔法先生ネギま!」「ぱにぽにだっしゅ!」「みなみけ」「さよなら絶望先生」「とらドラ!」といったヒット作を次々と送り出していました。

しかし00年代はこれらの人気作を世に送り出すことに成功したものの、90年代のように完全な覇権を握るほどではありませんでした。バンダイナムコランティス)の「涼宮ハルヒの憂鬱」や「らき☆すた」、「コードギアス」、ポニーキャニオンの「AIR」「KANON」「CLANNAD」「けいおん!」、ジェネオン(現NBC)の「灼眼のシャナ」「とある魔術の禁書目録」「とある科学の超電磁砲」、フライングドッグの「マクロスF「ARIA」ソニーの「黒執事」「物語シリーズ」「天元突破グレンラガン」「おおきく振りかぶって」、そしてシリーズの音楽制作がキングレコードから移った「ガンダムSEED」「ガンダムOO」等々、90年代も完全なキングレコード1強時代というわけではありませんでしたが、00年代は明らかに業界図が変化していました。

そして10年代に入るとさらに勢力を伸ばしたのがバンダイナムコグループランティス)とソニーグループ(アニプレックスSACRA MUSIC)です。

バンナムの一番の強さはアイドルマスターシリーズとラブライブシリーズという、10年代を代表し、20年代も留まる事を知らない勢いのアイドルコンテンツ両方を持つ事です。アイマスシリーズは765とシンデレラと言う初代と最も大規模なコンテンツの音楽こそ日本コロムビアが担当しているものの、ミリオン、sideM、シャイニーカラーズといったシリーズは100%バンナムランティスが担当おり、ラブライブシリーズの楽曲はバンナムランティスが全て担当しています。他にも「ガールズ&パンツァー」「Free!」「黒子のバスケ」「アイドリッシュセブン」等の大人気作品や「中二病でも恋がしたい!」「響け!ユーフォニアム」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」といったポニーキャニオン系列作品、「ウマ娘 プリティーダービー」等外部制作作品でも楽曲制作を担当しています。

そしてソニーの一番の強さはアニプレックスの生み出す作品のヒット力です。作品ユニットのコンテンツ力では劣るものの上で触れたように2010年代に次々と大ヒット作品を生み出してきました。

他にもヒット作を生んだアニメ制作・楽曲レーベルはあれど、バンナムソニー、そしてキングレコードが日本の三大アニメ制作・楽曲レーベルと言っても過言ではありません。キングレコードは2010年代に入ってもヒット作を多く生みました。「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズ、「戦姫絶唱シンフォギア」シリーズ、「K」、「シドニアの騎士」、「鬼灯の冷徹」、「クロスアンジュ」・・・そして2015年、キングレコードのアニメの歴史と言っても過言ではない「KING SUPER LIVE 2015」を開催、大成功をおさめます。これはキングレコードの頂点と言っても過言ではない歴史の集大成でした。そして残念なことに、現時点でこれこそが頂点であり、それ以上を望むことは難しくなりました。

2016年のキングレコード再編によりスターチャイルドレーベルがキングレコード第三クリエイティブ本部に合併される形で「キング・アミューズメント・クリエイティブ本部」が誕生しましたが、この体制下で新しく大ヒットアニメが誕生したとは言えません。昭和元禄落語心中」のように高い評価を得た作品や「アホガール」のような話題となった作品やその主題歌はありますが、商業的に大成功を収めた作品というと中々難しい所があります。合併前から続くシリーズ作品を除けば「ポプテピピック」が商業的には最大のヒット作と言えば、その状況がわかるでしょう。他にも商業的にある程度の成果を出せているのは「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」ぐらいでしょうか。こちらも売り上げに加えて既に2期が決定しているので、原作ストックも考えて軌道に乗ればシリーズ化も可能です。

以前からのシリーズ作品でも水樹奈々を代表するシリーズでは「リリカルなのは」シリーズは劇場版2作と外伝的作品である「ViVid Strike!」のみですが、去年新プロジェクトがスタートしたという発表があり、今後も展開が続きそうではあります。一方で「シンフォギア」シリーズはアニメの方が完結、新しい代表作品を生み出すにはまだ至っていません(そう簡単に代表作を生み出せるわけではない、というのも事実です)。他に継続しているシリーズものとしては「蒼穹のファフナー」「うたの☆プリンスさまっ♪」ぐらいなものでしょう。またキングレコード関係で継続しているヒット作品に数えられるのは系列の「EVIL LINE RECORDS」からの「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」といった所でしょうか。ヒット作の数が揃っているとはいえ、かつてほどの勢いはありません。

アーティストもかつてほどの賑わいは無く、水樹に次ぐNO2であった田村ゆかりを初め小松未可子喜多村英梨の移籍、ゆいかおりの活動休止等人気アーティストの移籍、解散、活動休止が相次ぎました。元から所属していた小倉唯上坂すみれの人気の高まりや新たにデビューした水瀬いのり蒼井翔太内田雄馬といったアーティストの人気やセールスは中々のものがありますが、依然と比べると寂しいものがあります。

もちろん他のレーベルも簡単に次世代のヒット作や全く新しい作品を生み出せるわけではありませんバンナムで言えばラブライブは10周年ですしアイマスは15周年です。ソーニの作品ではSAOは原作開始が12年前ですしFateに至っては最初のアダルトゲームが世に出たのは17年です。始まった時期ではなのは(アニメシリーズ)やシンフォギアと大きな差があるわけではありません。とはいえこれらのシリーズは新作や新展開を絶え間なく出し続け、原作もまだまだ続きがあり長期間シリーズ展開を続けることが出来るものが多くあります。そうしてシリーズを続けレーベル全体の対量を増やしながら、その中で様々な出版社や各種企業との結びつきを強めて新しいアニメ展開を進め人気原作のアニメ化やオリジナルアニメ企画を始めまた別のヒット作を生み出す、という流れを作る事の出来る事が出来るレーベルが覇者となれるのです。かつてのキングレコードが、今のソニーがそうです。

当然ながらヒット作を狙って生み出す事等不可能ですし、今もキングレコードは多くの作品のアニメ展開を進めています。キングレコードが財産に胡坐をかいているというわけではありません。しかしながら力を入れて作品を作れば必ず評価されヒットする、というわけではありませんし、それならば誰も苦労しません。新規プロジェクトという面では今のキングレコードソニーバンナムどころか、ブシロードよりも動きが無いのではないかと思います。

しかしアニメソングと言う面で言えば、キングレコードが往年程でないとはいえアニソン界の雄であり声優アーティストにおいてはトップの座を未だ守り続けているのも確かです。水樹奈々は言うまでもなく、男性声優ソロアニソンアーティストとしてトップの座におり初のドーム公演を予定していた宮野真守、次世代の声優アーティストとして大人気の水瀬いのり、王道アイドル声優小倉唯、唯一無二の個性の持ち主である上坂すみれ、美しさと熱さを併せ持つ蒼井翔太、次世代男性声優アーティストながらすでに人気十分な内田雄馬、そして様々なコンテンツで活躍し再度のソロデビューを果たした愛美・・・何れも人気・実力ともに十分な声優アーティストです。だたしこういったアーティストの魅力を100%以上に生かすためには有力な作品タイアップが質・量ともに必要なのは否定できません。そこが今のキングレコードの一番の弱点でしょう。ただし再度言いますがそんなヒット作を定期的に出すことはとても難しい事です。かつてのキングが、そして今のソニーバンナムがアニメ業界を代表するレーベルになれたのは関係者の努力があったのは当然ですが、運が良かった要素も否定できません。

 

8:まとめ

話がだいぶ脱線してしまいました。いい加減まとめに入りましょう。ここ3回のタイトルである「水樹奈々はLiSAを超えたのか」についてです。結論付けると以下のようになります。

1:同時期や現状を考えると、一時的な勢いや一部の記録ではLiSAは水樹奈々を上回っていると言っても間違っていない。

2:水樹が築き上げてきた記録や功績を考えると、LiSAが水樹奈々を超えたとはまだ言えない。

3:LiSAは周辺環境の勢いから今まで以上に伸びる可能性が高いが、水樹奈々は難しい。

4:水樹奈々本人は衰えていないが、アニメソングの環境そのものの変化が水樹奈々を絶対的女王では無くさせた。

5:LiSAが水樹の記録を継続的に全て超えた日が来たら、その時こそ水樹奈々を超えたと言える。

6:たとえその日が来たとしても、水樹奈々の打ち立てた功績は決して消えるわけでも価値が落ちるわけではない。

 

1については前回の記事を、2~4についてはこの記事をもう一度見てくれればわかると思います。

5については水樹が20年間で打ち立ててきた全て、売り上げであったり記録だったりイベントであったり・・・その全てにLiSAが並び、それ以上の記録を打ち立てることが出来る、という意味です。それが可能なのかはまだわかりませんが、その可能性は十分あると言えます。

6についてはもうその通りで、今当たり前の光景を開拓していった人の努力や功績は決して消える事が無いという意味です。アニメソングがテレビで取り上げられる事が殆どなかった時代で努力し、アニメファン以外の人々へアニメソングという存在を知らしめた水樹奈々、そして他の先輩アニソンアーティストの功績はそれを超えていく存在が現れたとしても決して価値を損なうわけでも、消えるわけではありません。当然ながら先人が築いてきた道を歩く後輩が楽をしているというわけではありません。その道に足を踏み入れるだけでも大変ですし、歩き続ける事も決して楽ではありません。そして更なる道を開拓する壁は先人と同じ、またはそれ以上のものなのです。飛行機の開発者とスペースシャトルの開発者、どちらが偉いかを比較するようなものです。

 

過去の先人も素晴らしいし、未来を開拓する人間も素晴らしい。優劣では無く素晴らしさを語ろうぜ!

だったら何でこんな企画を考えたのかって話だけどな!

とりあえずソニーキングレコードの偉い人はどんなに売れてもアニソンフェスにアーティストを出してください!特にキングレコード!もったいぶらないでドンドンアニソンフェスに出して「知っているけどワンマンに行くほど興味を持っていない」人達を引きこめ!

またアニサマ2017の名勝負を見たいんだよこっちは!

最後に「鬼滅の刃」のこのセリフを貼って終わりたいと思います。

 

私たちはそれ程大そうなものではない 長い長い人の歴史のほんの一欠片
私たちの才覚を凌ぐ者が今この瞬間にも産声を上げている 彼らがまた同じ場所まで辿り着くだろう
何の心配もいらぬ 私たちは いつでも安心して人生の幕を引けば良い
浮き立つような気持ちになりませぬか 兄上

 

今回も読んでいただいてありがとうございました、次回もよろしくお願いします・・・の前におまけを一つ。

 

9:おまけ

関東ローカル番組「お願い!ランキング」で先週今週と水樹奈々特集が放送されていますが、そこで視聴者投票による「みんなのアニソンBEST 水樹奈々のアニソン名曲編」が発表されています。20~11位がこちら。

 

20:「FINAL COMMANDER」TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアXV」挿入歌 

19:「純潔パラドックス」TVアニメ「BLOOD-C」ED

18:「愛の星」アニメ映画「宇宙戦艦ヤマト2199 第七章」ED

17:「ヒメムラサキ」TVアニメ「バジリスク 〜甲賀忍法帖〜」ED

16:「WILD EYES」TVアニメ「バジリスク 〜甲賀忍法帖〜」ED

15:「PHANTOM MINDS」劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」主題歌

14:「禁断のレジスタンス」TVアニメ「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞」前期OP

13:「TESTAMENT」TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」OP

12:「BRIGHT STREAM」 劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's」主題歌 

11: 「BRAVE PHOENIX」TVアニメ「魔法少女リリカルなのはA's」挿入歌 

 

この手のランキングは「昔からの大人気曲」と「一番新しい曲」が人気になる傾向が強いです。「FINAL COMMANDER」がランクインしているのはその影響でしょう。「バジリスク」や「クロスアンジュ」の主題歌がこの位置にランクインしているということは挿入歌等がこの上には無いという事でしょう。意外だったのが「PHANTOM MINDS」と「BRIGHT STREAM」がこの位置だった事。どちらも紅白曲で片やオリコン1位、片や最大のヒット曲と記念すべき曲なのでもっと上位かと思いました。「BRAVE PHOENIX」のランクイン効果は多分甲子園の影響、間違い無い。

また今回のランキングはアニソンということで、「POWER GATE」みたいなノンタイ曲は入っていないと思います。後はゲーム関係曲とかも。プリロゼ革命も多分対象外。まあ投票サイト見ていないんですけどね!

というわけで自分もトップ10を予想してみました。

 

10:「METANOIA」TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアXV」OP

やはり最新曲は強い、ということで。「FINAL COMMANDER」がベスト20ならこっちも入るでしょう。

9:「Vitalization」TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアG」OP

間違いなくベスト10には入るはず。ただシンゲの方が上かと。

8:「アノネ〜まみむめ☆もがちょ〜」TVアニメ「まみむめ★もがちょ」OP

古参枠。

7:「SCARLET KNIGHT」TVアニメ「DOG DAYS」OP

DDも間違いなく入る。としたらスカナイしかない。

6:「Pray」TVアニメ「魔法少女リリカルなのはStrikerS」挿入歌 

同時期のOPだった「MASSIVE WONDERS」より人気の曲、というかあっちが不憫。

5:「Synchrogazer」TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギア」OP

シンフォギアで一番上位なのはやはりシンゲだろう、ただし上が強すぎるのでこの位置。

4:「innocent starter」TVアニメ「魔法少女リリカルなのは」OP

3位と4位は入れ替わるかもしれないがこの4曲は絶対この位置と予想。

3:「DISCOTHEQUE」TVアニメ「ロザリオとバンパイア CAPU2」OP

ベスト3の作品はばらけそう。みんな大好きちゅるぱや。

2:「深愛」TVアニメ「WHITE ALBUM」OP

2014年のFCイベで1位に輝き初の紅白歌唱曲。1位でもおかしくない。

1:「ETERNAL BLAZE」TVアニメ「魔法少女リリカルなのはA's」OP

まあやっぱりエタブレなんだよなぁ。

 

という事で自分のベスト10予想です。ちな自分が水樹奈々のアニソンベスト10を選ぶとこうなります。

 

10:「FEARLESS HERO」TVアニメ「DOG DAYS'」OP

9:「終末のラブソング」TVアニメ「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞」後期ED

8:「MASSIVE WONDERS」TVアニメ「魔法少女リリカルなのはStrikerS」後期OP

7:「Take a shot:TVアニメ「魔法少女リリカルなのは」挿入歌 

6:「innocent starter」TVアニメ「魔法少女リリカルなのは」OP

5:「Sacred Force」劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's」挿入歌 

4:「Dancing in the velvet moon」TVアニメ「ロザリオとバンパイア」ED

3:「TESTAMENT」TVアニメ「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」OP

2:「Don't be long」劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st」挿入歌 

1:「STARTING NOW!」TVアニメ「この美術部には問題がある!」OP

はい、なのはは挿入歌の方が好きなオタクです。本家ランキングは1月18日の放送をお楽しみに。

 

それではみなさん、これで本当におわりです。

今回もこのブログを読んでくださってありがとうございました。

次回はもっと平和な記事にしようと思いますので、よろしくお願い致します。                          

*1:SAOシリーズは他にも担当アーティストが多くいますので、100%とは言いません。

*2:ただしDLを含めると2位になる、と言う事はあります。2020年のDLを含めた年間総合シングル売り上げでは坂本真綾の「独白/躍動」がFGOタイアップ効果があるとはいえ水樹の「FIRE SCREAM/No Rain, No Rainbow」を上回っています

*3:例えばClariSの「コネクト」は「SCARLET KNIGHT」に次ぐ売り上げを記録したが、この年ClariSはこの曲を含めて2曲しか出さなかったためセールス面では水樹に及ばなかった。

*4:さらに言えば、イベチケ商法は水樹も、というか声優アーティストの多くが採用しており、ことさらアイドルコンテンツだけが批判される商法で上はありません。

*5:この時期のμ'sの「活動については「ファイナルライブ」「ファイナルシングル」等と銘打ってはいるが、公式に「活動休止」や「解散」と発表された事は無い。

*6:アニソンアーティストのオリコンウィークリー1位としては2013年のfripSide「sister's noise」に次ぐ3曲目。

*7:年末にリリースしたアルバムはオリコンセールスでは翌年の集計となる。))このころになると、CDシングルの年間ランキング上位には作品ユニットが殆どを占める中に水樹奈々がいる、と言う光景が数年間続くようになります。

2017年、この年の水樹奈々はアルバム1枚、シングル2枚をリリースし、シングルもなのはとシンフォギアという代表シリーズの曲2つであり高セールスを記録しました。しかし既に量だけでなく1曲ごとの売り上げ面でも大人気コンテンツには叶わなくなっていました。CD売り上げはアイマスラブライブうたプリが(イベチケ商法を含むとしても)上位を独占、一昔前の水樹を彷彿とさせる売り上げをたたき出していました。そしてこの年、ソロアーティストとしてのCDシングル売り上げの首位も獲得てきませんでした。水樹奈々の「TESTAMENT」はこの年のソロの声優アーティスト売り上げ1位を記録しましたが、ソロのアニソンアーティストの売り上げ1位には至りませんでした。それを阻んだ曲こそ「Catch the Moment」、そしてそのアーティストこそLiSAでした。アルバムやCD累計の売り上げでは水樹が今だ勝るものの、作品ユニット全盛期でも守っていたソロアーティストとしてのシングルCDの首位の座を、わずか1度とはいえ失ってしまいました。水樹奈々はこの年のアニサマで3年ぶりに大トリの出演となりましたが、その時ですらトリ前のLiSAの方が良かったという意見すら少なくなかったほどです((ただし昔から水樹奈々アニサマのセトリはファンですら苦言を呈する事が少なくなかった。

*8:特別企画枠の出演であり、正式出演ではない

*9:なお2018年のソロアニソンアーティストのシングルCD最高売り上げはTVアニメ「ゴブリンスレイヤー」OPであるそらる「銀の祈誓」です