※この企画の記事内では個人名は敬称略で記載しております、ご了承ください。
レーベル分析シリーズ第3回はアニサマでもアニソン業界でも比較的新参でありながら、大きな勢力も擁しアニサマにおいてはランティス、キングレコードと並ぶ主要レーベルとなったソニー系列についてです。
- 1:ソニーとアニメソングのかかわりの始まり
- 2-1:土6・日5枠アニメ・テレ東夕方ジャンプアニメとソニータイアップ
- 2-2 2000年代のソニー系列の主なアニメ・及びタイアップ表(J-POP・ROCK版)
- 3:ソニー発のアニソンアーティスト誕生
- 4:ソニー系アニソンアーティストの発展
- 5:2010年代のソニー系一般アーティストとアニメタイアップ
- 6:SACRA MUSIC設立と新たなるアーティストの誕生
- 7:アニサマのソニーアーティスト
- 7-1:SACRA MUSIC所属 (過去含む)
- 7-2:その他レーベル所属アニソンアーティスト
- 7-3:J-POP・ROCK系アーティスト
- 8:アニサマにおけるソニー
- 9:まとめ
1:ソニーとアニメソングのかかわりの始まり
企業としてのソニーについてはここで語るまでもありません。このブログを見ているあなたの家にもソニー関係の製品が一つはある事でしょう。
ソニーの音楽事業への進出は1968年3月に、アメリカのコロムビア・ブロードキャスティング・システムとの合弁会社「CBS・ソニーレコード株式会社」を設立したのが始まりです。この会社は洋楽の輸入と合わせて邦楽事業も開始し、1971年7月には新レーベル「EPIC」が誕生しました。これが現在も続くレーベル「エピックレコード・ジャパン」の元となります。このレーベルは1976年に邦楽部門が本家の「株式会社シービーエス・ソニー」※CBS・ソニーレコード株式会社が商号を変更した、さらに後に1983年には「株式会社シービーエス・ソニーグループ」と変更する※レーベルに統合され1978年8月に株式会社EPIC・ソニーとなります。このレーベルからリリースされたのがソニー系列の初と言えるアニメ主題歌である、TVアニメ「シティーハンター」ED、「TM NETWORK(TMN)」の「Get Wild」です。
小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人によるユニットであるTMNは当時デビュー3年目であり、全国ツアーを行い全国ネットの音楽番組にも出演する等の活動をしていましたが大きなヒットには未だ繋がらず、当時これに危機感を抱いていたTMNの宣伝担当、西岡明芳が閃いたのが楽曲とアニメをタイアップする事です。そんな西岡と意気投合したのが当時読売テレビでアニメのプロデューサーをしていた諏訪道彦です。諏訪もまた新しいアニメとアニメソングの関係を考えており、当時担当していた「シティーハンター」で取り入れてみたいと考えていました。そこで西岡がTMNの音楽とのタイアップを提案、諏訪もこれを快諾しこのタイアップが誕生する事となりました。
「シティーハンター」ではその話のクライマックスに「Get Wild」のイントロが流れ出し、そのままエンディングに入るという形式が初めて作られ、その後のアニメでも多く取り入れられる手法となります。「Get Wild」は22万枚の大ヒット曲となって3か月連続でオリコン週間シングルチャートトップ10にランクインし、この年のオリコン年間シングルチャート22位を記録しました。
「シティーハンター」はその後4回の連続アニメシリーズ、3回の単発アニメスペシャル、4回のアニメ映画化がされ、多くのアニメタイアップ曲を生みました。TMNも2期の後期ED「STILL LOVE HER (失われた風景)」を担当しましたが、やはり「Get Wild」の人気は高くシリーズ中幾度も挿入歌や特別編のEDとして採用され、2019年に放映された最新作「劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉」のEDや同年に放映されたフランスでの実写版の日本向け特報内で使用されるなど、息の長い人気楽曲となりました。
TMNもこの曲のヒットによって人気アーティストへの道を駆けのぼり、87年には日本武道館単独公演を成功させます。そして1988年3月には映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」主題歌「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」を担当し、同年には初の東京ドーム単独公演と紅白歌合戦出演を達成する等の記録を打ち立てます。
なお先ほど名前が出ました西岡明芳はその後、ユニコーン、L'Arc〜en〜Ciel 、CHEMISTRY、ゴスペラーズ、西野カナといったアーティストを次々とヒットさせ、諏訪道彦も「名探偵コナン」を始め「YAWARA!」「魔法騎士レイアース」「金田一少年の事件簿」「犬夜叉」といった大人気アニメのプロデューサーを担当していきます。またTMNのサポートメンバーにキーボードとして参加していた浅倉大介はソロアーティスト、貴水博之をボーカルに迎えてのユニット「access」、そして音楽プロデューサー業の活動をしていき、70年代末からギタリストとして活動しTMNギターのサポートメンバーとして参加した北島健二(愛称:ケニー)はその後水樹奈々のライブバンド「cherry boys」のリーダー兼ギタリストとして参加する等、多くのアニメ関係者を生んでいます。
しかしメインとして活動していた小室哲哉は次第に音楽プロデュース業の活動を主体としてそのレーベルもエイベックスに移すようになり、1994年にはTMNのプロジェクト終了を宣言し活動を一時終え、1999年に活動再開した際にはレーベルをエイベックスに移籍していました。
一方1991年に株式会社シービーエス・ソニーグループは「株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)」と商号を変更し、国内外の映像作品の配給・販売を目的として設立した「株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPEJ)※「アニマックス」や「キッズステーション」といったアニメ専門チャンネルの運営も行っています」を設立します。さらに1995年にはその子会社として「株式会社SPE・ミュージックパブリッシング」が設立され、1997年にはSMEJの資本参加により「株式会社SPE・ビジュアルワークス」と、さらに2001年にSMEJの完全子会社となり「株式会社SME・ビジュアルワークス」と名を改めます。この会社はソニーの音楽関係作成においてはアーティストのPV以外の映像作品を担当し、特にアニメーション制作に大きな役割を果たす事となります。
この会社が製作に関わった初期の作品が、週刊少年ジャンプで連載された同名の漫画のアニメ版作品、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-(るろ剣)」です。SPEはアニメ制作に関わると共に主題歌の担当にも関わる事となります。その代表となった楽曲が中期のEDとなった「T.M.Revolution」の「HEART OF SWORD 〜夜明け前〜」です。TMRについては自分が以前記事を書いたので多くは触れませんが、TMRにとって初のアニメタイアップとなったこの曲は36万枚のヒット曲となり、自身のブレイクとアニメソングとの関わりのきっかけとなりました、他にも「SIAM SHADE」の「1/3の純情な感情」、「JUDY AND MARY」の「そばかす」、「川本真琴」の「1/2」といったヒット曲を生んだ「るろ剣」のアニメタイアップですが一方でアニメの作風と合っていない、という批判も起きました。例えば「そばかす」はプロデューサーが意図的にアニメと関係の無い内容に仕上げるという方針を取り、楽曲の製作期間が3日のみという短さとアニメタイアップ先の内容を知らされていなかったため「キャンディ・キャンディ」のイメージで作ったが、ふたを開けてみれば時代劇アニメだったのでメンバーは驚いたという逸話があります。なお名誉のために言っておくとこの楽曲自体は「平成アニソン100選」の1曲に選ばれ、多くの声優にカバーされる等「昔の思い出の曲」としては一定の評価を得ています。
他にもビーイングやエイベックス等のJ-POP系のアーティストによるアニメタイアップの中から作風を無視した楽曲が見られた事は当時から多くの批判があり、これに対するアニソンシンガー側からのカウンターとして「JAM Project」が結成されるなど、アニメソングの歴史に様々な影響を及ぼしていく事となります。
なおこの時期のソニーのアニメ制作への参加は他には「GTO」等少数に留まり、本格的参加は2000年代を待つ事となります。
2-1:土6・日5枠アニメ・テレ東夕方ジャンプアニメとソニータイアップ
2002年秋、ソニーとアニメの関わりにおいて大きな意味を持つ作品の放送が毎日放送(MBS)で始まりました。21世紀初となるガンダムシリーズの最新作、「機動戦士ガンダムSEED」です。「新世紀のファーストガンダム」と銘打たれた同作は大ヒットし新たなるガンダムのファン層を獲得し、後に続く21世紀のガンダムシリーズの始まりとなりました。一方音楽関係でもソニーとアニメの新たな関わりの一歩となります。SMEは同作のスポンサーとして制作に参加、ほぼ全ての主題歌を担当する事となります。その代表とされるのがT.M.Revolutionによる1期OP「INVOKE -インヴォーク-」であり、24万枚のヒット曲となりました。他にも後期OPである「Believe」「Realize」を歌う「玉置成実」がこのアニメの主題歌でデビューする等の動きを生み、2004年秋から放送された続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」でもTMRと玉置はそれぞれ1期OP 「ignited -イグナイテッド-」とED「Reason」を担当、特に「ignited -イグナイテッド-」はガンダムシリーズの主題歌として初となるオリコン週間シングルチャート1位を記録しました。
また同じく2002年秋にテレビ東京で放送が始まったのが週刊少年ジャンプで連載された同名の漫画のアニメ版作品、「NARUTO -ナルト-」です。同作の開始から一貫してOP・EDを担当するアーティストはソニー系列のレーベルに所属し、特に2004年春に4番目のOP「GO!!!」を担当した「FLOW」は同作のアニメシリーズやゲーム、舞台化まで7曲のタイアップを担当する事となります。
2000年代のソニーとアニメソングの関わりに大きな役割を果たす事のはこの2つのアニメ代表される2つの枠とソニー系列の株式会社「アニプレックス」です。
2003年、SMEJが「株式会社SME・ビジュアルワークス」等の非音楽部門を切り離した際に誕生したのが株式会社「アニプレックス」です。この会社は数多くのアニメ制作に参加、2005年には自身のアニメ制作会社「A-1 Pictures」を設立し直接アニメを製作するなどして次々とヒットさせていく事となりますがその多くが製作されたのが「土6・日5枠」と「テレ東夕方ジャンプアニメ」です。
「土6・日5枠」とは毎日放送(MBS)が製作するアニメの放送枠の事であり、土曜の午後6時に放送され、後に日曜の午後5時に放送時間が移動した事から名づけられました。元々90年代から子供向けアニメや特撮作品が放送されていたこの枠は「ガンダムSEED」以降以前とは少し対象年齢が上のアニメの放送が続きます。「鋼の錬金術師」「SEED DESTINY」「BLOOD+」「機動戦士ガンダム00(1st season)」といった作品が放送されたこの枠からは、J-POPやJ-ROCkのアーティストから多くのタイアップ曲が生まれ、その多くは作品と共に愛されました。作品毎に楽曲を集めたアルバムCDが作られ、「土6」が終わる際にはこの時間帯の主題歌を集めたアルバム「39 Anime×Music Collaboration ’02-’07」が出されたほどです。当然ながら収録楽曲の殆どはソニー関係でした。
また土6だけでなく朝アニメである「交響詩篇エウレカセブン」や2006年から始まったMBS制作の深夜アニメ枠「アニメイズム」の作品において「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」や「黒執事」、「デュラララ!!」といった多くの制作への参加、また「コードギアス 反逆のルルーシュ」や「戦国BASARA」といった作品では楽曲のみの協力をしていき、その多くがヒットしていきました。
そして2008年春に「土6」が「日5」に移動してもその関係は続きました。同作品ではアニメイズムで放送された作品の続編も放送され、「コードギアス 反逆のルルーシュR2」「動戦士ガンダム00(2nd season)」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」「戦国BASARA弐」といった作品で製作、楽曲のみの協力を問わず次々とヒット曲を生み出していきました。
一方「NARUTO」に始まる「テレ東夕方ジャンプアニメ」においても、2000年代のジャンプアニメの多くの製作を担当、ヒットさせていきます。「BLEACH」「銀魂」「D.Gray-man」といった作品はその多くが連載期間の長さからいずれも長期アニメシリーズとなり、それに伴い多くのヒット曲を生む事となります。またジャンプ系以外では少年ガンガンで連載された「ソウルイーター」のアニメ版の楽曲制作やオリジナルの深夜アニメとして「天元突破グレンラガン」の製作に関わる事となります。
2-2 2000年代のソニー系列の主なアニメ・及びタイアップ表(J-POP・ROCK版)
これらのアニメタイアップを担当したアーティストは多くの作品で共通しています「T.M.Revolution」「FLOW」「L'Arc〜en〜Ciel」「UVERworld」「いきものがかり」「ORANGE RANGE」「シド」といったアーティストは一般・アニメファンを問わない人気を獲得していくようになりました。
ここではそんな2000年代のアニメタイアップについて以下の表でまとめてみました。これでも楽曲の一部であり、代表的なものを挙げただけです。
〇作品タイトルについて
・細字:楽曲のみ協力
・太字:アニプレックスが製作に関わっている
・斜線:A-1 Pictures制作作品
〇分類について
・土6/日5:土6/日5時間帯で放送された作品
・アニメイズム:アニメイズム時間帯で放送された作品
・テレ東:テレビ東京制作作品
・夕方:土6/日5時間帯以外の夕方時間帯放送作品
・深夜:アニメイズム以外の深夜帯放送作品
・ジャンプ:原作が週刊少年ジャンプで連載されていた作品
・その他:それ以外の放送局で製作・放送された作品
楽曲についてはソニー関係のみであり、例えばガンダムSEEDのSee-Saw「あんなに一緒だったのに」(ビクター系列)等は記載されていません。
なお土6・日5の作品であっても一部記載されていないものがありますが、ご了承ください。
・主な2000年代ソニー系列アニメタイアップ表 | |||
放送・放映時期 |
作品タイトル |
代表的なアーティスト及び楽曲 |
分類 |
02年10月~03年9月 |
T.M.Revolution「INVOKE -インヴォーク-」「Meteor -ミーティア-」 玉置成実「Believe」「Realize」 |
MBS・土6 |
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02年10月~07年02月 |
NARUTO -ナルト- |
FLOW「GO!!!」「Re:member」 |
テレ東・夕方・ジャンプ |
03年10月~04年10月 |
ポルノグラフィティ「メリッサ」 L'Arc〜en〜Ciel「READY STEADY GO」 ASIANKUNG-FU GENERATION「リライト」 |
MBS・土6 |
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04年10月~12年3月 |
ORANGE RANGE「*〜アスタリスク〜」 Aqua Timez「Velonica」「ALONES」「MASK」 SPYAIR「Last Moment」 |
テレ東・夕方・ジャンプ |
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04年10月~05年10月 |
T.M.Revolution「ignited -イグナイテッド-」「vestige -ヴェスティージ-」 玉置成実「Reason」 |
MBS・土6 |
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05年4月~06年4月 |
FLOW「DAYS」 |
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05年10月~06年9月 |
高橋瞳「青空のナミダ」 |
MBS・土6 |
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06年4月~10年3月 |
Tommy heavenly6「Pray」 DOES「修羅」「曇天」 |
テレ東・夕方・ジャンプ |
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06年10月~07年3月 |
MBS・土6 |
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06年10月~08年9月 |
abingdon boys school「INNOCENT SORROW」 access「Doubt & Trust 〜ダウト&トラスト〜」 |
テレ東・夕方・ジャンプ |
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06年10月~07年3月 |
FLOW「COLORS」 access「瞳ノ翼」 SunSet Swish「モザイクカケラ」 |
MBS・アニメイズム |
|
07年2月~17年3月 |
NARUTO -ナルト- 疾風伝 |
いきものがかり「ブルーバード」 FLOW「Sign」「虹の空」 |
テレ東・夕方・ジャンプ |
07年04月~9月 |
abingdon boys school「HOWLING」 |
MBS・アニメイズム |
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07年04月~9月 |
Base Ball Bear「ドラマチック」 |
その他・深夜 |
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07年04月~9月 |
テレ東・深夜 |
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07年10月~08年3月 |
機動戦士ガンダム00(1st season) |
L'Arc〜en〜Ciel「DAYBREAK'S BELL」 |
MBS・土6 |
08年1月~6月 |
ペルソナ 〜トリニティ・ソウル〜 |
FLOW「WORD OF THE VOICE」 |
MBS・深夜 |
08年4月~9月 |
ORANGE RANGE「O2」 FLOW「WORLD END」 |
MBS・日5 |
|
08年4月~09年3月 |
T.M.Revolution「resonance」 abingdon boys school 「STRENGTH.」 |
テレ東・夕方 |
|
08年10月~09年3月 |
機動戦士ガンダム00(2nd season) |
MBS・日5 |
|
08年10月~09年3月 |
シド 「モノクロのキス」 |
MBS・アニメイズム |
|
09年4月~10年6月 |
シド「嘘」「レイン」 スキマスイッチ「ゴールデンタイムラバー」 SCANDAL「瞬間センチメンタル」 中川翔子「RAY OF LIGHT」 |
MBS・日5 |
|
09年4月~6月 |
abingdon boys school「JAP」 |
MBS・深夜 |
|
09年10月~12月 |
DARKER THAN BLACK -流星の双子- |
abingdon boys school「From Dusk Till Dawn」 |
MBS・アニメイズム |
10年6月~9月 |
MBS・日5 |
3:ソニー発のアニソンアーティスト誕生
そんなソニー系列のアニソンは多くがJ-POPやJ-ROCKのアーティストであり、長く所謂「アニソンアーティスト」はほぼいませんでした。数少ない声優アーティストとして活動していたのが「椎名へきる」です。彼女は1992年に角川書店とソニーが合同で行っていた漫画「精霊使い」のヒロイン声優オーディションに合格した事をきっかけに声優となり、「魔法騎士レイアース」「YAT安心!宇宙旅行」等の作品でブレイクしていきます。それと並行して94年からはソニーレコードからアーティストとしてデビュー、97年には声優初となる日本武道館単独公演を達成した事を皮切りに、国立代々木競技場第一体育館や幕張メッセといった声優初の大規模会場でのライブを達成します。3000人ほどのコミュニティアリーナではありますが、さいたまスーパーアリーナで初めて単独イベントを開催したのも彼女でした。しかし2009年にはランティスへ、14年にはワーナーに移籍し、12年には突発性難聴を再発する等の困難に見舞われました。それでも声優やアーティストとしての活動は続けており、近年は「ラブライブ!サンシャイン!!」「スター☆トゥインクルプリキュア」等の人気作にも出演しています。
そんなソニー系列からアニメ専門のアニソンアーティストが生まれる切っ掛けとなったのが「TYPE-MOON × ufotable プロジェクト」です。これは「月姫」「Fate/stay night」をヒットさせていたゲームブランド「TYPE-MOON」と「フタコイオルタナティブ」や「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」を製作したアニメ制作会社「ufotable」、そしてアニプレックスの三者による「TYPE-MOON」作品のアニメ化プロジェクトであり、その第一弾として七部作として「TYPE-MOON」のノベルス作品「空の境界」のアニメが製作されました。
この主題歌を担当したのが梶浦由記プロデュースによるユニット「Kalafina」です。これまで主にビクター系列で活動していた梶浦由記は「空の境界」の音楽全般に加え、このユニットのプロデュースの担当も行う事で初めてソニー系列で活動する事となりました。当初Kalafinaはこの「空の境界」限定で活動する予定でしたが映画化が完結した後も活動継続が決定し「黒執事」「ソラノヲト」等のアニプレックス作品での主題歌を担当する事となります。
また2009年にソニーグループの芸能事務所「ミュージックレイン」に所属する声優4人が声優ユニット「スフィア」として活動を開始しますが*1、それ以前から個人の活動が開始していました。
4人の中で最も早く活動を開始したのが「戸松遥」です。既に「To LOVEる -とらぶる-」「絶対可憐チルドレン」といった作品で声優として活躍していた彼女は2008年にアーティストデビューし、自身もヒロインを演じたTVアニメ「かんなぎ」主題歌「motto☆派手にね!」で初のアニメ主題歌を担当しました。スフィアの活動が順調に動き始めたころ他の3人もアーティストデビューします。「高垣彩陽」は2010年7月に自身も出演するTVアニメ「世紀末オカルト学院」ED「君がいる場所」でデビューし、同年9月に「寿美菜子」が、10年には「豊崎愛生」がアーティストデビューします。ただしアニメの主題歌を中心に活動するのは戸松と高垣であり、高垣もその後の主題歌を担当するのはアニプレックスとの関係が薄い作品が多く、アニプレックス製作アニメの主題歌を担当するのはほぼ戸松のみとなります。
また2010年にはアニプレックスと「Air」「CLANNAD」等をヒットさせてきたゲームブランド「Key」、「シスタープリンセス」や「ラブライブ!」を手掛ける「電撃G's magazine」、「true tears」「CANNAN」を手掛けたアニメ制作会社「P.A.WORKS」の4社合同によるアニメ「Angel Beats!」が放送され大ヒットしました。この音楽制作を担当したのはソニーでは無くKeyの自社レーベル「Key Sounds Label」でした。ただこの作品から誕生した音楽ユニット「Girls Dead Monster」でボーカルを担当していた一人、「LiSA」は後にソニーと深い縁で結ばれる事となります。
同じく2010年に同名のライトノベルをTVアニメ化した作品、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の主題歌「irony」でデビューしたのが「ClariS」です。元々ニコニコ動画で活動していた二人の中学生ユニット「アリス☆クララ」がアニソン雑誌「リスアニ!」の新人発掘プロジェクトに抜擢され、さらに作品に合うとしてアニプレックスが主題歌の担当に抜擢、「ClariS」としてデビューしました。
こうしてソニーもJ-POP・ROCKだけでなく専門のアニソンアーティストを育成し始めるのですが、その一環として2010年12月に第一回が開催されたアニソンフェスが「リスアニ! LIVE」です。このライブはその名の通り先ほど名前が出ましたアニソン雑誌「リスアニ!」が主催しますが、そもそもこの雑誌自体ソニー系列の出版社である「ソニー・マガジンズ」から発行されているソニーの影響力の強い雑誌でした*2。出演者もランティスの茅原実里や飛蘭、NBCの川田まみや黒崎真音等他者のアーティストも出演していましたが、最も多いのはKalafina、戸松、高垣、LiSA(Girls Dead Monster Starring LiSAとして)、といったソニー関係者でした。ちょうどアニサマでキングレコードやランティスが占めていた位置をリスアニ! LIVEで占めていたのがソニーでした。現在まで続くリスアニ! LIVEですが、ソニー系列アーティストの出演割合が多く、ほぼ毎年1組はソニー関係アーティストがトリを担当しています。
また他レーベルの作品と動揺、キャラクターソングが主題歌を担当するアニメも多く作られました。「WORKING!!」の「SOMEONE ELSE」、「セキレイ」の「セキレイ」等です。他にも2010年に西尾維新のライトノベル「「物語」シリーズ」のアニメ化第一作「化物語」でOPとして使われたキャラクターソングもまた好評を博しました。アニメ化不可能とまで言われていた同作品は「さよなら絶望先生」「ひだまりスケッチ」を製作した「シャフト」の手によって大ヒットし、EDを担当したクリエイターチーム「supercell」の「君の知らない物語」も10万枚を超える大ヒット曲となりました。
こういったアーティストだけでなく、「ufotable」や「シャフト」といった製作会社、梶浦由記といった音楽家の繋がりは2010年代に入るとさらに発展していく事となります。
4:ソニー系アニソンアーティストの発展
2011年最大のヒットアニメと言っても過言でない作品が、アニプレックスが製作した「魔法少女まどか☆マギカ(まどマギ)」です。この作品はAngel Beats!と同じくアニプレックスと複数の会社による合同アニメプロジェクトによって製作されました。「ひだまりスケッチ」「化物語」を製作したシャフト、キャラクターデザインを担当した蒼樹うめが「ひだまりスケッチ」を連載し、また同作のコミカライズを担当する「芳文社」、脚本を担当するシナリオライター、虚淵玄が所属する「ニトロプラス」、そしてアニプレックスの4社です。また音楽政策全般を梶浦由記が、OPをClariSが、EDをKalafinaが担当し、毎日放送も制作に参加するという、「空の境界」「化物語」等の作品で築き上げたアニプレックスアニメのコネクションを結集した作品となりました。同作品は社会現象クラスのヒット作となり、またClariS のOP「コネクト」は8.6万枚、KalafinaのED「Magia」も4.8万枚と当然ながら自己最大のヒット曲となりました。
同じく2011年に1期が、12年に2期が放送された「Fate/Zero」は多くのソニー系アニソンアーティストを生み出しました。「TYPE-MOON × ufotable プロジェクト」の第二弾として制作されたこの作品は「Fate/stay night」の前日譚として虚淵玄が執筆したノベルが原作であり、こちらも例によって梶浦が音楽を担当、「空の境界」のヒットと評判の高さもありヒット作となりました。
1期のOPを担当したのはかつてGirls Dead Monsterのボーカルの一人であった「LiSA」です。既にこの年4月にソロアーティストとしてデビューしていたLiSAはこのアニメのOP「oath sign」でソロとしては初のOPを担当、デビューシングルにしていきなり7.8万枚のヒット曲となりました。同じくEDを担当したのが「藍井エイル」です。ニコニコ動画に歌唱動画を投稿した事がきっかけでリスアニ!の付録としてCDデビュー、ここから同作品のED「MEMORIA」でデビューし、こちらも4万枚のヒット曲となりました。
2期のED「空は高く風は歌う」を担当した「春奈るな」は第4回全日本アニソングランプリファイナリストであり、ファッションモデルとしても活動しています。彼女はこの曲でメジャーデビューし、楽曲も1.9万枚のヒット曲となります。
そして唯一このアニメの主題歌担当アーティストで新人で無かったのがKalafinaです。2期OP「To the beginning」は「Magia」を上回る5万枚を記録しました。
翌2012年のアニプレックスのヒット作が川原礫作の同名のライトノベルを原作とするTVアニメ「ソードアート・オンライン(SAO)」です。このアニメは同じく2012年にアニメ化されヒットした川原原作の作品「アクセル・ワールド」をさらに上回る大ヒット作となり、LiSA、藍井エイル、春奈るなといったFate/Zeroでデビューしたアーティストが主題歌を担当、また戸松遥がヒロインを演じるだけでなく同じく主題歌も担当しました。そしてこの4アーティスト全てがそれまでの自身の最高セールスを更新する事となりました。「SAO」シリーズは現在までTVアニメシリーズ3期と劇場版が製作されいずれも主題歌と共に大ヒットを記録しています。なおこの作品の音楽制作の担当者も梶浦由記です。
話は逸れますが、アニプレックス製作作品でも他社が楽曲や主題歌を担当する作品も多くありました。「ひだまりスケッチ」や「刀語」、「咎狗の血」といった作品はランティスが、「アイドルマスター」は原作ゲームの音楽を担当している日本コロムビアが、「DOG DAYS」や「魔法少女リリカルなのは The MOVIE」シリーズといった作品はキングレコードが音楽制作を担当しています。「BLOOD-C」や「俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる」のように一部の曲だけキングレコードという例もありました。逆に他社の作品でソニー系列アーティストが主題歌を担当する場合もありました。例えば「戦姫絶唱シンフォギア」シリーズの製作には1期の製作委員会以外参加していませんが、高垣彩陽はメインキャラとして出演すると共に、シリーズを通してEDを担当しています。
その後もLiSAは「幻影ヲ駆ケル太陽」や「魔法科高校の劣等生」、藍井エイルは「機動戦士ガンダムAGE」や「キルラキル」といったアニプレックスのアニメの主題歌を担当していきます。また「化物語」に続く物語シリーズも2012年から次々とアニメ化がされ、ClariSや春奈るなが主題歌を担当しました。
同時期に活動を始めた異色のアーティストが「EGOIST」です。TVアニメ「ギルティクラウン」のキャラが歌う主題歌や劇中歌を担当し、その後も「PSYCHO-PASS」シリーズ等の主題歌を担当したこのアーティストの特徴は顔を出してのライブを行わない所です。ボーカルのchellyの動きをモーションキャプチャーで取り入れ3Dのキャラモデルを動かし、キャラクターが歌うかのようにライブを行うという独自な手法を取り入れています。
一方Kalafinaは2012年から13年にかけて「空の境界」や「魔法少女まどか☆マギカ」の劇場版総集編・続編の主題歌を担当し、特にまどマギの総集編主題歌「ひかりふる」、続編主題歌「君の銀の庭」はそれぞれ最高セールスを更新しました。当然ながらClariSもまどマギの映画では主題歌を担当し「ルミナス」や「カラフル」といった主題歌もまた7万枚のヒット曲となりました。
そして2014年に入るとまた新しいアーティストがソニーからデビューしていきます。
「キルラキル」後期OP「ambiguous」でデビューし、「魔法科高校の劣等生」や「Gのレコンギスタ」といった作品のOPを担当する「GARNiDELiA」は歌い手出身のメイリアとLiSAら多くのアニソン歌手に楽曲を提供してきたtokuによるユニットです。
また2014年に放送が開始した「Fate/stay night」本編のアニメ化「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」の前期OP「ideal white」でデビューした「綾野ましろ」はその後も「ガンスリンガーストラトス」や「D.Gray-man HALLOW」といった作品の主題歌を担当する事となります。
2013年にソニーによるアニソン・ボカロ特化型歌手オーディション「ウタカツ」でデビューしたのがCHiCOです。彼女の主な活動はニコニコ動画から誕生したクリエイターユニット「HoneyWorks」のボーカル、「CHiCO with HoneyWorks」としてです。このユニットは「アオハライド」や「銀魂」等の主題歌を担当すると共に、声優をボーカルに迎えたHoneyWorksオリジナル世界観の作品シリーズ「告白実行委員会」を発表、若者を中心に大ヒットさせます。
他レーベルから移籍してきたアーティストとしては「ELISA」がいます。ELISAはNBCで活動し「とある科学の超電磁砲」シリーズ等の主題歌を担当していましたが2011年に活動を休止、13年にソニーに移籍し活動を再開します。ソニーでは「魔法科高校の劣等生」や映画「楽園追放 -Expelled from Paradise-」といった作品の主題歌を担当します。
またスフィアに続くミュージックレイン2期生も活動を開始します。一番初めに活動を始めたのは「雨宮天」です。「一週間フレンズ。」や「アルドノア・ゼロ」等の作品でヒロインを演じ人気急上昇となった2014年に自身が主人公を演じる「アカメが斬る!」主題歌「Skyreach」でアーティストデビューをしました。そして同じ年に雨宮と同じくミュージックレイン2期生である「麻倉もも」「夏川椎菜」と共に声優ユニット「Trysail」を結成、翌2015年にTVアニメ「電波教師」OP「Youthful Dreamer」でデビューしました。麻倉と夏川もTrysailの活動が軌道に乗り始めた2016年と17年にそれぞれソロデビューします。なおランティス系列であるスフィアと異なり、Trysailは完全なソニーアーティストです。
変わった所では音楽家、澤野弘之による音楽プロジェクト「SawanoHiroyuki[nZk]」がいます。2000年代から数多くのドラマやアニメ、映画の劇伴を担当し「戦国BASARA」や「進撃の巨人」といった作品で名を高めます。特に「機動戦士ガンダムUC」では劇伴だけでなく下記のAimerを含むアーティストをボーカルに迎えた楽曲の評判が高く、これをきっかけに14年からソロプロジェクトをスタートし様々なアーティストをボーカルに迎えた楽曲を発表、「アルドノア・ゼロ」や「終わりのセラフ」で劇伴と共に主題歌を担当しました。
この項の最期に名前を出すのは「Aimer」です。ですが一応こちらで紹介します。彼女は2011年にTVアニメ「NO.6」のED「六等星の夜」でデビューし「機動戦士ガンダムUC」や「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」といったアニメの主題歌を担当しています。ただし彼女はアニメソングを多数担当しますがTVドラマ等一般の曲も多く担当しているため、J-POP寄りのアニソン歌手とも言えます。
ライブ面でも2014年にLiSAが初の武道館単独公演を達成した事を皮切りに2015年にはKalafinaと藍井エイルが武道館単独公演を開催し、TVの音楽番組や「COUNTDOWN JAPAN」等一般のライブフェスに出演する等活動の幅を広げていきます
こういった新しい新星や動きの中を加え、ソニー系列のアニソンはさらに勢いを増していきます。
5:2010年代のソニー系一般アーティストとアニメタイアップ
さて一方2010年代に入ると、一般系のアーティストにも変化が見られます。「日5」枠のアニメでは「STAR DRIVER 輝きのタクト」「青の祓魔師」「マギ」シリーズといった作品では全ての主題歌がソニー系でしたが、「機動戦士ガンダムAGE」「宇宙戦艦ヤマト2199」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」といった作品では一部の楽曲がランティスのアーティストとなりました。また「ハイキュー!!」「七つの大罪」「僕のヒーローアカデミア」といった作品は続編の放送枠の深夜帯移動や放送局そのものまでが移動となり、2016年10月~2017年3月の「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(2期)」を最後に「日5」枠は「土6」時代から数えると14年半のアニメ放送枠を終える事となります。
またジャンプ作品等の夕方アニメ枠も2012年に「BLEACH」が終了、「銀魂」は2期、劇場版、3期を終了と再会を挟んで続いた後に2017年から始まった4期は深夜帯となる等、現在残るは「NARUTO」の続編である「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」となりました。
こういった中でJ-POP・ROCKアーティストの間で起こり始めたのがアニメそのもの、アニソンアーティストとの交流です。
2013年に放送されたTVアニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」はアニプレックスとキングレコードという大手アニメ音楽関係会社2社に加え、サンライズ・バンダイという双方と関係の深い2社、計4社による合同企画でした。また音楽関係ではフライングドッグも参加し、ソニーからはELISA、キングレコードからはangelaやかなでももこ、フライングドッグからは南里侑香といったアーティストが主題歌や挿入歌を担当しました。しかし何と言っても大きな話題を呼んだのはT.M.Revoluitonと水樹奈々のコラボ企画です。ソニーとキングレコード、双方のアニソン界のビッグアーティスト(TMRは厳密に言うと一般系ですが)は大きな話題を呼び、TMRの製作陣によって作られた前期OP「Preserved Roses」と水樹側の製作陣によって作られた後期OP「革命デュアリズム」はどちらも10万枚を超えるヒット曲となりました。
また2014年のアニメ「七つの大罪」ではED曲としてソニーのFLOWとランティスのGRANRODEOのコラボ曲「FLOW×GRANRODEO」の「7 -seven-」が発表されました。以前からライブ等で交流のあるこの2組によって生み出されたこのコラボは2018年に放送されたアニメ2期「七つの大罪 戒めの復活」でも再結成され、前期ED曲「Howling」がリリースされました。
このころからT.M.RevolutionやFLOWといったソニー系の一般アーティストがアニソンフェスで見られる事が多くなり、特にFLOWは「Animelo Summer Live」、「ANIMAX MUSIX」、「リスアニ!LIVE」の三大アニソンフェスに出演する等アニソンファンの間での支持を広げました。
また2016年には幕張メッセイベントホールにて、アニプレックスとテレビ東京の主催で「銀魂」と「NARUTO」の主題歌を歌うアーティストを集めたアニソンフェス「ANI-ROCK FES.」が開催されました。「一般アーティストを集めたアニソンフェス」という珍しい形式であるこのフェスには銀魂側にはSPYAIR、DOES、Aqua timesら、NARUTO側にはFLOW、いきものがかり、スキマスイッチらが出演、それぞれの作品だけでなく同じジャンプ系作品や他作品のアニメタイアップ曲を歌うなど、ソニー系列のアーティストの幅の広さを表す事となりました。このフェスは2018年にさいたまスーパーアリーナに会場を移し、「銀魂」「ハイキュー!!」の主題歌を担当するアーティストが集合しました。なお2010年代に「銀魂」や「ハイキュー!!」、「BLEACH」といったジャンプアニメ、また「機動戦士ガンダムAGE」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」といったガンダムシリーズの主題歌を担当してた「SPYAIR」もまた、アニメファンに人気のあるJ-ROCKアーティストとなりました。
6:SACRA MUSIC設立と新たなるアーティストの誕生
こう見ると順風満帆に見えるソニー系列のアーティストですが、決していい事ばかりではありませんでした。2015年に藍井エイルがアニサマ出演を急遽取りやめ、さらに2016年にもアニサマを含むフェスへの出演の中止と休業を発表、10月の日本武道館公演を最後に活動を休止してしまいます。
さて、ここまで話に出てきましたソニーのアニソンアーティストですが、統一したレーベルにいたわけではありませんでした。ランティスならばほぼ全てのアーティストがランティスに所属し、キングレコードは第三クリエイティブ本部とスターチャイルドに分かれていたものがキング・アミューズメント・クリエイティブ本部に統一されました。
一方ソニーの場合レーベルはバラバラになっていました。例えばLiSAやTrysailはアニプレックス、Kalafinaや藍井エイル、Claris、GARNiDELiA、「SawanoHiroyuki[nZk]」はSMEレコーズ、綾野ましろはアリオラジャパン、EGOISTはソニー・ミュージックレコーズといった状態でした。
ソニーはこういった状態を改め、昨今発展著しく国内外で評判の高いアニソンアーティストを一括で所属するレーベルの設立を決めます。こうして2017年4月に誕生したのが「SACRA MUSIC」です。このレーベルの当初の参加者はLiSA、Kalafina、Trysail、Claris、春奈るな、GARNiDELiA、ELISA、綾野ましろら15組となります。ただしソニーの全てのアニソンアーティストがこのレーベルに所属しているわけでは無く、例えばAimerは所属のSMEレコーズから移籍せず、スフィアやTrysailのソロメンバー、CHiCOの活動は所属事務所のミュージックレインからとなります。
このSACRA MUSICの設立を記念して同年5月に開催されたのが「MUSIC THEATER2017」です。SACRA MUSIC所属アーティストに加えAimerやCHiCO with HoneyWorks、戸松遥や高垣彩陽といったソニー系列他レーベルのアニソンアーティスト、さらにシドやFLOWといった一般系のアーティスト、さらにシークレットゲストとして雨宮天やEGOIST、そしてシークレットの大トリとしてT.M.Revolutionが出演しました。またこのライブは全ての楽曲にアニメの映像が使用される等、楽曲からアニメ作品まで手掛けることが出来るアニプレックスとソニーの底力を示す事となりました。
こういったアーティストの中で最も勢いがあるのはLiSAです。「ニセコイ」「クオリディア・コード」「Fate/Apocrypha」といったアニメの主題歌を担当すると共に2016年には横浜アリーナでの単独公演を、17年にはさいたまスーパーアリーナを含むアリーナツアーを開催しました。特にさいたまスーパーアリーナで声優以外のアニソンアーティストが単独公演を開催するのは初であり、ソニーのアーティストがまた新たな記録を打ち立てる事となりました。また同年に発売されたベストアルバム2組はオリコンチャートで1・2フィニッシュを記録し、自身初のオリコン1位を達成しました。
またTrysailも「ハイスクール・フリート」「エロマンガ先生」といった作品の主題歌がヒットすると共に2016年からは全国ツアーを開催、2017年には初のアリーナライブを開催する等、作品ユニットではない声優ユニットとしてはトップレベルの人気を得る事となりました。
またSACRA MUSICが誕生した2017年から活動を始めるアーティストも生まれ始めます。
以前本名で活動しており、2017年に再デビューしたのが「ASCA」です。「Fate/Apocrypha」のED「KOE」でデビューし「グランクレスト戦記」や「ソードアート・オンライン アリシゼーション」の主題歌を担当、2020年には「白猫プロジェクト ZERO CHRONICLE」の主題歌として西川貴教とのコラボレーションシングル「天秤-Libra-」を発表しました。
SACRA MUSICが2017年に開催したオーディションでグランプリに選ばれデビューしたのが「ReoNa」です。「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」のキャラクターソングの歌唱担当としてデビューした彼女はその後「ソードアート・オンライン アリシゼーション」や「ハッピーシュガーライフ」の主題歌を担当、唯一無二の世界観を持つアーティストとなっています。
CHiCOと同じく「ウタカツ」オーディションで準グランプリとなりその後ミュージックレインの所属となったのが「halca」です。「オタクに恋は難しい」ED「キミの隣」でデビューし「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」「ぼくたちは勉強ができない!」といった作品の主題歌を担当。その透き通った声が特徴です。
2018年にメジャーデビューしたのがスリーピースバンド「スピラ・スピカ」です。「ガンダムビルドダイバーズ」でデビューし「みだらな青ちゃんは勉強ができない」「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」等の主題歌を担当しています。ライブだけでなくトークにも定評のあるバンドです。
また2018年2月には藍井エイルが活動を再開、「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」のOP「流星」をリリースし同年8月には日本武道館で復帰ライブを開催します。
こういった新星アーティストを加えて2019年5月に開催されたのが「SACRA MUSIC FES.2019 –NEW GENERATION–」です。このライブは「MUSIC THEATER2017」と異なり全アーティストがSACRA MUSIC所属アーティストであり、レーベルの成長を感じさせるものとなりました。
しかし一方で衝撃的なニュースもありました。2017年12月に梶浦由記が所属事務所の退社を発表し、Kalafinaも2018年1月の武道館でのライブと3月のドキュメント映画の舞台挨拶を最後に事実上活動を休止しメンバーも梶浦と共に事務所を退社するものと残るものに分かれ2019年3月、活動は困難として解散を発表、11年(実質10年)でKalafinaはその活動を終了する事となりました。
また同時期にGARNiDELiAもSACRA MUSICを離れ活動をフリーの場に移す事となりました。
こういった良くも悪くも大きな動きがあった2019年最大のヒットアニメにして2010年代のアニプレックス集大成作品と呼べるのがTVアニメ「鬼滅の刃」です。原作は週刊少年ジャンプ連載作品、製作をアニプレックスとufotableが、音楽制作を梶浦由記※梶浦だけでなく椎名豪(「テイルズ」シリーズや「アイドルマスター」シリーズの音楽、その他多くのアニメやゲームの製作を担当している)も制作に参加しています、主題歌をLiSAというアニプレックスが積み重ねてきた経験の結晶と呼べるスタッフが揃いました。この作品のヒットについては言うまでもありません。LiSAの歌うOP「紅蓮華」は10万枚近いセールスを記録し自身最大のヒット曲となり、この作品と曲のヒットにより既にアニソンアーティストとしてトップレベルの人気と実力を兼ね備えていたLiSAはこの曲でアニソン歌手としては4組目、そして声優以外のアニソンアーティストとしては初の紅白歌合戦出場を成し遂げました。そこにかつて「作品を無視したタイアップの押しつけ」と呼ばれていたソニーの姿は無く、アニソンレーベルの強豪の一角となった姿がありました。
7:アニサマのソニーアーティスト
J-POPアーティストも多く所属しているソニー系列の特性上、一部分けて記載します。
7-1:SACRA MUSIC所属 (過去含む)
・Kalafina:11、14、15
※2011年は特別出演、映像収録されず、2019年解散
・藍井エイル:詳細は4-4:トリ担当アーティストその3(2017~19)
・春奈るな:12、13、15、16、17、18、
※2012年は特別出演、映像収録されず、2016年は藍井エイルの代理出演
・LiSA:詳細は4-3:トリ担当アーティストその2(2013~16)参照
・GARNiDELiA:15、18
※2019年にフリーとなる
・TrySail: 15、16、17、18、19、【20】
・綾野ましろ:15
・ClariS :17、19
・ReoNa:19、【20】
・スピラ・スピカ:19、【20】
・ASCA:【20】
・halca:【20】
7-2:その他レーベル所属アニソンアーティスト
・高垣彩陽:16
・戸松遥:16
・レン(楠木ともり):18
・麻倉もも:18
※18年はシークレット出演
・雨宮天:18、【20】
※18年はシークレット出演
・夏川椎菜:18
※18年はシークレット出演
7-3:J-POP・ROCK系アーティスト
・中川翔子:09、13
※2009年は特別出演、映像収録されず
・T.M.Revolution:詳細は4-3:トリ担当アーティストその2(2013~16)参照
・earthmind:13
※2013年に事実上の活動休止
・FLOW:13、14、16、17
・9nine:14
・玉置成実:16
※現在はランティス所属
・デーモン閣下:16
・鈴木雅之:19、【20】
・岡崎体育:【20】
・西川貴教:【20】
8:アニサマにおけるソニー
アニソン業界でそうであったように、アニサマにおいてもソニーは外様の存在でした。2009年に中川翔子がソニー系アーティストでは初の出演をしましたが当時は映像関係で曲が下りず収録はされませんでした。11年や12年にソニー系アーティストが出演しても収録されることは無く、初の映像収録となったのは2013年からでした。
しかしこの年から一気に動きは変わります。2014年にはキングレコード、ランティス、日本コロムビアに次ぐ4番目に多くアーティストが出演し、キングとランティス以外では初のトリをこの年から3年連続で担当、またこの年からアニサマの映像作品制作に参加し15年と18年のBD販売も担当するようになりました。2019年にはキング・ランティス以外では初となる大トリを担当し、今やアニサマではこの2社と並ぶ勢力となっています。
9:まとめ
かつてアニソン業界にとっては外様、もっと言えば邪魔者とまで扱われていたソニーですが、今や業界に無くてはならない存在にまでなりました。その理由は今の10代や20代といった若者世代に直撃する作品の多くがソニー・アニプレックス関係作品である事、ソニー自体がアニメを作り、アニメソングという形に寄り添う形に変化していた事が挙げられます。キングレコードが古くからの強豪であるとしたらソニーやランティスは新星と呼べる存在でしょうか。
作品ユニットとしての強さではランティスに、声優アーティストとしての強さにはキングレコードに未だ敵いませんが、アニソンアーティストとコンテンツ力で一番強いのはソニーではないでしょうか。今のアニソン業界は例えるならば、この3社による三国志なのかもしれません。
今回もこの記事を読んでくださってありがとうございました。1~3の3社はその規模から独立した記事にしてきましたが、次からは数社をまとめて記事にしていく予定です。
ちなみに今回の更新に合わせていくつかの記事を手直ししてみました。よろしければ今までの記事も見返してみてください。
次回以降もこの企画の更新はバラバラになってしまいますが、よろしくお願いします。
目次代わりの記事→Animelo Summer Live15年史勝手に分析 0
前のシリーズ初回の記事→1-1:アニサマ15年と2005~07の概要
このシリーズ初回の記事→2-1:アニサマ出演者音楽レーベルについてその1(ランティス)
前回の記事→2-2:アニサマ出演者音楽レーベルについてその2(キングレコード)
次回の記事→2-4:アニサマ出演者音楽レーベルについてその4(ポニーキャニオン、メディアファクトリー(KADOKAWA)、5pb.(MAGES.)、ブシロード)
次のシリーズ初回の記事→3-1:アニサマ主要パート担当アーティスト一覧と分析
*1:スフィアの活動レーベルはソニーとランティスが実質的に共同で経営するランティス内のレーベル「GloryHeaven」であり、ランティス主体の活動
*2:2012年にミュージック・オン・ティーヴィと合併、「エムオン・エンタテインメント」と改称したオン・ティーヴィ時代から運営されている「MUSIC ON! TV」では「リスアニ! LIVE」のダイジェスト放送が行われています